ドアが突然開いてぶつかりそうになった、そのような経験はありませんか。ドアというのは意外と開閉のためのスペースを取ります。といってもドアがなければ部屋と廊下の間を仕切れず、現代生活における家族間のプライバシーの観点では大きな問題です。
このような場面で活躍するのが引き戸。和室には障子やふすまとしてもなじんでいるほか、近年ではバリアフリーの面でも注目が集まっています。外に目を向けてみればコンビニなどの自動ドアも、引き戸の一種ですよね。
今回はそんな引き戸をDIYで実現させる方法についてご紹介します。
引き戸に向いている場所ってどこ?
そもそも引き戸はどのような場所に向いているのでしょうか。先ほども軽く触れましたが、引き戸にするメリットを中心に探っていきましょう。
引き戸のメリット
一般的な開き戸は片側を軸に、回転させながら開いていきます。つまり上から見るとコンパスのように円を描くため、そのぶん大きなスペースが必要です。外開き戸の場合、廊下などをふさいでしまいますし、内開き戸でもそのぶん部屋にデッドスペースが生まれてくるのです。とくに外開き戸だと換気などで開けておきたい、という事情に応えにくくなってしまいます。
しかし引き戸の場合、扉は回転するのではなく横にスライドします。そのため必要なのは扉を収納するためのスペースだけで、開くために空間を空けておく必要はないのです。
引き戸のデメリット
引き戸のデメリットは「横に扉の幅分のスペースを必要とすること」です。このスペースを戸袋といいますが、部屋の内側に戸袋がある場合はここの部分をふさがないようにしなければなりません。当然ながら戸袋部分の壁に収納を取り付けることはできないのです。戸袋の両側に壁があるタイプ(引き込み戸)や、家具などを置いて戸袋部分を隠すこともできますが、この場合ほこりがたまりやすくなってしまいます。
またレールの溝が必要になることにも注意しておきましょう。しかも汚れを引き込んでしまいやすいほか、開き戸と比べると動作のための上下に余裕が必要になり、すきま風が入りやすいといった欠点もあります。
引き戸の種類
引き戸にはいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。
【片引き戸】
1枚の戸を横に滑らせて開けるタイプの引き戸です。多くの住宅で採用されているほか、既存のドアをDIYで取り替えることもできます。
【引き分け戸】
2枚の扉が左右両方に向かって開くタイプの引き戸です。コンビニやビルの自動ドアがイメージしやすいでしょう。広い開口部を得られる半面、左右にスペースが必要です。
【引き込み戸】
壁の間に扉をしまい込むことができるため、開いている際に引き戸が目立ちません。反面ほこりが奥にたまりやすく、掃除の手間がかかります。
【引き違い戸】
窓などにも多い、2枚の扉を並行したレールにそれぞれ載せ、独立して開閉できるようにしたタイプです。ふすまや障子もこの1種にあたります。2枚の扉で開き方には自由が生まれますが、扉を外さなければ1枚分の開口部しか得られないのがデメリットといえるでしょう。
【連動引き戸】
レールに工夫をし、複数枚の引き戸をまとめて扱えるようにしたものです。戸袋にまとめて扉を収納できることも多く、広い開口部を得たい場合、可動式の間仕切りなどに向いています。ドア以外では雨戸などにも利用されることがあります。
おすすめの引き戸設置場所
先ほどのメリット・デメリットを踏まえ、おすすめの引き戸設置場所を選んでみました。
【和室】
「障子」「ふすま」も引き戸の一種。できれば引き戸を選びたい空間といえるでしょう。また畳の湿度調整効果を上げるためには換気も必須。開けておいたままにできる引き戸のメリットを最大限に生かすことができるのです。
【子ども部屋】
子ども部屋も引き戸を設置するメリットが大きいです。というのはドアを閉めてしまうと、そのぶん監視の目が届きにくくなってしまうから。とくに子どもが小さいうちは開けっ放しにできる引き戸の方が適しているといえるでしょう。
また子ども部屋は間仕切りとして引き戸を部屋の真ん中に取り付けるのもひとつの方法。広さを優先させるか子ども同士のプライバシー保護を優先させるか、事情に合わせて切り替えることができるのです。
【リビングやキッチン】
最近ではリビングダイニングキッチン(LDK)という3つの機能を1部屋としてまとめることも増えてきました。しかしにおいが気になる料理などはリビングと区切っておきたいですし、火や刃物を扱っているときは安全のため、子どもやペットを中に入れたくないもの。引き戸であれば疑似的に1部屋として移動することもできますし、必要に応じて区切ることも可能になります。目を離したくない場合は腰までの高さの引き戸を取り付ける手も。
多くのメリットがある引き戸ですが、壁を壊したりといった大規模なリフォームが必要だと思っている方も多いでしょう。しかし片引き戸はDIYで交換・設置することもできるため、一度検討してみてはどうでしょうか。
引き戸のアイディアあれこれ
どのような引き戸がいいか、イメージを固めるための手掛かりとして引き戸の一例をご紹介します。交換する引き戸を選ぶ際の参考にしてみてください。
面材を集めてまとめたタイプの引き戸は木のぬくもりを強く感じることができ、部屋に温かい印象を与えてくれます。
空間を完全に仕切らないのであれば、縦格子の引き戸にするとおしゃれに仕上がるかもしれません。
窓付きの引き戸です。窓があることにより部屋の向こうの様子をうかがいつつ、空間としてはしっかりと仕切ることができますね。また、室内に光を取り込むのにも一役買ってくれます。
間仕切りとして引き戸を使うときは部屋の壁に色を合わせてみてはいかがですか。1部屋を違和感なく、別々の部屋として利用することが可能です。
ガラス障子も引き戸の一種。色とりどりのガラスをはめ込めば、おしゃれな空間へと早変わりします。
和室には障子やふすまなどの引き戸を設置すると、空間にマッチしやすくなります。
自分で設置!引き戸の扉取り付け
では、それまで開き戸だったドアを引き戸に自分で取り替えるにはどのような手順が必要になるのでしょうか。まずは既製品を取り付ける場合について確認していきます。
準備するもの
引き戸を設置するときは次のものが必要です。
【扉本体】
多くのメーカーが販売しています。節約したい場合にはこれまで使っていたドアを再利用する手もありますし、自分で木材などを購入して組み立て、自作することも不可能ではありません。自作する方法については次の章で説明しています。
【鴨居(かもい)】
引き戸を誘導する、天井側のレールや溝を入れてある部分です。引き戸の場合、扉の幅の2倍の長さを目安に考えておきましょう。木材で作る際は乾燥で反りが生じるため、木表側(丸太の場合の外側)が下になるように製作・取り付ける必要が出てくるので注意してください。
【敷居(しきい)】
鴨居とは逆、床側のレールや溝を入れてある部分です。「敷居が高い」という慣用句でもおなじみでしょう。こちらも扉幅の最低2倍の長さが必要なほか、鴨居と同じく木材を使用する際は木表側が上になるように取り付ける必要があります。開き戸の場合、沓摺(くつずり)と呼ばれる部分です。
レールにも取り付け方・タイプでいくつかの種類があります。
【取り付け方】
- 面打式:敷居や鴨居の表面に直接レールを固定する取り付け方
- 掘込式:敷居や鴨居に溝を掘り、その内部にレールを固定する取り付け方
【レールの種類】
・山型レール
凸状になったレール。引き戸に付いている戸車がボビン状で凹みがついており、組み合わせることでスムーズに開け閉めができるようになります。溝を掘る手間をなくすため関西で生まれたといわれており、面打式で固定する際によく使われます。また敷居側に使われることが多いです。
・ヨの字レール
断面がヨの字に見えるレールです。窓サッシに多く、溝の間に扉をはめ込むことで開閉ができます。鴨居・敷居とも使われることが多いほか、溝を使うという性質上段差を最小限にするため、引き戸の場合は堀込式で取り付ける傾向にあります。
・直立レール
山型レールの改良版に当たり、扉が両側から平らなレールを挟み込む形になっています。ヨの字レールの安定性も取り入れた形といえるでしょう。なお面打式・掘込式で形状が変化します。
・フラットレール
段差をなるべく小さくするため、戸車部分にわずかな溝のみを設けたレールです。段差がほとんどなく、車いすや台車などもスムーズに利用できます。
【縦枠】
鴨居と敷居をつなぐ部分です。場合によっては設けないこともありますが、DIYでおこなう場合は鴨居の強度を持たせるためにも製作した方が無難です。
【ストッパー】
ストッパーがないと勢いよく引き戸を開け閉めした際、縦枠部分が壊れてしまいます。そのためレール端にあらかじめストッパーを取り付けておきましょう。
【固定のための道具】
柱部分に固定・ねじ止めするためのプラスドライバー、やむを得ず石膏ボードに固定する場合は穴部分を補強するアンカーを用意しましょう。また水準器なども用意しておくと便利ですが、現在ではスマートフォンなどに傾き検知機能が内蔵されており、水準器アプリなどを利用できることも多くなっています。
引き戸の取り付け方
必要な材料を確認したら、実際の取り付けに入りましょう。開き戸を片引き戸に交換する例をご紹介します。
【手順1:寸法を確認しよう】
ドア開口部を覆えるよう、若干余裕を持った幅・高さの扉を選びたいものです。そのため寸法は正確に測ることが大切になります。また戸袋部分が左右どちらかに設けられるか、ドアの幅分があるかも十分に確認しておいてください。
【手順2:既存のドアを取り外す】
すでに別の戸が付いている場合、ドア本体を外しましょう。
開き戸の場合蝶番のピンを外せば、ドアとドア枠が分離できることが多いです。安全のためにも蝶番部分を外してからドア枠の固定されているねじを取り除いてください。またラッチ受けも同様に外すことができます。
なお開き戸を外した後は蝶番の穴部分・ラッチ受けが目立ってしまうでしょう。そのため引き戸を取り付けた後パテやフィルムシートを利用して補修することを検討してください
【手順3:敷居・下部レールを取り付ける】
床に引き戸を滑らせるためのレールを取り付けます。できれば木材を埋め込み敷居を作ると、部屋の区切りにもできて利便性が高まるでしょう。
【手順4:鴨居・上部レールを取り付ける】
引き戸の上側となる鴨居を取り付け、そこにレールを固定します。鴨居を取り付けるときはできる限り柱の部分にねじ止めするようにしましょう。また水準器を使って床と平行にすること・扉の高さよりも若干余裕を持たせ、扉をはめ込むことができるようにすることも大切です。
【手順5:縦枠を取り付ける】
鴨居の強度を高めると同時に引き戸がレールから飛び出さないよう、縦枠を取り付けましょう。床のレール端から垂直になるように高さを取り、鴨居を支えるように取り付けます。引き戸の開口部側は既存のドア枠を延長するように作るときれいに仕上がりやすいでしょう。
【手順6:引き戸をはめ込む】
引き戸をレールにはめ込み、動くようにします。まず上のレールをはめてから下のレールに載るようにすると固定しやすいです。
自分で作る!引き戸の扉制作
先ほどは既製品を使う前提で引き戸をDIYで取り付ける方法をご紹介しました。しかしできれば扉自体もDIYで作ってしまいたいと考える方も多いでしょう。また「外した後の開き戸がもったいない!できればリサイクルしたい!」という場合も。この章では扉製作の方法について見ていきます。
準備したい材料
引き戸の扉製作では次のようなものを用意しておきましょう。いずれもホームセンターなどで入手しやすいものです。
【角材】
ドアの幅分の長さ・高さ分の長さが最低でも2本ずつ必要です。また内部の補強材としても入れたいほか、透明な板などをはめ込む場合は固定用に準備しておきましょう。なお戸車を取り付ける下部分は穴を掘り込む必要があるため、少し余裕を持った幅にしてください。
【合板】
扉の部分を製作するため、最低2枚必要です。なお合板ではなくアクリル板や段ボール状の透明ポリカーボネイト板などを角材で作った枠にはめ込むといった方法もあるので、見通しを確保したい場合は検討してみましょう。
【塗装材】
合板そのままだと汚れが付きやすいため、塗装することを考えておきましょう。最低でもニス塗りはしておきたいところです。
【戸車】
戸車を取り付けることでスムーズな開閉をおこなうことができます。最低でも敷居側に取り付ける2つは用意しておきましょう。
【取っ手】
開き戸の場合はドアノブですが、引き戸の場合は取っ手が重要な役割を果たします。
【くぎ・接着剤など固定するための材料】
継ぎ手と呼ばれる、接着剤なし・くぎなしで固定する方法もありますが、DIYで実現させるにはハードルが高いです。その代わりにくぎや接着剤を利用し、しっかりと部材同士を固定するようにしましょう。あえてジョイント金具などを使い、安定性とデザイン性を高めてみるのもひとつアイディアです。
製作手順
材料を準備したらひとつひとつ、丁寧に作業を進めていきましょう。
【手順1:戸車用・取っ手部分の溝を掘る】
戸車は大半がドアの下に隠れます。そのため戸車を取り付けるための溝を作っておく必要があるのです。取っ手についても扉部分よりも奥まった位置になることがあるため、事前に加工しておくと作業がしやすいでしょう。
【手順2:外枠を組み立てる】
一番外側に当たる部分を角材で組み立てます。寸法が正確か、念を入れ確認しておいてください。
【手順3:補強材を入れる】
外枠だけだと合板を貼り付けた際、強度が足りなくなります。高さの方向に2本程度・幅の方向に4本程度外枠の間に補強材を入れましょう。
【手順4:合板を貼り付ける】
合板を引き戸の大きさに合わせて加工し、接着剤や釘などで固定してください。またアクリル板などをはめ込む際はその部分に合わせた穴あけ加工なども必要になってきます。取っ手部分も凹みに取り付けるタイプの場合、加工をしなければなりません。
【手順5:塗装する】
木材はそのまま使うと傷みやすくなるため、塗装をおこないます。取り付ける部屋の雰囲気に合わせ、表裏で別の塗装をしてみるのもいいかもしれません。また壁紙などのシートを貼り付けてもきれいに仕上がります。
【手順6:戸車・取っ手などの部品を取り付ける】
引き戸の下側・必要なら上部にそれぞれ2個ずつ戸車を取り付けます。またこの段階で取り付けると塗装をきれいに仕上げつつ、取っ手に塗料が付くことを防ぐことが可能です。
また鍵付きといえば開き戸のイメージですが、引き戸にも鎌錠などの鍵を取り付けることができます。引き戸の鍵と取り付け方については「主として2種類!室内で引き戸の鍵を簡易的につけるメリットと方法 」にて解説していますので、こちらも一度ご確認ください。
【手順7:引き戸を取り付ける】
実際に使用する場所に引き戸を取り付け、しっかりと動作するか確認しましょう。スムーズに動作するようであれば製作完了です。
ステップアップ!利便性の高い吊り戸にしてみよう
吊り戸は引き戸に比べて扉を軽く動かせるほか、下のレールを最小限・必要に応じてなくすこともできるため、介護の負担を減らすバリアフリーを考えるのであれば吊り戸を採用したいところです。引き戸にすれば吊り戸にステップアップしやすいですが、ドアを一手に支えることになる鴨居の強度を十分に確保しなければなりません。
吊り戸の構造を知っておこう
吊り戸は構造上、床からほぼ浮いた形になっています。そのためスムーズに動かすための戸車もドア上部についているほか、戸車自体がロープウェーのようにドア本体をぶら下げる形状になっていることも特徴でしょう。
また扉の重さを主に下で支える引き戸と違い、鴨居側で扉の重さをほぼ支えることになるのです。このことから鴨居に関しては柱にしっかり固定されていることなどが求められますが、鴨居に十分な強度があるかどうかを見た目で判断することは難しいです。そのため吊り戸にする際には業者に依頼して、安全に使えるよう施工してもらうことをおススメします。
【なぜ吊り戸にはレールが不要なタイプがあるのか】
上から吊り下げる形の吊り戸は床に大きな力がかからず、理論上は上のレールだけで動かすことができます。しかし下の部分を完全に固定しないと風や衝撃でドアが揺れることになり、最悪の場合飛ばされてしまうおそれも。それを防止するために吊り戸でも浅い溝(ガイドレール)を設け、外れないようにしていることが多いです。
ただバリアフリーを考えると溝自体もない方がいいのは確かでしょう。こうしたドアの場合は通路の端などにガイドピンを設け、レールの代わりにドアを誘導・固定する役割を持たせている場合があります。
まとめ
開き戸のドアを引き戸にDIYで交換することは難しいように見えますが、ポイントを押さえれば実現させることは意外と難しくありません。また一歩ステップアップしてバリアフリーに配慮した「吊り戸」も一度考えてみましょう。
しかし吊り戸となると十分な強度が必要となります。また引き戸に鍵などを取り付けたりする作業も意外と大変なので、業者に任せるのも1つの手ではないでしょうか。自分で作業しても安全な場所を見極め、確実に施工してほしい部分と自分でできる部分を分けてみてください。
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