スズメバチの生態|蜂の一生と種類ごとの特徴、危険を避ける駆除対策

2023.9.12

スズメバチの生態|蜂の一生と種類ごとの特徴、危険を避ける駆除対策

暖かい時期になると、私たちの生活圏でもよく見かけるようになる『スズメバチ』。その攻撃性や毒性、群れで攻撃する性質から、世界中で毎年のように被害者を出す非常に危険な生き物です。しかし、スズメバチはなぜ人をおそうのでしょうか。

スズメバチの生態や活発になる時期をよく知っておかなければ、不用意な行動からスズメバチを怒らせ、おそわれてしまうかもしれません。スズメバチがどう生活し、どういった特徴を持っているかを知ることが、蜂対策の第一歩となります。

ここでは、そんな蜂の生態について詳しく解説していきます。自分や家族が蜂被害にあわないよう、しっかり知識を身につけておきましょう。

生活史から見る、スズメバチの生態と危険な時期

スズメバチも当然生物なので、一生の流れというものがあります。この流れは基本的に決まっており、これを『生活史』とよびます。ここでは、そんなスズメバチのおおまかな生活史を解説していきます。この活動時期に関してはスズメバチの種類や環境(気温など)によって少々差異が出るため、その点はご注意ください。

スズメバチの一生

スズメバチの一生がわかれば、スズメバチの生態や注意すべき時期がわかります。ここでは、スズメバチが主に活動をはじめる『4~5月』からの1年間を追っていきましょう。

◎4~5月ごろ:女王蜂の巣作り・産卵

夏場に発生するイメージのあるスズメバチですが、多くのスズメバチはこの時期に動きはじめます。とはいっても、この時期に行動しているのは女王蜂のみであることが多いです。

冬眠から目覚めた女王蜂は、生活に適した場所を見つけるとそこに巣を作ります。ここから1ヶ月程度は、1匹で巣作りと産卵、また働き蜂になる幼虫の世話を進めていきます。

はじめは女王蜂1匹で作成していくため巣の成長ペースは遅く、危険性も高くはありません。また、この時期は女王蜂も巣に定着することに必死であるため、それほど攻撃性も高くないでしょう。そのため、この時期がハチ駆除にとって最適な時期といえるのです。

◎6月~8月ごろ:働き蜂と巣の成長

この時期になると巣もかなり大きくなり、働き蜂も多数誕生しています。6月ごろはまだ働き蜂も幼虫ですが、これが成長してくると巣の作成ペースも上がり、急速に大きくなっていきます。

このあたりから徐々に攻撃性も増しはじめるため、注意が必要となってきます。とくに7~8月には働き蜂もかなり成長しているため、不用意に接触すると刺されてしまうこともあるでしょう。

◎8月~10月ごろ:来年の女王蜂の出産※とくに危険な時期!

働き蜂が多数成長している夏の終わり~秋口にかけては、その巣も最盛のときを迎えます。また、この時期になると来年のことを見すえた産卵がおこなわれるようになってきます。それが、『オス』『来年の女王蜂』です。

スズメバチの働き蜂は総じて『メス』なのですが、このメスには基本的に生殖能力がほとんどありません(女王不在時は例外的に出産する)。そこで現行の女王蜂は、生殖用の『オス』と来年女王蜂になる予定の『メス』をここで出産するのです。女王蜂は受精したかしていないかでオスメスを産み分けられるため、そこでコントロールしています(受精した場合がメス)。

このとき生まれるメスは翌年の女王になる義務があるため、現行の女王蜂からはより質のいいエサを優先的に与えられます。そうして育ったメス蜂は、産卵するための能力を得ることができるのです。また、スズメバチは基本的に冬を越せませんが、優先的に育てられたこのメス蜂は冬眠することで越冬できるようになります。

これらのような、巣にとって重要なハチを出産・生育している最中は、働き蜂も非常に巣を警戒しています。そのため、この時期は1年を通してもっとも危険な時期といえるのです。場合によっては7月からこの出産がはじまることもあるため、この時期の巣やスズメバチには絶対に近寄らず、極力刺激しないよう心がけましょう。

蜂の寿命の詳細はこちらをご覧ください。

◎10月下旬~11月以降:来年に向けての準備

このころになると、大きく成長した翌年の女王蜂がオスとともに巣を立ちます。現行の巣も徐々にハチの数が減ってくるころです。しかし、10月ごろだとまだまだ働き蜂は元気に動いていることが多いため、危険な時期といえます。

巣から旅立ち、オスと交尾した女王蜂は来年の出産に向けて冬眠の場所を探します。この場所は、主に地中や木のすき間などが多いといわれています。

11月~12月ごろになってくるとさすがにスズメバチは少なくなってきますが、暖かい場所だと生き残っている可能性はあります。油断はしないようにしておきましょう。

冬のスズメバチの状態はこちらをご覧ください。

『スズメバチ』には複数の種類が!それぞれ異なる見た目や特徴

スズメバチと一口にいっても、その中にはさまざまな種類があります。種類ごとの特徴を知ることも、スズメバチの生態を知るうえでは大切なことです。ここでは、日本国内でよく見るスズメバチを5種ご紹介していきます。

オオスズメバチ

日本に住む種の中でもとくに有名かつ、攻撃性の高いスズメバチです。

働き蜂の体長が最大約40mmと非常に大きく、かつ毒性も強い点が特徴。また、敵に対する攻撃性も非常に強く、世界中で被害の多い種となっています。

日本では北海道から九州まで広く分布していますが、主に山中や地中などの自然の中に生息していることが多いです。そのため、登山やハイキングにいく場合などは細心の注意を払う必要があるでしょう。

生態から見たスズメバチ対策

キイロスズメバチ

オオスズメバチよりも小型ですが、日本ではかなり被害の多いスズメバチです。

その理由としては、オオスズメバチよりも人間の生活圏に近い位置で生活している点が挙げられます。主に自然の中に巣を作るオオスズメバチに対して、キイロスズメバチは家屋の天井裏など、私たちに比較的近い場所によく巣を作るのです。

また、オオスズメバチ同様攻撃的かつ全国に分布しているため、人が刺される被害は後を絶ちません。見た目は他のハチよりも黄色っぽく見分けやすいため、自宅近辺で見かけた場合は注意し、不安であれば駆除・調査を依頼するようにしましょう。

生態から見たスズメバチ対策

ヒメスズメバチ

日本にいる種では、オオスズメバチに次いで大型のスズメバチです。腹部の先端、針付近の色が、スズメバチの種類の中では珍しく『黒色』である点が特徴的(対馬にいるヒメスズメバチは先端が黄色いそうです)。

このハチも人間の生活環境に近い場所(屋根裏や軒下など)に巣を作りますが、前述の2種と比べると温厚な性格をしています。本州から四国、九州など広い地域に分布していますが、被害例が少ないのはやはりその攻撃性の低さから来ているのでしょう。また活動期間も5月ごろ~9月ごろと短く、毒性もそれほど強くはありません。

とはいえ、巣や働き蜂を刺激すると刺されてしまうこともあります。不用意に近づかないようにしてください。

生態から見たスズメバチ対策

コガタスズメバチ

この種は、都会などでもよく見られます。外見はオオスズメバチによく似ていますが、サイズは一回り小ぶりです。北海道から沖縄にかけて非常に広い範囲に生息していますが、この種もヒメスズメバチ同様それほど攻撃的ではありません。

軒先などの開けた場所に巣を作ることが多いですが、この巣が特徴的で初期のものは反転させたとっくりのような形状をしています。このような巣を早期に見つけた場合は、ハチ駆除業者に相談してみましょう。

生態から見たスズメバチ対策

モンスズメバチ

こちらも全国的に生息する、攻撃性の高いスズメバチです。床下や屋根裏など目立たない場所に巣を作るため、被害に気づいたときにはすでに蜂の巣も大きく成長していたなんてこともあります。

このハチは腹部の黒部分が多い点が特徴的ですが、最大の特徴はそこではありません。モンスズメバチ最大の特徴は、夜間でもある程度飛行し、活動できる点です。

スズメバチは基本的に夜間あまり活動しません。そのため、夜飛んでいる蜂を見かけたらこのモンスズメバチかもしれません。夜間とはいえど油断せず、しっかり注意しておくようにしましょう。

夜のスズメバチの状態はこちらをご覧ください。

生態から見たスズメバチ対策

スズメバチの毒性とアナフィラキシーショックの恐怖

1章でご紹介したスズメバチの生態から危険な時期はわかりましたが、その危険性についてはご存じでしょうか。ここでは、スズメバチの毒のおそろしさについて、わかりやすく解説していきます。

ハチ毒の仕組みと命をおびやかす『アナフィラキシーショック』

スズメバチの毒針は、主に働き蜂であるメスが持っています。これは、本来産卵管であった器官が変化したものだからです。そのため、オスには毒針がありません。

この毒には人体に危険をおよぼす成分が含まれているのはもちろん、仲間に警報を知らせる成分を含んだフェロモンも含まれています。蜂におそわれる際、複数の蜂に追われることが多いのはこのためです。

そんなスズメバチの毒針による被害は、大きく分けて2種類あります。
『患部が数日間はれたり、痛んだりする』症状と『刺されてすぐに全身に異常が出る』症状です。とくに問題なのはもちろん後者で、主に蜂の毒によるアレルギー反応によって引き起こされています。これを、『アナフィラキシーショック』といいます。

このアナフィラキシーショックはアレルゲンとなる物質が体内に入ることで発生するといわれています。蜂の場合は刺されることによってその毒が体内に入ってしまうため、そこからアナフィラキシーショックにつながるケースが多いでしょう。

このアレルギーを持っている確率は低いですが、蜂の毒に対するアレルギーの耐性がある人でも1度刺されることでアレルギー体質になってしまうこともあるため注意が必要です。

アナフィラキシーショックが発生すると呼吸困難や吐き気、じんましんなどの症状が出てしまう危険性があり、最悪の場合死亡してしまうこともあります。たった数十分で意識がなくなったり、心臓が停止してしまうこともあるため、蜂に刺された後に気分が悪くなった場合は無理せず病院にいき、すぐに検査を受けるようにしましょう。

『2回刺されると危険』って本当?

そんなスズメバチの毒針、『2回刺されると危険』といううわさを聞いたことはないでしょうか。しかしこのうわさは、完全に正解ともいい切れません。

前述したように、1回蜂に刺されると蜂毒のアレルギー体質になり『やすく』なります。そのため2回目の方が危険というのは間違いではありませんが、あくまでなりやすくなるだけなので2回3回刺されたら確実にショックが起きる、というわけでもありません。

逆に、1回目でも蜂毒のアレルギー反応が出てしまうケースももちろんあります。はじめからアレルギー体質という方は少ないとされていますが、実際にはじめて刺された人がアナフィラキシーショックで搬送される事例は出ています。そのため、まだ1度も刺されていないからといって油断するのはいけません。

スズメバチに刺されないためには?駆除する場合は業者に依頼!

ここまではスズメバチの生態や特徴についてご紹介してきました。しかし、そんな危険なハチの駆除・対策をしたい場合にはどうすればよいのでしょうか。

スズメバチ被害対策

スズメバチ被害は、主に巣やスズメバチ自体を刺激したことにより起こります。自分から刺激しにいくことはもちろんいけませんが、スズメバチの巣は隠れた場所にあることも多いため意図せず刺激してしまうこともあるでしょう。

このように不意にねらわれてしまうことを防ぐためにも、日ごろからの対策は大切です。とくに山や森など、スズメバチの生息していそうな場所では、以下のような対策を心がけましょう。

・濃い色の服装は避ける(黒でなければいいわけではない)。
・おそわれそうになった場合は、髪や肌をかくすための白色など、薄い色の帽子や布を被ってじっとする。
・強い香水などは蜂に反応されやすいため、極力つけない。
・茂みや木の周りなどでむやみに騒いだりしない。
・蜂がいても騒いだり、手で追い払ったりしない。(とくに払うときの手は刺されやすいので注意)

また、もしも刺されてしまった場合は症状の有無に関わらず、すぐに救急車を呼ぶか病院に急行し、治療を受けるようにしてください。

駆除は自分では難しい!

自宅に蜂の巣がある場合、なんとか自分で駆除してしまいたい、と考えてはいないでしょうか。

たとえ初期の女王蜂しかいない巣だとしても、刺されてしまうおそれはあります。また、巣がある程度成長している段階になっている場合は、巣に近づくことすら危険です。

スズメバチは種類にもよりますが、非常に数が多く攻撃性も強いため、プロでも時間のかかる作業となります。身の安全のためにも、巣を見つけた場合や蜂が家の周りを飛び回っている場合は、自分で無理に対処しないようにしましょう。

スズメバチの駆除方法や注意点はこちらをご覧ください。

スズメバチの生態①スズメバチの一生。寿命はどれくらい?

まとめ

スズメバチの発生する時期は基本すべて危険ですが、働き蜂の成長~女王蜂の出産近辺の時期(7月~10月ごろ)はとくに危険です。スズメバチの毒は場合によっては命にかかわるほどの危険性があるため、とくにこの時期は巣やハチに近寄らないようにしておきましょう。

もしもスズメバチが身近にいた場合は、まず刺されないための対策をしましょう。スズメバチは生態的に濃い色や動くものに攻撃する習性があるため、できるだけ薄い色の服を着て、じっとしている状態がベストです。また、においの強い香水などを付けたり、持ち歩いたりすることも危険なので、極力やめておきましょう。

それでも刺されてしまった場合は、応急処置に加えてすぐに病院へいくことが大切です。とくにアナフィラキシーショックの症状が出ている場合は、数分間のロスが命取りになります。

また、巣を自宅などで見つけたら自分でなんとかしようとせず、プロの業者にお任せください。刺される心配なく、安心の生活を取り戻しましょう。

この記事の監修者 ナカザワ氏について

この記事の監修者
ナカザワ氏 NPC 総合害虫駆除
監修ジャンル:害獣 害虫
神奈川県・東京都を中心とした総合害虫駆除サービスを運営。防除作業監督者(防第14721号)の国家資格を有し、アリ、ゴキブリ、ダニ、ハエ、トコジラミ、ハチやコウモリなど幅広い害虫や害獣にも対応。

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ナカザワ氏 NPC 総合害虫駆除
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