「蜂の巣」といえば、マーブル模様のボール状のものや、六角形の小部屋のたくさんあるものをまずイメージするのではないでしょうか。実は蜂の巣にはさまざまなバリエーションがあって、日ごろ目にするいわゆる「蜂の巣」の形はほんの一例にすぎないのです。
独特な形状の巣をつくる蜂のひとつに、「とっくり蜂」と呼ばれる種類のものがいます。泥をこねてとっくり状の巣をつくるというユニークな生態をもち、人間に危害を加えることはまずありません。しかし、とっくり状の巣を見つけたときは注意が必要です。
とっくり蜂自体には危険はありませんが、似た形の巣をつくるもののなかには刺傷事例のある危険な種類もいるためです。
本コラムでは、とっくり蜂の生態と特徴、似た巣をつくる危険な蜂について解説します。
目次
昆虫界の陶芸家!?「とっくり蜂」の生態について
とっくり蜂は、狩蜂(かりバチ)と呼ばれる肉食型のハチの1種です。狩蜂はスズメバチの遠縁の親戚にあたり、主に芋虫を捕まえて幼虫のエサにすることで知られています。狩蜂の多くは地面に巣穴を掘って獲物を貯蔵しますが、なかでもとっくり蜂の巣は独特です。
とっくり蜂は泥をこねてとっくりをつくる
とっくり蜂の名前の由来にもなっている巣は、「とっくり(お酒を入れる壺状の容器)」にそっくりの形状をしています。とっくり蜂は地面から採取した泥をこね合わせて、器用に泥細工のとっくりを造形していくのです。
とっくり蜂は家の軒下や天井裏、そして木の枝などに巣をつくるとされています。1つの巣につき1匹しか幼虫を育てないので、巣のサイズは蜂自身の大きさとほぼ同じ小さいものがほとんどです。
とっくり蜂の育児はエサだけ用意して放任主義
とっくり蜂の巣には、生きたまま毒で動けなくした獲物が数匹と、卵がひとつ入っています。卵から生まれたとっくり蜂の幼虫は、親が用意しておいた獲物を食べて成長し、やがて巣を内側から破壊して外界へと旅立っていくのです。
とっくり蜂はゆりかごとなる巣に十分なエサを詰め終えたら、あとは子供に対して完全にノータッチの姿勢をつらぬきます。つまり子供は親の顔を見ることなく、常に単独で生きていくことになるわけですね。
とっくり蜂が活動する時期
とっくり蜂は冬が来る前にとっくりを作成し、獲物を放り込んで卵をうみつけておきます。幼虫は冬の間に孵化し、冷たい外気から守られたとっくりの中でエサを食べながら過ごし、春が来る頃に成虫になって外へ出てくるのです。
したがって、6月頃からとっくり蜂を屋外で見かけるようになり、10月を迎える前には姿を消すのが1年のサイクルになります。
益虫?害虫?とっくり蜂の危険性
とっくり蜂はスズメバチの親戚であり、メスの尻にはもちろん狩りに使う毒針が搭載されています。そのため毒のある危険な害虫と考えられがちですが、とっくり蜂が人に被害をもたらすことはほとんどありません。
とっくり蜂の毒は、人間よりはるかに小さな芋虫を殺さずに麻痺させるためのごく弱いものです。仮に人間が刺されたとしても、大事に至るケースはまずないといってよいでしょう。
加えてとっくり蜂の性格は非常に温厚で、自分より巨大な相手に対して積極的に立ち向かうようなことはしません。ほとんどの場合、とっくり蜂は人間が近づくと遠くへ逃げていきます。
とっくり蜂はむしろ、畑や花壇を食い荒らす芋虫を食べてくれるため、害虫どころか益虫としての側面が強い虫です。家の近くで見かけたからといって、すぐに駆除しなければならないような蜂ではないといえます。
もしも刺されてしまったときは……
いくらとっくり蜂がおとなしいといっても、巣を壊したり自分や巣に直接触れようとしたりすると、刺されてしまう可能性もあるので注意しましょう。巣はとても見つけづらく、知らないうちに巣を壊してしまって襲われるということもあるようです。
とっくり蜂に刺されても大抵の場合はチクっとする程度で済みますが、体質によってはアレルギー反応が出るかもしれません。腫れや痛みがいつまでも引かない場合は、なるべく早く病院で診察を受けましょう。
油断は禁物!とっくり蜂とよく似た巣をつくるスズメバチ
前述の通り、とっくり蜂自体には危険性はほとんどありません。しかし、よく似たとっくり状の巣をつくる蜂はとっくり蜂のほかにもいます。しかも厄介なことに、そのなかには人を襲う危険な種類の蜂もいるのです。
コガタスズメバチもとっくり型の巣をつくる
とっくり型の巣をつくる蜂のなかでとくに注意しておきたいのが、「コガタスズメバチ」というスズメバチの一種です。コガタと名前はついていますが、スズメバチのなかでは比較的大型な25mm程度の体格をしています。
コガタスズメバチの巣はつくりはじめの時期にくびの長いとっくりのような形をとり、巣が大きくなるにつれて一般的に見られるスズメバチの巣になっていきます。そのため、とっくり型の巣がとっくり蜂のものなのか、それともコガタスズメバチのものなのか、判別がつきにくいかもしれません。
コガタスズメバチは積極的に戦闘するタイプの蜂ではありませんが、うかつに巣に接近すると集団で襲い掛かってくる可能性があります。スズメバチらしく毒性も強いため、とっくり型の蜂の巣には近づかないのが無難です。
形は同じでもサイズは大違い
とっくり蜂とコガタスズメバチは巣の形がそっくりではあるのですが、巣自体の大きさがかなり違います。とっくり蜂が指先程度の小さなとっくりをつくるのに対し、コガタスズメバチの巣はソフトボール程度の大きさです。
そのため、一見してとっくり蜂とコガタスズメバチの巣を取り違えることはまずないといってよいでしょう。しかし、「とっくり型の巣」という情報が独り歩きして、コガタスズメバチの巣をとっくり蜂のものと勘違いしてしまうケースがないとは言い切れません。
当然ですが、とっくり蜂と思い込んでコガタスズメバチの巣に近づくと、巣から出てきた蜂に刺されます。コガタスズメバチの毒の強さはとっくり蜂の毒の比ではないので、決して近づかないようにしてください。
また、コガタスズメバチは人間の住居の近くに巣をつくることが多いです。もし巣を見つけた場合には、蜂駆除の業者に依頼して巣を壊してもらうようにしましょう。
とっくり蜂だけじゃない!かわった巣をつくる蜂たち
泥細工でとっくりをつくる特徴的な生態をもったとっくり蜂ですが、このように変わった蜂の巣をつくる蜂はほかにも存在しています。スズメバチのなかにも、一般的なボール状の巣をつくるものだけではなく、一風変わった場所に巣をつくることがあるのです。
クマバチは巣作りで柱に穴を空ける
ミツバチの親戚であるクマバチは、木材や樹に穴を空け、その穴を自分の巣にするという習性があります。クマバチはとっくり蜂と同様に単独行動を好む蜂なので、巣のサイズも1匹だけで暮らせるような小さいものが多いです。
クマバチはほかの個体を縄張りから排除する「排斥行動(はいせきこうどう)」をしないので、1本の柱に複数の巣をつくるのも珍しくありません。そのため、家の柱にいくつも穴を空けられてしまう可能性もあるのです。
地面の下に巣をつくる蜂も
狩蜂の多くは地面に穴を掘って巣をつくりますが、スズメバチのなかには地下に掘った空間に巨大な巣を建造するものがいます。なかでも代表的な種類が、日本最大にして最強の蜂と名高いオオスズメバチです。
オオスズメバチは、土の中や樹の内部に巨大な巣をつくるほか、伐採された枝葉が積まれているとそこにも巣をつくってしまいます。これらの巣は外部からは見えない場合がほとんどなので、気づかないうちに巣に近づいて襲われる場合もあるでしょう。
クマバチはまだしも、オオスズメバチを個人の力で駆除するのは極めて危険です。もしオオスズメバチを駆除する必要が出てきた場合には、必ず業者に依頼するようにしてください。
まとめ
今回は、とっくり蜂をメインに蜂の巣についてお話しました。
とっくり蜂は、泥をこねてとっくり状の巣をつくる特徴的な生態をもった蜂です。人を襲うような攻撃性も、毒性も低いので、比較的安全な蜂といえるでしょう。
だからといって「蜂の巣を見つけた!でも、とっくり型だから安心だね」となってほしくないのが、今記事で伝えたい注意点です。
理由は、とっくり蜂とよく似た蜂の巣をもつ、とても危険なコガタスズメバチの存在です。
巣を見ただけで蜂の種類を特定するのは、一般の方では難しいことかと思います。
そして、巣を作る場所も厄介なことに、わたしたち人間の生活圏で、巣作りすることも多いです。軒下、屋根裏、ベランダ、床下、庭先、土の中など……。
もし家の近くで、蜂が飛び交っているのを見かけたら、巣が近くにあることを考え用心しましょう。このとき、無理して蜂の巣を探そうと後追いすることはやめてくださいね。蜂も自分の巣を守ることに必死なので、人間が近寄ってきたら、普段おとなしい蜂でも攻撃的になります。
しかし、そのまま放置してもよくありません。蜂はどんどん子供を産み、大家族となります。蜂の数が多ければ、それだけ人への危険性も高くなります。できるだけ早いうちに、対処することをおすすめします。
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なによりも、安全で確実な駆除が望めます。
ご自身で対処する方もいますが、蜂による刺傷による死亡事故は、毎年10件以上あります。(情報元:農林水産省の外局 林野庁)
毒性の強い蜂に刺されれば、激しい痛みと赤い腫れ、人によっては意識消失、血圧低下と、命にもかかわります。(情報元:公益社団法人 日本皮膚科学会)
小さな蜂でも侮らず、まずは業者に相談をしてみましょう。弊社では、ご連絡いただければすぐに伺い、プロが無料で現地調査をいたします。(※状況によっては依頼者様と相談了承のもと費用発生になるケースもあります)
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