建物の建築・解体の見積もりに目を通していると、工事の内訳に「はつり工事」という文字を見かけたことはありませんか。いったい何の工事なのか、名前を聞いただけではわかりにくいかと思います。しかしこの作業は、意外とかかせない作業の1つなのです。
今回ははつり工事の内容、そして費用や注意点なども詳しく解説していきます。
目次
はつり工事っていったいなに?
はつり工事の正体はコンクリートやアスファルト舗装などを「削る」工事のことです。漢字では石を切るということで「斫」という字を使います。
鉄筋コンクリート造りの住宅は丈夫ですが、リフォームなどで一部の壁だけを壊そうとなると意外と難儀な工事になります。それはコンクリートが不必要に割れないようにしつつ、跡が目立たないよう整えなければならないから。どこまで削っていいか、どの方向から削るか、そして鉄筋をどう取り除くか。経験をもとに、状況を見極めつつ判断しなければなりません。
また、建物を解体して更地にするにしても同様です。建物の解体順序を間違えれば足場が崩れてしまい作業員の事故につながるほか、高所からの破片落下事故などのおそれも考えられます。木造住宅であっても基礎部分にはコンクリートを敷いていることが少なくありません。
そのためコンクリートをどう壊していくか、はつり工事の知識と工程が必要になるのです。
はつり工事が必要な状況
はつり工事は大きく分けて2パターン!
では、はつり工事が必要な状況とはどのようなものでしょうか。
建物や基礎を解体する場合
先ほども触れたとおり、建物の解体にははつり工事の知識が必要になります。とくに住宅地などでは住宅が密集していることが多く、慎重な作業が求められることも理由です。
柱などを埋め込む場合
たとえば駐車場に屋根を設置する状況を考えてみましょう。屋根を設置するには支えるための柱が必要になるため、駐車場に設置することになります。このときできるだけ丈夫にするため、駐車場の隅に穴を掘って柱を深く埋めます。
駐車場が舗装されている場合、この穴を掘るために一部をはがす必要があるでしょう。このとき必要になるのが「はつり工事」です。
舗装をやり直す場合
コンクリートやアスファルトの舗装が古くなってきているので、一度舗装をやり直したいということも少なくないでしょう。この場合そのまま上に舗装するという手もありますが、通常は一度コンクリートやアスファルトをはがしてから工事に入るでしょう。この作業も「はつり工事」です。
配線のための穴を開ける場合
鉄筋コンクリート造りの建物の場合、配管部分はあらかじめ考慮されてコンクリートが流し込まれます。しかし後から追加で通す必要が出てくると、コンクリートに穴や溝を開けなければなりません。こうした穴を開ける対応にはつり工事の技術が必要になります。
人の手でおこなうはつり工事と、重機を使うはつり工事がある
はつり工事は大きく「人の手で」おこなうもの、「重機を利用して」おこなうものの2つにわけられます。意外なことに、現在でも多くのはつり工事は人の手を介しておこなわれているのです。
小規模・丁寧な作業が必要なときは人の手で
はつり工事では穴の大きさの調整など丁寧な作業が必要なことも多く、人の手で削っていくようなことも少なくありません。また手持ちの機械を使うことも多いです。
この理由として丁寧な作業のほかに、作業スペースの問題が考えられます。はつり工事の現場は狭いことが多く、大型の機械が入れにくいのです。また大型の重機ほど、次の章で取り上げる騒音の問題が大きくなることも一因でしょう。
はつり工事では次のような機械を利用することがあります。
【ハンマー・チッパー】
空気や油圧などの力を利用して内部のピストンを動かし、先端に衝撃を加えていく道具です。
【ブレーカー・削岩機】
ハンマーと同様に先端に衝撃を加えていく道具ですが、やや大型で両手を使うことも多いです。道路の舗装工事で使っているイメージが強いかもしれません。
【ドリル】
コンクリートへの穴あけに使う道具で、内部にハンマーが内蔵されていることもあります。
【カッター】
高速回転する丸刃で表面を徐々に削り取っていく道具です。
【ウォータージェット】
圧力をかけた水の勢いを利用してコンクリートを削っていきます。
建物の解体などが伴う大規模な作業は重機を併用して
一方、建物の解体などが伴う大規模な作業は重機も併用しながらおこなわれます。この工事はどちらかといえば「解体工事」の範囲内といえ、パワーショベルなどにノミと呼ばれる部材を取り付けます。そしてそのノミを振動させ、コンクリートを徐々に削っていくのです。
はつり工事で気にしておきたい騒音の問題
はつり工事で問題になりやすいのが近所に対する騒音です。
固いものを削ろうとすると、加えた力(エネルギー)の一部は「音」として変換されることになります。その音が近所に響き渡り、睡眠などの妨げになってしまうことも少なくありません。昼間だからといって油断は禁物。夜勤明けの方や赤ちゃんがいるかもしれません。
トラブルを未然に防止するために、はつり工事を予定している場合は必ず近所の方と打ち合わせておきましょう。必要に応じて工事時間を制限したり、音の出にくい機械や手作業での対応となるかもしれません。
はつり工事の費用相場はいくら?
はつり工事の費用相場として、次のような価格を目安にしてみましょう。
エアーコンプレッサーを使用する場合
1日あたり35,000円が目安です。
ハンドカッターを使用する場合
こちらは1mあたり500円からを目安にしておきましょう。また切断だけの費用となり、切断時の削りかすなどの回収費用が含まれていない場合もあるため注意してください。
はつり工事の費用が高くなる場合とは?
はつり工事は見積もりよりも費用が高くなることも少なくありません。その理由として、次のようなものが挙げられます。
予想よりも作業が難航することがある
コンクリートを削ってみると予想外のところに鉄骨が入っていたりして、慎重に削らざるを得ない場合もあります。こうした場合日数がかかり、そのぶん人件費などがかさむこともあるのです。
近隣に配慮した工法で時間と手間がかかる場合も
近隣への配慮から、騒音が出にくい機器の使用や作業時間の短縮などが必要なこともあります。その場合時間がかかる、高コストになるといったデメリットも考えられれます。
廃棄物処理の料金が予定以上にかかることがある
はつり工事をおこなえばコンクリートがらなどの産業廃棄物が生じてきます。もちろん工事費用の見積もりには廃棄物処理の料金まで見込んでいるのですが、その量が予想より多かった場合費用が高くなることも考えられるでしょう。
まとめ
はつり工事は解体工事には必要不可欠な作業であり、そのほかにもさまざまな場面で用いられます。それでいて完全に機械化されず、人の手を介しておこなわれることの多い点では不思議な印象を受けるかもしれません。
はつり工事は使う機械や作業期間が変わりやすい作業です。そのため事前に見積もりを取るだけでなく、多少余裕を持って依頼するようにしましょう。
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