自宅で水漏れが起きて部屋にあるものや床が水びたしになれば、買い替えや床材の張り替えなどに多額の費用がかかります。こういった被害に遭ったときには、火災保険の補償を活用できるかもしれません。
火災保険は付帯している特約によっては、水漏れが原因の損害を補償することが可能です。また、契約時に設定する免責金額によっては、少しの被害からでも補償を受け取ることができます。必要なときに必要なぶんの補償を受けるために、本記事を参考にご自身の契約内容を見直してみてください。
水漏れが発生したときには、損害に対する補償を受け取ることも大切ですが、それ以前に被害を拡大させないよう対処することも重要になります。迅速に水漏れ修理をしたいという方は、ぜひ生活110番にご相談ください!
目次
火災保険は水による損害にも対応している!?
意外に思われるかもしれませんが、火災保険は水によって引き起こされる損害も補償可能な場合があります。火災保険はその名前から、“火災による損害のみを対象としているもの”というイメージをもたれがちです。しかし実際は、私たちがふだんの生活のなかで受ける可能性のある損害に幅広く対応することができる特約があります。
火災保険で補償される可能性のある損害
水による損害とひとくちにいっても、その内容や発生原因はさまざまです。日常的なトラブルから災害まで、火災保険の補償を受けられる可能性のある損害と、その原因を見ていきましょう。
損害の原因 | 損害内容 |
水ぬれ | ・水道管、排水管、給湯器、貯水タンクなどの給排水設備で詰まりや破裂が起こり、漏れた水で壁紙や床材などの建材、あるいは家具や衣類などがぬれる ・集合住宅で、上階の部屋で起きた水漏れが自分の部屋までおよび被害を受ける |
水災 | ・集中豪雨、洪水、高潮、大雨にともなう土砂崩れなど |
風災 | ・台風や暴風雨などの強風による窓ガラスや屋根の破損 ・風によって破損した箇所からの雨漏りなど |
上の表を見ておわかりいただけたかもしれませんが、火災保険には水漏れ被害そのものに対する補償はありません。そのため、水漏れの被害に遭ったときには「水ぬれ補償」を活用することになります。
水ぬれ補償とは文字通り、水にぬれて傷んでしまった建材や家具などに対する補償のことです。つまり、補償が適用されれば水漏れによって傷んだ床材や壁紙の張り替え費用、家具や家電製品の買い替え費用は保険金で補うことが可能なのです。
火災保険の多くは、“給排水設備での事故”か“他者の部屋で生じた水漏れ”による水ぬれ被害を補償の対象としています。「お風呂にお湯をためていることを忘れ、気づいたら部屋まであふれていた」といった不注意による水ぬれなどは、補償の条件に当てはまらないことがほとんどのため注意してください。
「水災補償」は、おもに雨に関係する災害で受けた被害を補償するものです。豪雨にともなう床上浸水で建材や家具がぬれた場合などは、一見すると水ぬれ被害のようでもありますが、水災補償の対象になります。
雨による損害で水災補償が受けられるのに対し、風による損害は「風災補償」で扱われます。突風で屋根瓦が飛ばされたり、強風で飛来したものによって窓ガラスが割れたりする被害は、基本的に風災として保険申請が可能です。
また、雨漏りが発生したときにも、その原因となる建物の破損が強風によるものであれば風災補償の対象になりえます。窓を開けっぱなしにしていたなど自分の過失・不注意が原因の場合や、経年劣化した窓や屋根からの雨漏りは補償されない可能性が高いので注意してください。
損害の原因によっては保険申請の可否だけでなく、対応の流れや修理に際して負担する料金も変わってきます。水漏れ一般についての情報を知りたい方は、あわせて以下の記事も参考としてお役立てください。
補償対象は「建物」と「家財」にわけられる
さまざまな原因による水漏れや、それにともなう水ぬれの被害を受けるものは、大きく「建物」と「家財」のふたつにわけられます。保険の契約内容によっては補償の対象が限られていることもあり、正しく認識しておかないと受けたい補償が受けられないという事態になりかねません。保険について知るうえでの基礎知識として、ふたつの区分を確認しておきましょう。
建物
保険の対象としての「建物」は、契約者が所有している建物そのものと、それに付属する設備をあわせて指します。たとえば、門や塀、ガレージなど建物の敷地内にある設備も「建物」にふくまれます。また、ふすまや畳、電気・ガス・冷暖房など、建物の内部に組み込まれているような設備も同じく対象となる可能性があるものです。
家財
「家財」には家具・家電製品・衣類といったものがふくまれます。“引っ越すときに運び出すもの”をイメージするとわかりやすいでしょう。なかでも貴金属・宝石・美術品など、ひとつで30万円を超えるようなものや、本などの原稿・証書といった替えのきかないものは「明記物件」とよばれています。基本的には個別に保険証券に明記されないと補償の対象にならないため、心当たりのある方は一度、保険証券をチェックしてみましょう。
一戸建てにお住まいの方は、建物と家財の両方を対象として契約するのが一般的です。また、賃貸住宅の場合、建物を対象とする保険には基本的に大家さんが加入しています。そのため、居住者は家財のみを対象として契約することがほとんどです。
補償される金額の決まり方
水漏れ・水ぬれが発生したときには、ぬれたものの買い替えや修理費用、ほかの住人への損害賠償、漏水分の水道料金など、さまざまな経済的負担が発生します。こういった緊急時の負担を軽減する措置として火災保険の水ぬれ補償が適用された場合、基本的には「水ぬれで損害を受けたものの修理・買い替え費用」の負担が軽減されます。補償として受取可能な損害保険金の金額は、以下のように決まります。
損害保険金=損害額-免責金額
※損害額:損害を受けたものの金額で、保険会社の判断により決まる。算出の基準には、そのものを新品で改めて買うことを想定した「新価」と、使用期間から経年劣化を考慮して見積られた「時価」の2種類がある。
※免責金額:修理・買い替え費用のうち、契約者自身が負担する金額の上限。
損害保険金は、契約時に設定した支払限度額の範囲内で支払われます。また、1回の請求金額が限度額に達しなければ、何度請求しても補償される金額は目減りせず、契約期間内に保険料が変わることも基本的にありません。
ただし、契約を更新するタイミングで保険料が変更されることはあります。申請回数が多いと保険料が高くなることがありますので、保険の使いすぎにはご注意ください。
現在は「新価」で損害額を求めるのが一般的
損害額の算出基準が新価か時価かは、個別の契約によって異なります。以前は時価を基準とするのが一般的だったため、長期契約の期間中という方は時価基準であることが多いかもしれません。
しかし、経年劣化を加味して損害額を見積る時価では、修理・買い替えに足るだけの保険金を受け取れないかもしれないという懸念があります。そのため現在では、新たに契約する火災保険では新価を基準としているものが主流です。
「再調達価額」ともよばれる新価を基準とした場合、損害額は“損害を受けたものを改めて購入する費用”から求められます。いまでも時価が基準になっているという方は、保険料が増加するケースもありますが、状況に応じて保険契約の見直しも検討してみてはいかがでしょうか。
免責金額は支払い可能な範囲に設定を
免責金額も、同じく個別の契約によって設定が異なるものです。たとえば3万円に設定していた場合、10万円相当の損害が生じたときには差額の7万円を保険金として受け取ることができます。
かつては免責金額を一律20万円として、損害額が20万円を超えたらその全額が支払われる「フランチャイズ方式」で契約するのが主流でした。ですが現在では、1万円・3万円・5万円・10万円など一定の金額設定が選択肢として用意され、先述したように損害額との差額を受け取れる「エクセス方式」が一般的です。
免責金額を高く設定しておけば保険料を抑えることが可能ですが、損害の復旧にかかる費用の自己負担割合が多くなります。反対に安く設定すれば、保険料が高いかわりに少しの損害額から補償が受けられるのです。
免責金額の選び方のポイントは、保険料の支払いについて事前にある程度プランを立てておくことです。“保険料を安くするかわりに万一の事態に備えて貯蓄をしておく”、“多少高めの保険料でも安定して支払えるので手厚い補償を受けたい”などの方針を考えておきましょう。
2015年10月から、火災保険の補償期間は最長10年と定められました。つまり、それ以降に契約した火災保険は、少なくとも10年に1回は契約内容を見直す機会があるということです。そのときどきの支払い能力や貯蓄に応じて免責金額も見直してみましょう。
特約によって補償の幅が広がる
保険には「特約」という制度があり、契約しておくことでより限定的な状況に対応した補償を受けることができます。たとえば、集合住宅に住んでいる場合に、自分の部屋で発生した水漏れが階下の部屋の天井から垂れるほどにまで悪化したケースを考えてみましょう。
階下の部屋に被害を与えてしまったときには、その部屋の住人が被った損害に対する賠償責任が生じることがあります。このとき対応する火災保険の特約を付帯しておけば、損害賠償のための保険金が支払われるのです。
ほかにも特約を付帯しておけば、その特約に応じたさまざまな状況に対応することができます。思わぬ損害で負担が増えてしまうリスクに備えて、お住まいの環境に適した特約を付帯しておきましょう。水漏れ・水ぬれ被害にあったときに役立つ特約として以下の4つをご紹介します。
個人賠償責任補償特約
借家人賠償責任補償・修理費用補償特約
建物管理賠償責任補償特約
臨時費用補償特約
損害を復旧するうえで必要な諸経費にあてることができる補償です。たとえば、広い範囲で水ぬれが起こり床材がゆがんでしまったときに、張り替えのために家財を運び出してどこかに預ける必要が生じたとします。この特約を付帯していれば、家財の運搬などにかかる費用を補ってもらうことができるのです。
個人賠償責任補償特約
先述のように集合住宅にお住まいで、自分の部屋で起きた水漏れが階下の部屋におよんだときには、階下の住人が被った損害への賠償責任が生じることがあります。このようなケースで賠償金を補ってくれるのが、個人賠償責任補償特約です。保険会社やプランによっては、相手との示談交渉までサポートしてくれるものもあります。
自転車で通行人にぶつかる交通事故を起こした場合や、遊んでいた子どもが人の家の窓を割った場合など、水ぬれに限らず幅広いトラブルに対応できるものもある有用な特約です。ただし、火災保険のほかに自動車保険や傷害保険などでも付帯可能なため、重複させて余計な保険料を払うことにならないよう、契約内容を確認しておきましょう。
借家人賠償責任補償・修理費用補償特約
賃貸住宅にお住まいの方が不注意などで水漏れを起こしてしまった場合、大家さんから損害賠償を請求される可能性があります。借家人賠償責任補償特約を付帯していれば、このようなケースでの賠償金を補ってもらうことができるのです。この特約は、賃貸住宅の入居時に自動的に契約していることが多いです。
また、損害賠償を請求されることはなくても、自費で損害箇所の修理をおこなうよう指示されることも考えられます。そのような場合に備えて、修理費用補償特約も付帯しておくとよいでしょう。
建物管理賠償責任補償特約
マンションの管理者の方は、管理者向けの特約を付帯しておきましょう。エントランスや廊下など建物の共用部分で水漏れが起き居住者や居住者の財産に損害がおよぶと、ほとんどの場合、管理者に賠償責任が生じます。また、水漏れに限らず、建物のメンテナンス不足で居住者がケガをした場合なども同様です。
3つの水漏れ事例で補償内容を確認!
ここからは、“実際の水漏れ事例に対してどのような補償が適用される可能性があるのか”をご紹介していきます。
※ご紹介する事例は、水漏れについての相談として実際にお客様から生活110番に寄せられたものです。
以下でご紹介する事例は、どれも水漏れ被害としてよく聞かれるものです。ご自身が実際に水漏れ被害に遭ったときに、どのような補償を請求できるのか判断する参考としてご覧ください。
事例1.トイレの水漏れが階下にまでおよんでしまった
階下の居住者から水漏れがあると指摘された。トイレを確認したところ、床が水を吸ったように浮いている。
〈適用される可能性のある補償〉
水ぬれ補償、個人賠償責任補償
分譲マンションの一室で、トイレから漏れた水が床材を傷め、さらに階下の部屋にまでおよんでしまったという事例です。トイレの給排水設備で水漏れが起きたこのケースでは、床の修繕費用として水ぬれ補償を受けられる可能性があります。また、個人賠償責任補償が適用されれば、階下の居住者に対する損害賠償の自費負担も回避できます。
事例2.上の階から水が漏れてきた
洗面台の照明器具に水滴がついており、上の部屋から水漏れしている可能性がある。
〈適用される可能性のある補償〉
自分:水ぬれ補償
上階の居住者:個人賠償責任補償
このような事例では、水漏れを発生させた人に対して損害賠償を請求して、個人賠償責任補償あるいは水漏れを発生させた人の自費による賠償金を受け取ることが可能です。または、“他者の部屋で生じた水漏れ”による水ぬれという要件を満たすため、照明器具などの損害に対して水ぬれ補償が適用される可能性もあります。
ただし、ひとつの事故でふたつの補償を受け取ることはまずできません。請求できるのは“自分が契約している火災保険の水ぬれ補償”か、“上階の居住者が契約している保険の個人賠償責任補償”のどちらかであることに注意しましょう。
事例3.原因不明の水漏れ
原因はわからないが、壁から水が垂れているので調査を依頼したい。
〈適用される可能性のある補償〉
自分:水ぬれ補償
管理者:水ぬれ原因調査費用
「水ぬれ被害は受けているが原因は不明」という事例です。集合住宅でこのような状況になった場合、水ぬれの原因調査にかかる費用は管理者の保険から支払われることが多いです。調査の結果、水ぬれの発生原因が保険の対象であるとわかれば、壁紙の修繕費用などとして補償を受け取れるでしょう。
申請から保険金を受け取るまでの流れ
補償が受けられそうだとわかったら、実際に保険会社に申請をしていきましょう。火災保険を申請してから保険金を受け取るまでには、以下のような手順を踏むことになります。
手順2. 必要書類を準備し、提出する
手順3. 保険会社による現場調査
手順4. 保険金の受取
保険金が下りる前には、申請が適切なものかどうか判断するために、保険会社による審査がおこなわれます。ですが、審査を通るとしても通らないとしても、水漏れ・水ぬれの被害は時間が経つほどに悪化してしまうものです。被害に遭ったときには、申請もふくめて早めに行動するよう心がけましょう。
水漏れの被害に遭ったときにとるべき行動については、以下の記事でもくわしく紹介しています。ぜひ一度ご確認ください。
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手順1. 損害の発生を保険会社に報告
水漏れによる損害が生じたら、まずは保険会社に連絡をします。契約者名や保険証券番号のほか、損害の発生した日時や被害の程度など、補償の金額の確定に必要な情報をできるだけくわしく伝えましょう。賃貸住宅にお住まいの方は、水漏れの被害にあったら大家さんや管理会社にも報告する必要があります。
手順2. 必要書類を準備し、提出する
続いて、保険金の請求に必要な書類を準備しましょう。保険会社に提出を求められる書類には以下のようなものがあります。
・事故状況報告書
・損害申告書
・修理見積書
・水漏れ現場の写真
・登記簿謄本
保険会社によって必要な書類が異なったり、それぞれフォーマットがあったりします。はじめに連絡をしたときに説明を受けられるので、わからないことがあればその場で質問しておきましょう。
これらの内、修理見積書の作成には水漏れ修理・リフォーム事業者の手を借りる必要があります。現場の状況から、修理にかかるおおよその金額を求めてもらいましょう。また、同時に現場の写真も撮ってもらってください。
必要書類がそろったら保険会社に送付し、審査結果が出るのを待ちましょう。請求する金額があまりに高い、写真が不鮮明で損害の状況がわからないなどの問題がなければ、数日で保険金を受け取れることもあります。
手順3. 保険会社による現場調査
場合によっては損害保険鑑定人や調査員が派遣され、申請内容と現場の状況を照らし合わせる調査がおこなわれます。この調査結果にもとづいて、保険金が支払われるかどうかが決まるのです。
手順4. 保険金の受取
被害状況を確認して申請が適切であると判断されれば、保険金を受け取ることができます。水漏れのケースであれば、最初に連絡をしてから1~2週間ほどで支払われるのが一般的です。
火災保険を利用するときの2つの注意点
適切に利用すれば手厚い補償を受けられる火災保険ですが、利用するうえでは以下の2点に注意が必要です。
注意点2. 申請代行をうたう事業者に注意!
もらえたはずの保険金を逃すことになったり、不当に高額な費用を事業者に支払うことになったりしないよう、注意点をしっかりと把握しておきましょう。
注意点1. 申請は損害を被ってから3年以内に!
保険法では、保険金請求権の消滅時効は3年とされています。そのため、たとえば「水漏れが起きて傷んだ床材を5年前に張り替えた」というような場合に、張り替え費用分の保険金をいまから請求するのは困難です。水漏れ・水ぬれの被害に気づいたら、できるだけ早く申請のために動きだしましょう。
注意点2. 申請代行をうたう事業者に注意!
「保険金を使えば実質無料でリフォームができる!申請も代行します!」といった広告を打っている事業者には注意してください。
たしかに、水漏れで傷んだ部分のリフォームだけでなく保険の申請まで代行してもらえるとなると、魅力的に思われるかもしれません。しかし、ほとんどの保険では“申請をしてよいのは原則として被保険者のみ”と規定しているため、代行を依頼すると契約違反になりかねません。
また、申請代行サービスを装って詐欺をおこなう事業者が多いことも問題です。このような事業者は、損害額を過大に見積り高額な保険金を請求しておきながら、工事をできるだけ安く済ませて多くもうけようとします。申請した金額が高いと保険会社の審査に時間がかかるため工事は一向に進まず、解約しようとすると多額の違約金を求められることもあるのです。
火災保険の申請は本来、先ほどご紹介したように自分でも簡単におこなえるものです。無用なトラブルを回避するためにも、自身での申請をおすすめします。また、水ぬれ箇所のリフォームや水漏れ修理などは、補償・特約から保険金が得られるとわかったあとで、改めて信頼できる事業者を選ぶようにしましょう。
水漏れトラブルについてのご相談は生活110番へ!
水漏れにともなうトラブルが起きたときには、火災保険を利用してみましょう。ただし、保険金が支払われる前には数日~十数日の審査期間があります。放置して状況が悪化する前に、水漏れが起きたらできるだけ早めに保険申請に向けて動きだしましょう。
必要なだけの保険金を受け取るためには、保険会社の審査を通過できるかどうかがポイントになります。水漏れの損害状況から復旧にかかる適正な費用を求めるときには、水漏れ修理のプロの意見を仰ぎましょう。
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