2019年10月、東京港青海ふ頭でヒアリの巣が相次いで発見されました。そのなかには飛び立つ前の女王アリが多く混ざっており、国内に定着したおそれが高いという報道がされました。
ヒアリといえばその赤い姿が特徴的で、日本にも赤い蟻は多く生息しています。ただ、住宅地で見かける赤い蟻はヒアリ以外である可能性の方が高いといわれています。そのため、もし家の近くで赤い蟻を見かけてもヒアリだと思い込まず、しっかり確認することが大切です。
今回は日本に生息する赤い蟻の種類と、ヒアリとの見分け方などについて解説します。
目次
日本にいる赤い蟻ってどんな種類?
日本には300種類以上の蟻が生息しているといわれています。蟻といえば「黒い」というイメージが強いかもしれませんが、日本の蟻のなかにはヒアリのような赤褐色をした種類も多く、「赤い=ヒアリ」と決めつけるのは早合点です。
そこで、まずは日本にいる代表的な赤い蟻をご紹介します。
キイロシリアゲアリなど、シリアゲアリの仲間
とくにヒアリと間違えられやすいアリとして挙げられるのが「キイロシリアゲアリ」です。その名の通り「赤色」というよりは「黄色」に分類されますが、珍しい色から外来種と間違われることも少なくありません。
シリアゲアリは外敵へ威嚇するため、腹部を上に持ち上げます。そのため通常の蟻と比べると背中寄りに腹部が付いており、腹部自体も先端がとがった形をしています。
オオシワアリ
オオシワアリもヒアリに間違われやすい蟻の種類のひとつです。その名の通り、明るい黄褐色をしている頭や胸の部分にややしわが寄っており、名前の由来となっています。
ムネアカオオアリ
日本でも大型の蟻に分類され、「胸部が赤褐色を示す」ことが特徴です。沖縄・小笠原を除く日本のほぼ全域に分布していますが、標高が高くなると全体的に黒みがかる傾向があるといわれています。
オオズアリ(アズマオオズアリ)
オオズアリは「大頭」。働き蟻のなかでも大型の「兵アリ」が分化しており、大きく顎を発達させることで知られています。オオズアリ属全般が赤みをもった色を示しますが、とくに「アズマオオズアリ」は明るい赤色をしていることが特徴。そのアゴで噛みつき危険をおよぼす印象を持つのか、ヒアリと間違われる場合が多いようです。
ヒメアリ・イエヒメアリ
家の中に侵入してくることの多い蟻の代表がヒメアリです。ごく小さい蟻でヒアリとは大きさが異なりますが、黄色という明るい色をしており、光沢もあることが特徴です。屋内に巣を作ることから見かける機会も多く、ヒアリと間違われることが少なくありません。
なおイエヒメアリは外来種で、現在では世界中に分布しています。ヒメアリよりもやや腹部の色が薄いのが特徴です。
エゾアカヤマアリ
日本では珍しく、蟻塚を作る大型種です。働きアリの大きさは7mm前後と非常に大きく、性格も攻撃的という特徴があります。ただし体の表面に光沢はなく、蟻塚自体も木くずなどが混ざっておりさらさらとしたイメージで、ヒアリの蟻塚とは異なります。
とくに北海道・石狩海岸沿いには巨大なエゾアカヤマアリの大群が種同士で敵対することなく共存しており、かつては世界一大きな蟻のコロニーとして知られていました。
ツノアカヤマアリ
頭の部分がへこんでおり、鬼の角のように見えることから名づけられた大型の蟻です。北海道から中国地方にかけて分布しており、森林・山地に住みます。見た目は全体的に赤褐色をしています。
なおツノアカヤマアリの女王はクロヤマアリなど他の種の巣に侵入し、働きアリを増やしてから自分の巣を作り始めることが多いのが生態的な特徴といえるでしょう。
アメイロアリ
ヒアリに似た大きさのアリで、色も赤褐色をしていることからヒアリと間違われやすい種類です。腹部が大型で、飴のような光沢を持っていることが特徴です。
サクラアリ
アメイロアリ属の一種・褐色をした体長1~1.5mmの小型の蟻ですが、しばしばヒアリと間違えられることがあります。家の中に巣を作り、10月ごろに羽アリが一斉に飛び立つことから不快害虫として扱われることがあります。
日本にも人を刺す赤い蟻はいる
ヒアリは腹部の針で人を刺すことがあり、持っている毒でアレルギー症状を引き起こすおそれがあることから定着しないよう警戒が続けられています。しかし日本に住む赤い蟻のなかにも人を刺すものがいることはご存じでしょうか。
イエヒメアリは人を刺すことも
外来種に分類されるものの、すでに日本に定着しているイエヒメアリは人を刺すことが多い種類のひとつです。毒は持っていないものの、刺されると痛みやかゆみを感じることが多いといわれています。
ヒアリ(アカカミアリ)と在来種を見分けるポイント
では、日本にいる赤い蟻とヒアリを見分けるにはどこに注目すればよいのでしょうか。見分けるポイントは「大きさ」「巣」「こぶ」「背中のとげ」「触覚」の5つです。そのすべてに当てはまることで、はじめてヒアリと判別することができます。
大きさ
ヒアリの特徴は働き蟻の大きさが「2~6mmの間で多彩」「大きさが異なっても姿はほとんど同じ」という点です。
働き蟻の仕事はエサ集めから卵・幼虫の管理、巣の防衛まで多彩です。蟻はこれらの仕事を分け隔てなくこなし、大きさも一定の場合が少なくありません。
しかし蟻のなかには「巣の防衛に特化させる」階級を持った種類も存在します。たとえばオオズアリの「兵アリ」は姿が大型になるだけでなくあごを大きく発達させることがその名称の由来になっています。
ヒアリの場合は多種多様な大きさが働き蟻として生まれるものの、それぞれが同じ姿で仕事をしています。ただし「途中で大きさが変わる」わけではないので、非常に小さい赤い蟻は「ヒアリの赤ちゃん」ではなく、別の種類の蟻として判別してください。
大型の蟻塚を作る
蟻塚を作るのは、じつはシロアリがほとんどです。蟻の多くは地面に穴を掘り、穴の中に巣穴を作って生活しています。しかし中には土などを積み上げて巣にする種類もおり、ヒアリもその一種です。
ただし大型の蟻塚になるのは巣を作り始めてから2~3年が経った頃です。また大型の蟻では北海道から本州の高地に生息する「エゾアカヤマアリ」が木くずなどのまざった円すい型の大きな蟻塚を作ることが知られています。そのことから「蟻塚=ヒアリ」とは限らないため注意が必要です。
胸部と腹部をつなぐこぶの数
蟻の特徴として、目や触覚のある「頭」、足が生えている「胸部」、栄養を貯蔵する「腹部」がくびれで分かれていることがあげられます。このうち「胸部」と「腹部」をつなぐくびれの部分が「腹柄」です。
ヒアリの所属するフタフシアリ亜科は、この腹柄も2つにくびれていることが分類の由来となっています。ただしこの特徴はシリアゲアリなどを含む日本の蟻の約50%を占めているといわれており、これだけでヒアリと区別できるものではありません。
背中のトゲ
蟻は背中にトゲ状の突起を持っている種類が多く生息しています。しかしヒアリは背中のとげがないことが特徴になっています。
ただしこれも「ヒアリ」だけの特徴ではありません。たとえば「ヒメアリ」は大きさこそ非常に小さいですが、ヒアリと同じく腹柄が2つに分かれ、背中の突起もないことが知られています。
触覚の「ふし」
蟻の触覚は「先端部分が太くなっている点」が特徴です。このうちヒアリはこの太い部分が「2つのふし」、全体で10つのふしで構成されていることが見分けるポイントです。
ヒアリとアカカミアリを見分けることは難しい
背中の突起やこぶ、触覚などの特徴は「トフシアリ属」に共通する性質です。しかし日本に生息するトフシアリ属のなかでも「トフシアリ」「オキナワトフシアリ」は非常に小さく、その大きさから日本にいる可能性のある蟻としては「ヒアリ」「アカカミアリ」の2種類に絞られます。
ヒアリとアカカミアリは非常によく似ていて、見た目からは「あごの間に小さな突起があるか(突起があるのがヒアリ)」「胸の側面に突起があるか(突起がないのがヒアリ)」といった専門家レベルの細かな違い、「大型働き蟻はあごが発達して溝ができる(ヒアリはほとんど変わらない)」「ヒアリほど大型の蟻塚は作らない」といった行動の違いにとどまります。アメリカでは南アメリカ原産の「ヒアリ」中央アメリカ原産の「アカカミアリ」を区別せず「Fire Ant」と呼んでいるほど。
アカカミアリの持つ毒はヒアリほど強くないといわれています。しかしヒアリと同じく外来特定生物に指定されており、国内で拡大しないよう監視対象になっています。この2種の区別は専門家に任せ、疑いがあれば速やかに行政へ届け出るようにしましょう。
ヒアリと同じ特定外来生物「アルゼンチンアリ」について
ヒアリ・アカカミアリと同じく特定外来生物の赤い蟻として有名なのが「アルゼンチンアリ」です。ただしアルゼンチンアリは多くの点で、同じ南アメリカ原産のヒアリとは異なる特徴を持っています。
黒っぽい赤色
アルゼンチンアリはほかの赤い蟻と比べて黒っぽい赤色をしていることが特徴です。またほかの蟻は表面につやがあり、色も部位ごとに変わっていることが多いですが、アルゼンチンアリの場合はその差がほとんどありません。
くびれが目立たない
日本の蟻の50%ほどは腹柄にこぶが2つあるフタフシアリ亜科、その他の蟻もこぶが1つあることが多いです。しかしアルゼンチンアリはこぶがなく、くびれ部分が目立たないことがほかの蟻と区別する大きな特徴となっています。
アルゼンチンアリもヒアリと同じく「船で渡ってきた蟻」。広島県廿日市市で初確認され、その後港湾地域でも相次いで見つかっています。複数の女王蟻が働き蟻を共有するなど生存能力が強く、侵入した地域では一時「アルゼンチンアリ」しかいなくなったこともあるのです。ヒアリだけでなく、このアルゼンチンアリでないかもしっかりと確認・区別するようにしてください。
赤い蟻を見かけたらどうすればいいの?
もしも家の庭で赤い蟻を見かけた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
特定外来生物でないかを確かめる
特定外来生物である「ヒアリ」「アカカミアリ」「アルゼンチンアリ」とも、現在の日本国内分布は港湾地域など限定的です。そのため過度な警戒をする必要はありませんが、定着を防ぐための調査・地域と協力しての駆除が必要になります。
そのためまずは「特定外来生物の疑いがないか」をしっかり確認することが大切です。そしてもし疑いがあれば行政に確認し、専門家による種の特定をお願いしましょう。
必要に応じて駆除を検討
ここまで確認してきたように、赤い蟻は必ずしも駆除する必要はありません。ヒアリに過剰に警戒するあまり無用な駆除をしてしまうと、縄張りを持つ蟻が不在になり逆にヒアリの定着を早めてしまうおそれも出てくるのです。
一方で保存していた食べ物に群がる、人を刺す、農作物に被害を与えるなどの被害が深刻な場合、やむを得ず駆除しなければならないこともあります。その際は駆除をおこなうこともときには重要になってくるでしょう。
蟻の駆除は「殺虫剤を散布し、見える蟻を駆除する」「毒餌(ベイト剤)を使い、巣ごと壊滅させる」の2つを適切に使い分けることが大切です。ただし自分での蟻駆除は意外と難しく、効果が小さくなってしまうことも少なくありません。できればアリ駆除のプロと相談し、適切な対策をおこなうようにしてください。生活110番でも地域のアリ駆除のプロをご紹介しています。
まとめ
2019年10月現在、日本の住宅地でのヒアリ定着は確認されていません。赤い蟻を見てもヒアリだと思い込まず、まずはどんな蟻か観察するところからはじめましょう。ヒアリではない特徴を見つけることで、きっと安心できるはずです。
ただし日本の一部の地域ではヒアリと同じ種のアカカミアリ、同じ熱帯性のアルゼンチンアリなどが定着しつつあります。いずれも特定外来生物に指定されているため、専門家とも相談したうえで駆除を検討しましょう。またヒアリでなくても農作物や食物に被害が出ている場合も対策の必要があります。こうした駆除を検討する際はできるだけアリ駆除のプロに依頼し、確実な方法を取るようにしてください。
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