「コンクリートマイク」とは、分厚い壁やパイプの表面にマイクを押し当てることで、壁越しに音を聞くことのできる収音装置のことです。本来は建築や配管メンテナンスなどの際に異音を聞き取って検査するための道具ですが、別の使い道もあります。
コンクリートマイクは壁を隔てた向こう側の音や話し声を聞き取れるため、使い方次第では盗聴に用いることもできるのです。
本コラムでは、コンクリートマイクの原理と市販されている商品、それから盗聴を含む法律関係について解説します。コンクリートマイクによる盗聴が疑われる場合の対処法も、あわせて確認しておきましょう。
目次
壁越しに音が聞ける!?コンクリートマイクの原理
コンクリートマイクの原理を別のものに例えるなら、病院などで診察の際に使われている「聴診器」です。聴診器は、心臓の鼓動や呼吸音といったわずかな音を増幅して捉えることで、身体の内部の様子をうかがい知ることができます。
同じようにコンクリートマイクもまた、壁越しの小さな音声や会話を電気的に増幅することによって、人間の耳ではっきりと聞き取れるようにする装置です。言うなれば、機械の力を借りて聴覚を極限まで研ぎ澄ませているようなものですね。
コンクリートマイクは見た目も聴診器によく似ています。部品構成をおおまかに分けると、壁に押し当てる収音器(マイク)、音を増幅するアンプ、そして増幅した音を耳に伝えるスピーカーの3つです。
聴診器のような機械を壁に押し当てている人がいたら、それはコンクリートマイクを使って壁の向こうの音を聞いているのかもしれません。
コンクリートマイクが捉えるのは壁の振動
人間の耳ではかすかにも聞こえないような分厚い壁の向こうの音でも、コンクリートマイクなら聞き取れる可能性があります。それは、コンクリートマイクが壁の「振動」をキャッチしているためです。
「音」というのは空気を伝わる振動のことなので、音源の近くにあるものは震えます。適当なコピー用紙やうちわに向かって声を出すと、振動がよくわかるのではないでしょうか。この現象は壁や天井などにおいても同様で、部屋の中で音を立てれば必ずその部屋の壁は振動します。
その振動は、多くの場合人間の五感では捉えられないようなごくわずかなものです。しかし硬い壁に発生した振動は壁の向こう側、つまり部屋の外にまで伝わります。コンクリートマイクがその振動をキャッチできれば、振動を音声に変換して聞き取れるというわけです。
探偵ものや刑事もののドラマでは、ときおり壁にコップの上部を押し当てて、底に耳を当てて盗み聞きするシーンがありますよね。あれも壁から伝わってくる振動をかき集めようとしている光景なのです。
聞き取りやすさは壁の材質によって変わる
コンクリートマイクは、その名のとおりコンクリートの壁を隔てた向こう側の音を聞き取る装置です。そして、壁がコンクリート以外の材質の場合、コンクリートマイクは本来の効果を発揮しづらくなります。
基本的に振動がもっとも伝わりやすいのは、密度が高く硬いものです。硬質なコンクリート建築の壁であれば、1m近く厚みがあっても向こう側の音をコンクリートマイクで聞き取ることができるとされています。
一方で、木造建築のように柔らかく空洞のある構造の建物では、振動が弱くなってしまうため、コンクリートマイクではなかなか音をキャッチすることができません。また壁の内部に断熱材や遮音材が仕込まれている場合も、振動が吸収されてしまって壁の向こうまで届かないことがあります。
コンクリートマイクはどんな壁にも使えるわけではなく、コンクリート建築の建物でこそ真価を発揮することをおぼえておきましょう。
ちなみに壁越しの音が聞こえるのだから天井や床越しにもコンクリートマイクが使えると思いがちですが、実際はそうではありません。床や天井の裏には配管を通すためのスペースが作られていることが多く、振動はそこで止まってしまいます。
また住宅の床にはクッションが敷かれていることが多いため、たとえばマンションの上下階の音をコンクリートマイクで聞き取るのには向いていません。
コンクリートマイクは何に使うもの?本来の用途
コンクリートマイクの本来の用途は、機械や配管の内部に発生するわずかな異音を聞き取って異常が起きていないか確認することです。
水道管やガス管に破裂や詰まり、異物の混入が起きていないか、車のエンジンに不調がないかなど、さまざまな不具合が音を聞くことでわかります。目視で確認できない場所でも分解せずに内部の様子をうかがい知ることができるため、工事や保守点検の現場での「聴診」は非常に便利です。
しかし、壁の向こうの音が聞けるということは、本人にバレずに盗み聞きができるということでもあるため、コンクリートマイクは盗聴にも使えてしまいます。
プライバシーの侵害を目的として悪用する人がいる一方で、警察や探偵などの職業では情報収集や犯罪調査にも活用できるため、コンクリートマイクはまさに使用者次第で良いようにも悪いようにも使える道具といえるでしょう。
機能は多彩!コンクリートマイクの商品紹介
コンクリートマイクは無線やカメラの専門店、インターネットなどで市販されています。ここでは、一般に売られているコンクリートマイクの商品をいくつかご紹介します。
もっともスタンダートなタイプのコンクリートマイクです。収音器、アンプ、イヤホンのセットになっています。価格もお手頃なので、入門機におすすめです。
◆SWK-300
収音器とアンプが一体化したコンパクトなタイプのコンクリートマイクです。持ち運びがしやすく、また目立ちにくいため第三者にコンクリートマイクの存在がわかりにくいという特徴があります。
◆EQ-10
イコライザを内蔵することによって、余分な音をカットし聞きたい音だけを強調する機能をもったコンクリートマイクです。雑音の多い環境では目的の音が聞き取りづらいこともあるため、音を選別する機能が効果を発揮します。
◆FL-330
収音器が表裏両方使用可能なリバーシブルマイクを搭載したコンクリートマイクです。収音性能の高い表面と、雑音を抑制する機能に優れた裏面を状況に応じて使い分けることができます。
また収音器の表面が平面になっているため、収音器を壁に滑らせながらより重要な音の聞こえる場所を探るといった使い方も可能です。
値段によって何が違う?コンクリートマイクの性能について
前項でご紹介した市販のコンクリートマイクを見ていると、商品によって値段に大きな差があることがわかります。高いコンクリートマイクと安いコンクリートマイクは、一体何が違うのでしょうか。
音質以外に大きな差はない
コンクリートマイクは壁の振動によって伝わってくるわずかな音を増幅する仕組みのため、聞き取れる音の範囲はマイク自体の性能よりも壁の材質や音源の大きさに左右されがちです。
そのため、高価格で高性能な機種だからといって、より小さな音でも聞き取れるというわけではありません。どちらかといえば、コンクリートマイクの性能はスピーカーから耳に届く音質に影響が出ると考えてよいでしょう。
同じ音量でも、ノイズ混じりの音より鮮明でクリアな音の方が内容を把握しやすいため、より高品質な音を求めて高性能なコンクリートマイクを選ぶのもよいかもしれません。
音を選別する機能
高性能なコンクリートマイクには、イコライザやフィルターを搭載することによって不要な音をカットし、聞きたい音だけを鮮明に聞き取る機能を備えたものがあります。こうした音の選別機能によって、必要な音がより高い音質でクリアに聞こえるようになるのです。
盗み聞きは違法?合法?コンクリートマイクと法律
点検や不具合調査に便利なコンクリートマイクですが、前述の通り使い方によっては悪用することもできます。コンクリートマイクを使った盗聴行為は、法律で取り締まれないのでしょうか。
盗聴自体は違法にならない
結論からいえば、現在の日本に「盗み聞き」や「盗聴」を取り締まる法律はありません。コンクリートマイクで誰かに部屋の中の音を聞かれていることが分かっても、それ自体を違法行為として訴えることはできないのです。
たとえば部屋の中で喋る声が大きくて、たまたま通りがかった人の耳に会話の内容が届いたとして、それを盗み聞きとしてとがめることはできるでしょうか。答えはNOです。
同じように、外で「悪意なく」コンクリートマイクを使っている人が「たまたま」部屋の中の音を拾ってしまった場合も、これを盗聴と断言することは不可能ですよね。
つまり、真実はどうであれ、日本の法律では「盗聴」と「偶然聞こえた」を正確に区別することはできないのです。疑わしきは罰せずが日本の刑事法の原則なので、盗聴行為そのものを警察が取り締まることはできません。
盗聴が犯罪になるケースとは
盗聴自体は違法ではないとはいえ、ニュースなどでは盗聴の疑いで逮捕されている事案を見ることがあります。盗聴で捕まるケースと捕まらないケースでは、何が違うのでしょうか。
盗聴が犯罪になるケースには、主に2通りのパターンがあります。
・盗聴器を設置するために他人の家に忍び込んだ場合(住居侵入罪)
・家の中の家電や家具を改造して盗聴器を仕掛けた場合(器物損壊罪)
・電話など有線通信の内容を盗聴した場合 (有線電気通信法違反)
・盗聴した情報を使って相手を脅した場合(脅迫罪)
・盗聴した情報を使って相手を従わせた場合(強要罪)
・盗聴データを公開したり販売した場合(個人情報保護法違反)
・つきまといや嫌がらせを目的に盗聴をおこなった場合(ストーカー規制法違反)
このように、盗聴そのものは犯罪とはなりませんが、盗聴に関連する行為が犯罪になるケースは十分に考えられるのです。
ただ、コンクリートマイクによる盗聴は仕掛けるタイプの盗聴器などと違い、痕跡も証拠もその場に残りません。コンクリートマイクそのものに違法性はないため、明らかに盗聴されている場合でも警察が動きづらいというのが現状といえるでしょう。
盗聴されていることに気づいたときは、以下の対策を実践してみてください。
もし盗聴されていたら?とるべき対処
コンクリートマイクで盗聴されている可能性がある場合、どのような対処をとるべきなのでしょうか。
まずは警察に相談する
盗聴被害が疑われる場合、まずは警察に相談しておきましょう。ただし、前述の通りコンクリートマイクは証拠を残さないため、警察にすぐに動いてもらうことは難しいかもしれません。
警察に動いてもらえない場合でも、今後裁判になったときのために、「警察に被害を相談していた」という記録を残しておくことは重要です。
盗聴器調査を業者に依頼する
探偵や警備会社、あるいは盗聴器調査の専門業者にコンクリートマイクの発見を依頼しましょう。コンクリートマイクは痕跡を残さないため発見は困難ですが、マイクとアンプが無線でつながっている機種であれば、電波をたどることで盗聴者の居場所を特定できる可能性があります。
なにより、盗聴被害は常に監視されているという恐怖や不快感から追い詰められてしまいがちです。被害を把握し、相談できる相手、盗聴トラブルを解決する手助けをしてくれる相手をつくっておくことで、心理的な負担を軽減することができるかもしれません。
音の妨害は意味がない?
コンクリートマイクはかすかな壁の振動から音を拾うため、たとえばテレビを大音量で流すなどすれば、盗聴を妨害できると考える方もいることでしょう。
しかし、近年のコンクリートマイクはイコライザ―やフィルターの高性能化によって、雑音をカットする能力に優れたものが市販されています。雑音を増やして盗聴を妨害する方法は、あまり効果を見込めないと考えておいてください。
まとめ
コンクリートマイクは壁を伝わるかすかな振動をとらえることで、壁の向こうの音を聞き取る装置です。とくにコンクリートのような硬くて密度の高い材質の壁では、1m近い距離からでも音を聞き取れる性能をもったものがあります。
コンクリートマイクは本来機械や配管の検査に使われる装置ですが、盗聴に用いることも可能です。盗聴器などと異なり証拠や痕跡を残さないため、コンクリートマイクを盗聴目的で悪用された場合は取り締まるのが困難になります。
盗聴が疑われる場合は、まず警察に相談しましょう。さらに、探偵や業者に盗聴器調査を依頼することで、コンクリートマイクによる盗聴を防止できるかもしれません。
盗聴器調査を依頼できる業者や料金
依頼できる業者や料金については、「生活110番」の「盗聴器調査」をご覧ください。
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