要注意スズメバチの種類一覧!簡単な見分け方と刺されないための対策

2023.9.12

要注意スズメバチの種類一覧!簡単な見分け方と刺されないための対策

スズメバチにはたくさんの種類があることをご存知でしょうか。日本に生息するスズメバチだけでも、なんと17種類にものぼるのです。

当記事では、スズメバチの種類ごとの特徴を「見た目」「生息地」「巣」「毒性」「攻撃性」「食性」など、まとめて解説しています。「近所で見かけた蜂の種類が知りたい」といった場合にも、ぜひお役立てください。

ただし、スズメバチは基本的にどの種類であっても強い毒すぐれた攻撃力をもっています。もしもご自宅にスズメバチの巣を作られてしまったのであれば、すみやかに駆除することをおすすめします。

スズメバチの駆除は、生活110番にお任せください。

  • 【監修者プロフィール】

    中村 雅雄

    スズメバチ研究者
    日本昆虫学会会員
    日本応用動物昆虫学会会員
    1948年生まれ。幼少期より昆虫に興味を持ち、40年以上に渡りスズメバチを研究。スズメバチとの関わり方や自然環境をテーマとして、講演やテレビ出演、本の出版など幅広く活躍中。
  • 【監修者プロフィール】

    郷 正憲医師

    徳島赤十字病院 麻酔科
    麻酔科標榜医
    日本麻酔科学会麻酔科専門医
    日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格
    日本救急医学会ICLSコースディレクター
    麻酔の中でも術後鎮痛を専門として臨床研究をおこなう。医学教育への取り組みも積極的におこない、心肺蘇生の講習会のインストラクターやディレクターなどをこなす。本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍も出版。

※「6.4.蜂に刺されてしまったら」のみ監修

「スズメバチ」は「スズメバチ亜科」に属する蜂の総称

スズメバチ(学名:Vespinae)とは、ハチ目スズメバチ科の昆虫のうち「スズメバチ亜科」に属する蜂の総称です。このうち日本には、3属17種類のスズメバチが生息しています。

ハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科の解説図

図のように、ハチ目のなかには「ミツバチ科」や「ドロバチ科(※)」のほかに「アリ科」も含まれています。そして、アシナガバチは同じスズメバチ科の仲間なのです。

スズメバチが、科の違うミツバチとは見た目が大きく異なり、同じ科のアシナガバチとは似ているのもうなずけますね。

※ドロバチは、分類方法によっては「スズメバチ科ドロバチ亜科」とされることもある。

ミツバチ・アシナガバチとの見分け方

ミツバチ・アシナガバチ・スズメバチの写真

ミツバチ科に属するミツバチは、小さくずんぐりとした体をしています。スズメバチ科に属するスズメバチとアシナガバチは、どちらも胴体が大きくくびれたシャープな体つきです。スズメバチのほうがより体の大きな種が多く、アシナガバチはその名の通り長いうしろ足をもっています。

スズメバチは3種類の蜂のなかでもとくに毒性や攻撃性が強く危険な蜂です。近所で見かけた蜂がスズメバチだった場合には、ケガをする前にプロの蜂駆除業者に相談することをおすすめします。

日本に生息するスズメバチの仲間は3属17種類

ハチ目スズメバチ科スズメバチ亜科の仲間である「スズメバチ」のうち、日本に生息しているのは以下の3属17種類です。

スズメバチ属
  • オオスズメバチ
  • キイロスズメバチ
  • モンスズメバチ
  • チャイロスズメバチ
  • コガタスズメバチ
  • ヒメスズメバチ
  • ツマグロスズメバチ
  • ツマアカスズメバチ
クロスズメバチ属
  • クロスズメバチ
  • シダクロスズメバチ
  • ツヤクロスズメバチ
  • キオビクロスズメバチ
  • ヤドリスズメバチ
ホオナガスズメバチ属
  • キオビホオナガスズメバチ
  • シロオビホオナガスズメバチ
  • ニッポンホオナガスズメバチ
  • ヤドリホオナガスズメバチ

それぞれの見た目や巣、毒性などの特徴を詳しく解説していきます。

攻撃性の高い「スズメバチ属」の仲間

数多くいる蜂類のなかでももっとも危険度が高く、人への被害が多いのは「スズメバチ属」の仲間です。

日本に生息するスズメバチ属のうち、広い範囲に分布している6種を危険度が高い順番に紹介していきます。また、一部地域のみに生息する2種についてもあわせて解説します。

危険度1位:オオスズメバチ

名前の通り体が大きく、毒性・攻撃性ともに非常に強いオオスズメバチは、世界最強の野生生物ともいわれています。日本の全域に広く分布しており、死亡事故にもつながる大変危険度の高いスズメバチです。

写真 オオスズメバチ
原産地 中国(4亜種生息)
日本での生息地
  • 北海道・本州・四国・九州と周辺の島の平地から低山地に生息。
  • 南限は屋久島・種子島。
体長 女王蜂 40~45mm程度。50mmに達する個体もいる。
働き蜂 27~40mm程度
オス蜂 35~40mm程度
  • 頭部はオレンジがかった黄色。
  • 胸部は黒色。
  • 腹部はオレンジがかった黄色と黒色のしま模様。
巣の特徴
  • ほとんどが地中に作られる。ほかには木の根元の洞など地面周りの閉鎖空間に営巣し、ほとんどは目線より高い場所には作らない。
  • 外被は薄く、底の部分はむき出しで蜂の出入り口になっている。
  • 最盛期の巣は4~10層、3,000~6,000房と巨大。
  • 巣の拡張に際して地面を掘ったときに出た土が巣の入り口付近に捨てられている。
毒性
  • オオスズメバチの毒は非常に強く量も多いため、蜂類のなかでもっとも強力である。
攻撃性
  • 非常に攻撃的で凶暴。
  • 縄張り意識が強い。
  • 巣の近くを通っただけで羽音を立ててカチカチと威嚇し攻撃をされることがある。
  • 大きな顎で噛みつき毒針を深く差し込む。
  • 巣が直接見えないので気が付いた時には攻撃態勢に入っていることが多い。
幼虫のエサ
  • オオスズメバチはすばしこい昆虫を捕獲するのが苦手とされており、動きの鈍いセミ・コガネムシ・カマキリなどの大型昆虫やチョウやガの幼虫、クモを狩る。
  • 秋口にこれらの昆虫などが少なくなると、ほかのスズメバチやミツバチの巣を襲う。
  • 狩りは単独でもおこなうが、集団でもおこなう。

オオスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

危険度2位:キイロスズメバチ

スズメバチ属のなかでは体が小さく、保有する毒液の量はオオスズメバチに比べると少ないです。しかし同じ量で比べたとき、キイロスズメバチの毒の強さはオオスズメバチをも上回ります。また、都会の環境への順応性も高く、都市部やその近郊にも多く巣を作るため、人への被害がもっとも多いスズメバチです。

写真 キイロスズメバチ
原産地 日本・中国東北部・朝鮮半島
日本での生息地
  • 北海道・本州・四国・九州・佐渡島・対馬・屋久島の平地から低山地に生息。
  • 北海道が原産地の種は「ケブカスズメバチ」と呼ばれる。
  • 適応能力が高く、都市部に多発している。
体長 女王蜂 25~28mm程度
働き蜂 17~24mm程度
オス蜂 24mm前後
  • 濃い黄色と茶色のしま模様。
  • 遠目には濃い黄色一色に見える。
巣の特徴
  • 樹木の洞や民家の屋根裏・床下、軒下や樹木枝などに営巣は広範囲である。
  • 手狭になると開放空間に移る傾向があり、橋の下・民家の軒下・排水溝などさまざまな場所に巣を作る。
  • スズメバチのなかで最大級の球状の巣になる。
毒性
  • オオスズメバチに匹敵するほどの毒で、毒の強さだけでいえばオオスズメバチを上回ることもある。
攻撃性
  • 気性が荒く、強い攻撃性としつこさをもつ。
  • 巣の近くを通っただけで攻撃されることもある。
幼虫のエサ
  • ハエやアブを好む。ほかにセミ・トンボ・クモ・ミツバチ・アシナガバチなども捕獲する。死んだ魚やミミズ・カエルなどの昆虫以外のものもとる。
  • 狩りは単独でおこなう。

キイロスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

危険度3位:モンスズメバチ

多くのスズメバチは暗闇での視力がないため、夜間は飛び回ることができません。しかし、モンスズメバチは日没後もしばらくは活動できるという特徴があります。

強い毒性や攻撃性をもつ種類であるため遭遇したときの危険度は高いですが、エサとなるセミの減少によってモンスズメバチの数も減っています。また、見つかりにくい場所に巣を作る習性もあり、モンスズメバチによる被害件数は減少傾向にあるようです。

写真 モンスズメバチ
原産地 ヨーロッパ・中国には数亜種生息
日本での生息地
  • 北海道・本州・四国・九州の平野部から低山地に生息。
体長 女王蜂 28~30mm程度
働き蜂 21~28mm程度
オス蜂 21~28mm程度
  • 胸部は黒色で、黄色または赤褐色の斑紋がある。
  • 腹部は黄色に黒い帯が波打った模様。
  • 模様の個体差が大きい。
巣の特徴
  • 樹木の洞や民家の天井裏など、人目につきにくい閉鎖空間に営巣。
  • 外被は薄く、下側が大きく開いている。
  • 手狭になると引越しをするが、引越し先も開放空間は選ばない。
毒性
  • オオスズメバチ・キイロスズメバチほどではないが強い。
攻撃性
  • 攻撃性はやや高め。
  • 運動能力が高い。
幼虫のエサ
  • セミを好む。
  • セミが少ない時期にはトンボやバッタ、クモ、チョウ、ミツバチを襲うこともある。

モンスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

危険度4位:チャイロスズメバチ

チャイロスズメバチは、キイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取ることで繁殖する「社会寄生性」の昆虫です。

チャイロスズメバチの女王は、働き蜂が羽化するころのキイロスズメバチやモンスズメバチの巣に単独で侵入し、相手の女王蜂を殺して巣を乗っ取ります。乗っ取った巣に自分の卵を産みつけ、その世話をキイロスズメバチやモンスズメバチの働き蜂にさせるのです。

産みつけたチャイロスズメバチが羽化し、もといた働き蜂が寿命で死ぬことで、最終的には巣は完全にチャイロスズメバチのものとなります。乗っ取るためには女王蜂自身が単身で乗り込んで戦わなければならないため、ほかのスズメバチに比べてチャイロスズメバチの女王蜂の外骨格は硬いです。

社会寄生性という珍しい性質のため、発見例の少ない希少種です。

写真 チャイロスズメバチ
日本での生息地
  • 北海道・本州 中部地方以北に生息。
  • 広島が分布の最西端。
  • 和歌山県・島根県・山口県・四国・九州では発見された記録はない。
体長 女王蜂 29~30mm程度
働き蜂 17~24mm程度
オス蜂 20~27mm程度
  • 頭胸部は赤褐色。
  • しま模様がなく、体全体が光沢のある黒褐色。
巣の特徴
  • キイロスズメバチやモンスズメバチの巣を乗っ取る。
  • 最盛期の巣は4~6層、600~3,500房になるものもある。
毒性
  • 毒の濃度が高く、刺されたときの痛みはスズメバチのなかでも強い。
攻撃性
  • 威嚇性・攻撃性がかなり強い。
  • 地上付近を群をなして飛び回る独特の威嚇行動をとる。
幼虫のエサ
  • バッタ類や各種昆虫・クモを狩る。

チャイロスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

危険度5位:コガタスズメバチ

キイロスズメバチと並んで都市環境に適応し、住宅街での発見数が多いのがコガタスズメバチです。「コガタ」とつきますが、実際はスズメバチのなかでは大きいほうで、配色の似ているオオスズメバチと比較してコガタスズメバチという名前が付けられたといわれています。

写真 コガタスズメバチ
原産地 インドネシア
日本での生息地
  • 北海道~九州及び周辺諸島、奄美諸島と、沖縄に2亜種が分布。
  • 都会の環境にも適応しやすい
体長 女王蜂 25~30mm程度
働き蜂 22~28mm程度
オス蜂 23~27mm程度
  • 腹部が黒と黄色のしま模様。
  • 腹部先端は黄色。
  • オオスズメバチと同じ斑紋パターンだが、基本的にははるかに小型。
  • 個体差があるため、大きさだけでは完璧に見分けられないこともある。
巣の特徴
  • 庭木(金木犀・ハナミズキ・ツバキなどを好む)や生け垣の茂み・屋根のひさし部分などに営巣。
  • 開放的な場所にも作るが、枝や葉で覆われた空間に作られており、剪定の際に刺されることがある。
  • 働き蜂の個体数も多くない。
  • 営巣初期は徳利(とっくり)をひっくり返したような形の巣。
  • 下方にのびた口の部分は、働き蜂が育つと取り払われ、球状の巣になる。
毒性
  • 強い。
攻撃性
  • あまり攻撃的ではないが、防衛力自体は高く、オオスズメバチの攻撃でさえはねのけることもある。
  • 巣を刺激されると5メートルほどは追いかける。
幼虫のエサ
  • ハエ、アブ、小型のハチ
  • アブラムシ・カイガラムシ・キジラミなどの昆虫の出す甘露に集まることもある。

コガタスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

危険度6位:ヒメスズメバチ

ヒメスズメバチは、オオスズメバチのつぎに体の大きなスズメバチですが、体格とは裏腹に性格はおとなしく、日本に生息するスズメバチ属のなかでは一番危険度が低いといえます。

写真 ヒメスズメバチ
※アシナガバチの巣を襲うヒメスズメバチ
原産地 中国
日本での生息地
  • 本州・四国・九州とその周辺の島(佐渡島・屋久島など)の平野部から中山帯に生息。
体長 女王蜂 24~37mm程度
働き蜂 24~37mm程度
オス蜂 24~37mm程度
  • 全体に茶色っぽく、腹部の先端が黒いので他種と区別しやすい。
巣の特徴
  • 直接風雨にさらされない樹洞、人家隙間など閉鎖空間に営巣する。
  • 働き蜂の数は最大でも数十匹ほど。
毒性
  • 比較的弱い。
  • ただし体が大きく毒針も長いため、刺されると被害は大きい。
攻撃性
  • スズメバチのなかではもっともおとなしい性格だが、敵に敏感で威嚇はする。
  • 巣を刺激すると頭上をカチカチと威嚇音を出し恐怖である。
幼虫のエサ
  • アシナガバチの幼虫やサナギを狩る。
  • ほかの昆虫を狩ることはない。

ヒメスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

【沖縄以南にのみ生息】ツマグロスズメバチ

ツマグロスズメバチは本州には生息していないスズメバチですが、攻撃性は強いため、沖縄にお住まいの方や、夏場に旅行に行く際には注意が必要です。

原産地 東南アジア・石垣島・西表島・海南島など中国南部
日本での生息地
  • 本州には生息せず、宮古島以南の琉球列島に分布。
  • 周辺の小島や与那国島などの小さな島にも生息。
体長 女王蜂 25~28mm程度
働き蜂 20~22mm程度
オス蜂 20~22mm程度
  • 腹部が黒と黄色の2色にくっきりわかれている。
巣の特徴
  • 生息地が台風の多い地域なので、巣は高所には作らず草むらや低い木の枝など、地面に近いところに作る傾向がある。
  • 営巣初期、女王蜂が作る巣は徳利をひっくり返したような形をしている。
  • その後の働き蜂の活動により、球状または楕円形に拡張される。
毒性
  • 強い。
攻撃性
  • 好戦的な性格をしている。
幼虫のエサ
  • ハエやアブ・バッタなどの多種の昆虫を狩る。
  • カエルやトカゲの死体に集まることもある。

ツマグロスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

【外来種】ツマアカスズメバチ

日本に生息するスズメバチ属のスズメバチは7種とされてきましたが、近年「ツマアカスズメバチ」の移入が確認されました。

2012年に初めて長崎県対馬市でツマアカスズメバチの個体が確認され、2013年には同じく対馬市でツマアカスズメバチの巣が発見されたことにより、日本国内でも定着し繁殖していることが確認されたのです。

2015年には福岡県北九州市へのツマアカスズメバチの侵入が確認され、その後も宮崎県日南市、大分県大分市と生息地域を拡大しています。ツマアカスズメバチに捕食される昆虫が減少することによる生態系への影響、在来ミツバチや養蜂への影響が懸念されており、「特定外来生物」にも指定されました。

特定外来生物は、飼育や保管・運搬・譲渡・輸入・野外への放出などが禁止されており、違反すると3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。

原産地 インドネシア・中国(4系統以上生息)
日本での生息地
  • 対馬・北九州・宮崎・大分で生息を確認。
  • 繁殖力や適応能力が高いため、今後も生息地が拡大するおそれがある。
体長 女王蜂 25~30mm程度
働き蜂 17~25mm程度
オス蜂 20~28mm程度
  • 全体的に黒っぽい。
  • 腹部の先端がオレンジ色。
巣の特徴
  • 当初低地の目立たない場所に巣作りし、樹木などの高い位置に営巣することが多い。
  • 在来種のスズメバチより大きな巣を作る。
  • 出入り口は上部に1か所のみで、縦長の涙型の形状が特徴的。
毒性
  • 強い。
攻撃性
  • 集団や巣ごとに攻撃性が異なるといわれている。
  • 対馬で確認された個体は比較的おとなしいが、海外では刺傷による死者も出ている。
幼虫のエサ
  • おもに昆虫類・ミツバチを狩る。

ツマアカスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

食用にもなる「クロスズメバチ属」の仲間

クロスズメバチ属のうち日本に生息しているのは、「クロスズメバチ」「シダクロスズメバチ」「ツヤクロスズメバチ」「キオビクロスズメバチ」「ヤドリスズメバチ」の5種です。どの種も黒っぽく、白または黄色のしま模様があるのが特徴です。

ヤドリスズメバチは、チャイロスズメバチと同じくほかのスズメバチの巣を乗っ取るスズメバチですが、自分では働き蜂を産まないですべて寄生先の蜂に頼って生活をします。

ここでは、クロスズメバチ属のなかでもっともポピュラーな「クロスズメバチ」について詳しくご紹介していきます。

クロスズメバチ

クロスズメバチの幼虫は、岐阜県や長野県の山間部では「ヘボ」「スガレ」などと呼ばれて高級珍味として親しまれています。成虫も一緒に調理して食べることもあり、かつては貴重なたんぱく源として一般家庭でも広く食されてきました。

写真 クロスズメバチ
日本での生息地
  • 北海道・本州・四国・九州・佐渡島・奄美大島の平地や低山地、自然が豊かな場所に生息。
  • 広い地域に分布しているが、森林や畑の土中に営巣するため、あまり姿を見かけることはない。
体長 女王蜂 13~15mm程度
働き蜂 10~12mm程度
オス蜂 12~14mm程度
  • 真っ黒で、白い線や模様がついている。
巣の特徴
  • 土の中、地表から40~50cmあたりに巣を作る。
  • 稀に樹木の洞や民家の軒下に営巣することもある。
  • 球状で下部が若干膨らんだ形をしている。
  • 外被は厚く巣盤全体を覆い、出入り口は横に1か所だけ。
  • 営巣初期は45~46房で、働き蜂が羽化すると5~7層・3,000~6,000房にまで拡張する。
  • 関東以南のほうが大きくなる傾向があり、8~12層・8,000~12,000房ほどにもなる。
  • 巣の大きさは日本最大規模で、岐阜県恵那郡では「ヘボの巣コンテスト」というクロスズメバチ巣を育てて大きさを競う大会も開催されている。
毒性
  • 比較的弱い。
攻撃性
  • 基本的には攻撃性は低い。
  • 威嚇もあまりしない。
幼虫のエサ
  • ハエ・アブ・カメムシ・チョウ・ガなどの小型の昆虫を狩る。
  • クモ、カエル・ヘビ・魚などの死骸もかじりとって巣に持ち帰る。

クロスズメバチの生態の詳細はこちらをご覧ください。

和紙のような巣を作る「ホオナガスズメバチ属」の仲間

ホオナガスズメバチ属のうち日本に生息しているのは、「キオビホオナガスズメバチ」「シロオビホオナガスズメバチ」「ニッポンホオナガスズメバチ」「ヤドリホオナガスズメバチ」の4種です。どの種も小型で黒っぽく、腹部に白または黄色のしま模様があるのが特徴です。

ヤドリホオナガスズメバチは、チャイロスズメバチやヤドリスズメバチと同じく、ほかのスズメバチに寄生して生活します。

キオビホオナガスズメバチ

ホオナガスズメバチ属のなかで、もっとも攻撃性の強い「キオビホオナガスズメバチ」の特徴をご紹介します。

日本での生息地
  • 北海道・本州(とくに中部以北)
体長 女王蜂 19~22mm程度
働き蜂 14~16mm程度
オス蜂 15~20mm程度
  • 黒色と黄色のしま模様。
  • 女王蜂・働き蜂・オス蜂で斑紋の形が大きく異なる。
巣の特徴
  • 樹木の枝や茂み、軒下などの開放空間に営巣する。
  • 外被は和紙を何層にも重ねたような形状をしている。
攻撃性
  • 攻撃性や威嚇性はホオナガスズメバチ属のなかでもっとも強い。
幼虫のエサ
  • ハエ・アブ・ガなどの昆虫やクモを狩る。

全種類共通のスズメバチの特徴

多くのスズメバチが共通してもっている特徴をまとめてご紹介します。

スズメバチの活動時期

種類によって多少の違いはありますが、多くのスズメバチは以下のようなサイクルで活動しています。


(4~5月頃)
冬眠から目覚めた女王蜂が、単独で巣作りを始める。

(6~9月頃)
働き蜂が誕生し、巣の規模がどんどん大きくなっていく。とくに7月上旬以降のスズメバチは動きが活発になり、巣を守るために攻撃性や威嚇性が増す。

(10~11月頃)
オス蜂と新女王蜂が誕生し、働き蜂の数は徐々に減っていく。交尾を終えるとオス蜂は死に、新女王蜂は巣を離れて越冬の準備に入る。

(12~3月頃)
新女王のみが土や枯れ木の中で冬眠する※オオスズメバチとキイロスズメバチは12月でもまだ働き蜂が活動している場合があります。

女王蜂・働き蜂・オス蜂

どのスズメバチも「女王蜂」「働き蜂」「オス蜂」という階層の違う蜂で構成されています。他種の巣を乗っ取る特殊な蜂を除き、ほとんどのスズメバチは階級ごとに決められた役割によってひとつの巣を守る「社会性昆虫」です。

スズメバチの社会性はほかの昆虫と比べてもとても発達しており、1匹の女王蜂を中心に数百~数千もの蜂を有する社会を形成します。

春先の女王蜂は、巣作り・産卵・幼虫の世話と、すべての仕事を単独でおこないます。そして、初夏に働き蜂が羽化しはじめると、巣作りやエサ集めなどは働き蜂に任せて、産卵だけに集中するようになるのです。

働き蜂はすべて生殖機能をもたないメスの蜂です。一方、スズメバチのオス蜂は生殖のためだけに存在し、エサ集めや巣の維持にかかわる仕事はいっさいおこないません。

スズメバチの巣の特徴

スズメバチの巣は、何層にも重なった「巣盤」とそれを覆う外被によって作られています。巣盤には「育房」または「巣房」と呼ばれる六角形の小さな部屋が隙間なく並んでおり、ここで幼虫が育てられます。

「スズメバチの巣」と聞くと、特徴的なマーブル模様を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。スズメバチの巣は、樹木の皮などをかじり取り、唾液と混ぜて固めたものを貼り合わせて作られています。たくさんの働き蜂がそれぞれ別の場所から材料をもち帰ってくるため、色の違いが出て模様となるのです。

幼虫のエサ・成虫のエサ

幼虫のエサは、虫や動物などのたんぱく質です。成虫が狩りをおこない、捕まえた獲物を噛み砕いて肉団子にして与えます。

成虫自身は虫や動物を食べることはなく、樹液や花の蜜、熟した果実などの炭水化物をおもなエサにしています。成虫の胴体は極端にくびれているため、固形物を摂取することができないのです。その代わりに、幼虫が唾液腺から分泌する栄養豊富な液体を舐めることでたんぱく質を摂取しています。

スズメバチの天敵

スズメバチにも天敵はいますが、たとえばシマウマとライオンのように「一方的に捕食される」という関係ではないことがほとんどです。

オオカマキリオニヤンマムシヒキアブなどの肉食昆虫は、スズメバチと互いに捕食し合います。節足動物であるクモも、スズメバチの幼虫のエサとなることもあれば、逆にクモの巣でスズメバチを捕らえてしまうこともあります。

クマやハチクマなどの動物は固い毛でスズメバチの毒針を防げますが、それでも毒性や攻撃力が強いオオスズメバチとは闘うことを避けるともいわれているのです。

スズメバチにとって一方的な天敵といえば、寄生虫でしょう。スズメバチネジレバネスズメバチタマセンチュウは、スズメバチの体内に住みついて生殖機能や活動能力を奪います。これらの生き物に寄生されたスズメバチの巣は、社会構造を維持することができずに崩壊してしまいます。

スズメバチに遭遇したときの対処方法

スズメバチに遭遇したときは、どの種類であっても注意が必要です。ケース別に対処法を確認していきましょう。

屋内に入ってきた蜂への対処

「家の中にスズメバチが1匹だけ迷い込んできた」という場合には、刺激せずに外へ誘導することが得策です。

窓を大きく開け、部屋の明かりを消して出て行ってくれるのを静かに待ちましょう。スズメバチもほかの多くの昆虫と同様に、光に向かう性質があるのです。

早く退治してしまいたいからといって、屋内で殺虫剤を散布することはおすすめできません。一撃で仕留められなかった場合、スズメバチの激しい反撃にあってしまうおそれがあります。

スズメバチの駆除方法や注意点はこちらをご覧ください。

もしもスズメバチを追い出すことが困難な場合には、プロの蜂駆除業者に相談してみましょう。生活110番なら1匹からでもスズメバチ駆除に対応できる業者をご紹介します。

蜂の巣を見つけたらプロに相談しよう

ご自宅にスズメバチの巣を作られてしまったら、できるだけ早く蜂の巣駆除の専門業者に相談してください。ミツバチやアシナガバチの巣と比べると、スズメバチの巣の危険度は段違いです。危険のないよう離れたところからスマホなどで写真を撮り種類を判別してもらうことも大切です。

駆除は専用の防護服を着用し、細心の注意を払っておこなわなければなりません。また、巣の規模が大きくなればなるほど危険は増し、駆除の難易度は上がってしまいます。

スズメバチの巣を見つけたら放置せず、生活110番の24時間365日対応の無料相談窓口までお問い合わせください。

蜂に刺されないために注意すること

山や森はもちろん、都市近郊の公園なども含め、緑の多い場所へ出掛けるときにはスズメバチに遭遇してしまうかもしれません。スズメバチに刺されないために、とくに以下の2点に注意してください。

  • 黒や濃い色のものを身に着けない
  • 匂いの強いものを身に着けない

ひとつ目の注意点は「色」です。スズメバチは白と黒のコントラストでものを見ています。人間のようにカラーではなく、世界がモノクロに見えているのです。そのため、よりコントラストが強い「黒色」は認識されやすく、攻撃対象となりやすいといわれています。

緑の多い場所へ出掛けるときには、濃い色の服装は避け、白っぽい帽子などで髪の毛を隠すようにしましょう。

ふたつ目の注意点は「匂い」です。スズメバチはフェロモンを使って会話をするため、匂いにとても敏感です。香水や柔軟剤などの甘い匂いは蜂を引き寄せてしまうでしょう。しかも、スズメバチが分泌する警報フェロモン(敵が来たことを知らせて攻撃を誘発するフェロモン)と似た成分が含まれていることもあるのです。

スズメバチとの遭遇が心配されるシーンでは、香水はもちろん、匂いの強い柔軟剤やシャンプー、制汗剤の使用も控えましょう。

蜂に刺されてしまったら

どれだけ気をつけていても、スズメバチに刺されてしまうことがあるかもしれません。蜂に刺されたときには、まずは静かに蜂の巣や蜂から離れ、安全を確保したうえで応急処置をしましょう。

スズメバチに刺されたときの応急処置
  1. 流水で患部を洗いながら手で毒液をしぼり出す
  2. 患部に炎症を抑える虫刺され薬を塗る
  3. アレルギーが疑われる場合はすみやかに病院へ行く

スズメバチの毒液は非常に強い毒性をもっている一方で、水に溶けやすいという性質ももっています。毒液をしぼり出しながらよく洗うことで、体内に取り込まれる毒の量を減らすことができるでしょう。抗ヒスタミン軟膏(なんこう)があれば、患部に塗ってください。

スズメバチに刺されると患部が腫れるだけでなく、毒の成分によって「アナフィラキシー」という全身性のアレルギー反応が引き起こされることがあります。ひどい腫れやじんましん、めまい、吐き気、息苦しさなどの症状があらわれたらすぐに医療機関にかかってください。

<参照>東京都福祉保健局

まとめ

日本に生息する3属17種類のスズメバチについてご紹介しました。種類ごとに毒性や攻撃性に違いがありますが、飛び回る蜂を一瞬で見分けることは簡単ではありません。だからといって観察しようと巣に近づけば、警戒した蜂に攻撃されてしまうでしょう。

とくに、住宅街に巣を作るスズメバチは危険度の高い「スズメバチ属」の仲間であることが多いため注意が必要です。

もしもスズメバチに遭遇したら、刺激しないように静かに離れましょう。ご自宅に巣を作られてしまった場合には、すぐに生活110番にご相談ください。蜂駆除のプロが蜂の種類を見分けて適切に対処いたします。

(この記事は2020年7月14日に加筆・修正しています)

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