アカカミアリとヒアリの違いは?日本にやってきた危険生物の対処法

2021.4.30

アカカミアリとヒアリの違いは?日本にやってきた危険生物の対処法

2019年10月現在、海外から日本にヒアリが侵入・定着しようとしており、港湾部で食い止めるべく調査・駆除が進められています。しかし船や飛行機に乗ってやってきた外来生物はヒアリだけではありません。荷物や物資と一緒にさまざまな生き物が一緒に運ばれ、日本に定着しつつあります。

アリの仲間ではヒアリを含め4種類が「特定外来生物」に指定されており、定着しないよう警戒が続けられています。そのひとつが「アカカミアリ」。アカカミアリはヒアリほどの危険性はないとされているものの、ヒアリにとても似た性質を持つアリです。もしも近くで見かけたら駆除する必要があり、見分け方を知っておく必要があるでしょう。

今回はアカカミアリについて、ヒアリとの違いを含め詳しく解説していきます。

目次

アリ駆除のおすすめサービス

「アカカミアリ」とはどんなアリ?

アカカミアリはもともと中央アメリカ付近に生息する赤褐色をしたアリです。船や飛行機など人間の輸送活動とともに世界中へ広がり、熱帯地域を中心に分布しています。

日本ではかつてアメリカ軍の物資輸送にともなって侵入してきたと考えられており、沖縄本島や伊江島のアメリカ軍基地周辺、小笠原諸島・硫黄島などで定着しています。それに加え近年では海外からのコンテナ貨物などにアカカミアリが紛れ込み、発見される例も増えてきました。

アカカミアリの特徴

アカカミアリの特徴として、働きアリの大きさが3~8mmと幅があることが挙げられます。とくに大型の働きアリはほかの種が持つことのある「兵アリ」のように大きくアゴが発達することもあるのです。

原産地ではおもに開けた草地などに生息します。日本在来の種と同様、土のなかに巣を作ることが特徴といえるでしょう。

腹部に毒針を持つ

アカカミアリは腹部に毒針を持ち、人を刺すことも少なくありません。刺されると激しい痛みやアレルギー症状を引き起こすため、アメリカではヒアリ・アカカミアリを区別せず「Fire Ant」と呼んでいます。

雑食性・ほかのアリを駆逐するおそれ

アカカミアリは植物の甘露などのほか、幼虫による消化を通じてさまざまなものを捕食しエサとする雑食性です。

また攻撃性が高く、ほかのアリを駆逐してしまうおそれが指摘されています。たとえば硫黄島では環境の厳しさも影響し、アカカミアリがアリのほとんどを占めているのです。万が一日本本土に侵入した場合、状況によっては全国へと定着してほかのアリの生存を妨げるおそれがあります。

『アカカミアリ』とはどんなアリ?
(画像はヒアリ)

アカカミアリが発見されている市区町村(2019年10月現在)

アカカミアリは定着が確認されている沖縄本島・伊江島・硫黄島のほか、以下の市区町村でも発見されています。

    • 兵庫県神戸市(2017年5月・神戸港コンテナヤード内)
    • 大阪府大阪市(2017年6月・香港から大阪南港へ運ばれたコンテナ)
    • 大阪府内(2017年6月・フィリピンから大阪南港へ運ばれたコンテナ。岸和田市で荷出し後、南港を経由し枚方市でアリ付着を確認)
    • 愛知県海部郡飛島村(2017年7月・フィリピンから名古屋港へ運ばれたコンテナ。飛島ふ頭内)
    • 東京都江東区(2017年7月・青海ふ頭コンテナヤード内)
    • 茨城県常陸太田市(2017年7月・台湾から東京港青海ふ頭へ運ばれたコンテナ)
    • 愛媛県四国中央市(2017年7月・タイなどから三島川之江港(同市)へ運ばれたコンテナ)
    • 静岡県静岡市(2017年7月・タイから清水港へ運ばれたコンテナ)
    • 岐阜県岐阜市(2017年8月・フィリピンから名古屋港へ運ばれたコンテナ)
    • 山口県防府市(2017年8月・ベトナムなどから三田尻中関港(同市)へ運ばれたコンテナおよびコンテナヤード内)
    • 静岡県静岡市(2017年8月・清水港新興津コンテナターミナル内)
    • 静岡県袋井市(2017年9月・タイから清水港新興津ふ頭へ運ばれたコンテナ)
    • 静岡県榛原郡吉田町(2017年9月・フィリピンから清水港へ運ばれたコンテナ)
    • 福岡県京都郡苅田町(2017年9月・フィリピンから北九州港へ運ばれたコンテナ)
    • 愛知県海部郡飛島村(2017年9月・飛島ふ頭コンテナターミナル内)
    • 神奈川県川崎市(2017年10月・シンガポールから横浜港へ運ばれたコンテナ)
    • 広島県広島市(2017年11月・ベトナムから関西国際空港へ運ばれた航空貨物の梱包内)
    • 長野県長野市(2018年4月・流入経路不明。その後の周辺調査で確認されず)
    • 茨城県那珂郡東海村(2018年5月・インドネシアから成田国際空港へ運ばれた航空貨物の梱包内)
    • 愛媛県新居浜市(2018年5月・台湾から神戸港を経由し新居浜港へ運ばれたコンテナ)
    • 千葉県柏市(2018年6月・台湾から東京港青海ふ頭へ運ばれたコンテナ)
    • 群馬県前橋市(2018年6~7月・スリランカなどから東京港青海ふ頭に運ばれたコンテナ)
    • 静岡県浜松市(2018年6~7月・フィリピンから清水港袖師ふ頭へ運ばれたコンテナ)
    • 千葉県成田市(2018年7月・インドから成田国際空港へ運ばれた航空貨物)
    • 兵庫県明石市(2018年7~8月・タイから神戸港へコンテナ輸送された荷物の梱包内)
    • 岡山県倉敷市(2018年9月・水島港コンテナヤード内)
    • 神奈川県横浜市(2018年10月・ガーナから横浜港へ運ばれたコンテナ。1,100個体以上の発見)
    • 静岡県磐田市(2018年11月・インドネシアから清水港へ運ばれたコンテナの荷物内)
    • 栃木県宇都宮市(2019年4月・流入経路不明)
    • 福岡県福岡市(2019年6月・ベトナムから博多港へ運ばれたコンテナ)
    • 富山県射水市(2019年9月・伏木富山港(富山新港国際物流ターミナル)コンテナヤード内)
    • 東京都町田市(2019年9月・マレーシアから発送された荷物)
    • 岐阜県海津市(2019年10月・バングラデッシュから名古屋港へ運ばれたコンテナ)
    • 東京都品川区(2019年10月・東京港品川ふ頭コンテナヤード内)
    • 福岡県福岡市(2020年1月・フィリピンから上海港経由で博多港へ運ばれたコンテナ)
アカカミアリ発見状況(2017年:水色・2018年:緑色・2019年:赤色)

(※環境省ホームページに掲載された報道発表を収集・整理)

関東より西の各地で発見されているように見えますが、そのほとんどはコンテナなど、港や空港から運ばれた荷物から発見された例です。コンテナ以外から発見されている事例も制限された港湾区域内であり、ヒアリと同じく、住宅街など私たちの身近に定着している状況ではないと考えられています。

ただし現在はいなくても将来的に定着してしまうことは充分に考えられるため、アリの種類を見分けられるようになっておきましょう。

アカカミアリの発見例

アカカミアリとヒアリの判別は困難!

ともに外来特定生物として警戒されているアカカミアリとヒアリ、じつは見た目がよく似ていることから見分けるのが難しい種類として知られています。

同じトフシアリ属の仲間</h3?
アカカミアリとヒアリはどちらも分類上「アリ科フタフシアリ亜科トフシアリ属」に属します。そのため見た目が非常によく似ており、その場で判断するのは難しいとされています。環境省の調査でも「ヒアリの疑いがあり調べたところ、アカカミアリだと確認された例」が少なくないのです。

なお日本在来種のトフシアリやリュウキュウトフシアリは非常に小さく、ほかのアリの巣に侵入して食料を得るという生態を持っています。そのため地面の中から顔を出すことはまれで、見かける機会もほとんどないでしょう。

ヒアリよりも持つ毒性は小さい

ヒアリ・アカカミアリともアルカロイド毒を持っているといわれており、腹部に持つ毒針に刺されると激しい痛みやアレルギー症状を引き起こします。ただしヒアリよりは毒性は小さく、激しいアレルギー症状であるアナフィラキシーショックを起こした例はあるものの、死亡例は確認されていません。

ただし毒性こそ小さいとはいえ、生命の危険をもたらすおそれがあることは確かです。もしも刺された場合は病院へ行って適切な処置を受けるなど、万全な対処をおこなうことが大切になります。

違いは細かな部分に限られる

ヒアリとアカカミアリの違いとして挙げられるのは、次の4つです。

 

【大型働きアリの頭の形】

アカカミアリは大型になるとあごの部分が発達し大きくなるという特徴をもっています。また頭が四角に近づき、左右を二分割するように溝がはいるようになります。

一方、ヒアリは大きい個体・小さい個体ともその姿をほとんど変えません。この点が私たちでも見分けやすいポイントになるでしょう。

 

【上あごの突起の数】

ヒアリは上あご部分に3つ小さな突起があるのに対し、アカカミアリは2つで真ん中の突起がありません。

 

【前足の付け根に突起があるか】

アカカミアリには前足の付け根部分に小さな突起がありますが、ヒアリにはありません。

ただしこれらの特徴は高倍率の拡大鏡が前提で、かつ知識を持った専門家が見て判断できるような基準です。

 

【アリ塚を巣にするか】

アカカミアリはアリ塚を巣にせず、巣作りのために掘り出した土を積み上げる程度です。一方ヒアリはアリ塚の内部に巣を作るため、丈夫で大型になるという特徴を持っています。

ただし大型のアリ塚を作るのは定着から数年たち、十分に働きアリの数を増やしてからになると考えられます。現段階ではコンクリートのすき間など、アリ塚以外の場所に巣を作っていることが多いのです。

またヒアリのアリ塚を見つけても壊すことは厳禁です。アリ塚の周囲の地下には無数の通路があるため、女王アリが逃げ出しかえって広範囲に拡散してしまうおそれがあります。

ここまでヒアリ・アカカミアリの細かな違いを解説しましたが、これらのアリはどちらも特定外来生物に指定されています。定着防止のための監視もおこなわれているため、発見したら行政に届け出をおこない、最終的な同定は専門家にまかせるのが賢明です。

ヒアリやアカカミアリをほかのアリと区別するには

一方、ヒアリやアカカミアリをほかのアリと区別するのは意外と難しくありません。次のような特徴をすべて満たせば、アカカミアリやヒアリのおそれが高いといえます。

光沢のある赤褐色、ただし腹部は暗めの色

シロアリと対比させて「クロアリ」と呼ぶことからも分かるように、アリは黒い見た目をした種類が豊富です。しかしヒアリ・アカカミアリは赤褐色の見た目をしており、通常のアリと区別しやすいのが特徴といえるでしょう。またザラザラとした表皮の見た目を持ったアリが多いなかで、光沢を持っていることも大きな特徴といえます。一方、腹部に関してはやや暗めの色を持ちます。

ただしヒメアリやアズマオオズアリといった、赤褐色を示す在来種のアリも多いです。明るい黄褐色をしたキイロシリアゲアリなどもヒアリと間違われることがあるため注意が必要でしょう。

働きアリの大きさがさまざま

巣の大半を占める「働きアリ(ワーカー)」はエサの採集から幼虫の世話、巣の防衛などさまざまな役割を担います。そのため同じ見た目・大きさをしている種類が多く、見た目ではわかりにくいことがほとんどです。

一方防衛に特化した大型の個体が現れる種類もあり、見た目が大きく異なることから「兵アリ」と呼ばれて区別することも多いです。たとえばオオズアリは一定の割合で頭部やアゴが大きく発達した個体が現れ、名前の由来にもなっています。

一方、ヒアリやアカカミアリはこの中間に位置します。働きアリの列には2mmから6mm前後のさまざまな大きさの個体が混ざり、見た目もよく似ているのが特徴です。

なお、大きさがばらばらでも同じ「成虫」のため、小さい個体から大きな個体へと成長しているわけではありません。またアカカミアリの大型働きアリは前の章で触れたとおり、頭部がやや発達する傾向にあります。

胸部と腹部の間に2つのふしがある

ヒアリ・アカカミアリともアリの中でも「フタフシアリ亜科」という種類に分類されます。アリは足の生えた「胸部」と針などを持つ「腹部」の間が細くくびれている種が多いですが、この間の「腹柄」と呼ばれる部分が2つのこぶの連続になっているのが「フタフシアリ科」の大きな特徴です。

背中にトゲや突起がない

アリのなかには背中部分にトゲや突起を持ったものが多くみられます。しかしヒアリやアカカミアリにはこの突起がなく、オオズアリやシリアゲアリといった「突起のあるアリ」と区別することができます。

触覚が10つに分かれ、そのうち先端のこん棒状の部分が2つで構成

アリは「あご」と目の間付近から「くの字」状・前向きに触覚が伸びています。そして多くの場合、先端が少し太くこん棒状になっていることが特徴といえるでしょう。

ヒアリ・アカカミアリの場合、触覚は10つのふしに分かれています。そのうちこん棒状の部分は2つのふしで構成されており、ほかのアリと区別するための大きなポイントです。

アカカミアリの対処方法

もしもアカカミアリを見かけたら

ではもしもアカカミアリの疑いがあるアリを見つけた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。

まずは行政に確認・届け出を

2019年10月現在、アカカミアリはコンテナや航空貨物など「海外からの荷物に付着していた場合」がほとんどで、地面から見つかった事例もコンテナヤードなど港湾地域に限られます。そのためまずは本当にアカカミアリか確認するため、行政へ届け出ることをおすすめします。

殺虫剤・熱湯などで処理を

行政がすぐに対応できない場合、少数の働きアリであれば市販の殺虫剤や熱湯などで駆除は可能です。駆除後も直接素手でさわらないようにして小型の容器に入れ、市区町村の環境課などに届けるようにしましょう。

巣の駆除はプロの手を借りることが大切

アリは見た目よりも広い範囲に巣を広げていることも多く、確実な駆除を行わなければ逆に生息範囲を拡大してしまうおそれがあります。

またアリは縄張り意識が強く、ほかのアリが侵入しようとすると敵対することが少なくありません。ベイト剤(毒餌)などを使用して周囲のアリを根絶やしにしてしまうと、アカカミアリやヒアリにとって敵の少ない、定着しやすい環境を作ってしまうおそれも出てきます。万が一アカカミアリ以外の被害に遭っている場合でも、プロの持つ経験と知識で適切に判断してもらうことをおすすめします。

アリ駆除のおすすめサービス

まとめ

アカカミアリはヒアリにとても近い種類で、違いを見分けるのは非常に困難です。しかしアカカミアリも特定外来生物であり、定着防止のために適切な対応が求められています。万が一アカカミアリやヒアリらしきアリを見つけたら、まずは行政やアリ駆除のプロとも相談して、駆除などの対策を取るようにしましょう。

この記事の監修者 ナカザワ氏について

この記事の監修者
ナカザワ氏 NPC 総合害虫駆除
監修ジャンル:害獣 害虫
神奈川県・東京都を中心とした総合害虫駆除サービスを運営。防除作業監督者(防第14721号)の国家資格を有し、アリ、ゴキブリ、ダニ、ハエ、トコジラミ、ハチやコウモリなど幅広い害虫や害獣にも対応。

この記事の監修者 ナカザワ氏について

この記事の監修者
ナカザワ氏 NPC 総合害虫駆除
監修ジャンル:害獣 害虫
神奈川県・東京都を中心とした総合害虫駆除サービスを運営。防除作業監督者(防第14721号)の国家資格を有し、アリ、ゴキブリ、ダニ、ハエ、トコジラミ、ハチやコウモリなど幅広い害虫や害獣にも対応。

アリ駆除はプロに相談

【生活110番】は国内最大級の暮らしの「困った」を解決する業者情報検索サイトです。 140ジャンルを超える生活トラブルを解決するプロたちを掲載しています。

『生活110番』では、
お住いの地域で人気のプロを探せます

生活のお困りごとは、なんでもご相談ください。

アリ駆除 16,500円~
アリ駆除のおすすめ業者を見る

関連記事カテゴリ一覧

アリ駆除の記事アクセスランキング

アリ駆除の最新記事

カテゴリ別記事⼀覧