
ベランダの防水層(床面)が剥がれていたり、浮いてきたりしたとき、DIYで修理しようとするのはおすすめできません。ウレタン防水のように塗装するだけでよい工事もありますが、塗りムラなどが起きやすく思った以上に難しい作業になるためです。
ベランダの防水工事をするときは、知識や経験の豊富な業者に依頼するのが安心でしょう。DIYよりも高い費用が必要になりますが、素人の作業で何度も修理を繰り返すより、結果的には費用を安く抑えることができるでしょう。
ただ、ベランダ防水工事を依頼する業者の選び方には注意が必要です。料金だけを確認して業者を選んでしまうと、満足のゆく防水工事ができないかもしれません。そこで、適切な料金で満足のゆく依頼ができるよう、費用相場や業者選びのポイントをご紹介していきます。
目次
ベランダ防水工事はDIY可能?それとも業者?
はじめにもご説明しましたが、DIYでベランダ防水工事をするというのは難しいため、基本的には業者に依頼するのがおすすめです。まずは、なぜDIYではなく業者に依頼するのがおすすめなのか、その具体的な理由から解説していきます。
DIYでのベランダ防水工事が難しい2つの理由
DIYでベランダ防水工事をすることも可能ですが、以下の2つの理由からDIYではなく業者に依頼するのが安心です。
理由2:下地素材の見極め
理由1:劣化しやすい
防水工事には大きく4つの種類がありますが、ベランダには基本的に「塗装」を使った方法が選ばれます。ベランダの場合、施工範囲が狭く室外機や排水など複雑な部分が多くなっているため、塗装を使った方法が選ばれるようです。
ただ、ベランダの塗装は外壁や屋根よりも高度な塗装技術が必要だといわれています。なぜなら、塗りムラなく均一に塗装する必要があるためです。均一に塗装できなければ、雨水やゴミが溜まりやすくなり、劣化を早めてしまうことになります。
さらに外壁や屋根とは決定的に違う点として「日常的に人が立ち入る」ということがあげられます。ベランダの上を人が歩けば、当然その影響を受けて表面は摩耗していくため、より丁寧な施工が必要となるのです。これらの理由からDIYよりも業者に依頼して防水工事をするのがよいといえます。
理由2:下地素材の見極め
じつはベランダの防水工事(塗装)が、外壁や屋根よりも難しいといわれる理由は「ベランダの素材」にもあるのです。一般的なベランダには、プラスチック製の板が用いられることが多くなっています。しかし、プラスチック製の板は暑い季節に膨張し、寒い季節に収縮するという特徴があるのです。
こうした伸縮性のある素材に一般的な塗料を塗ってしまうと、伸縮運動に伴って塗料がはがれてくる可能性が高まります。そのため、柔軟性の高い塗料を選ぶなどの工夫が必要となり、こうした見極めができるかどうかも工事をする上では重要なポイントになるのです。
DIYするならウレタン防水かトップコート
ベランダの防水工事にはさまざまな種類があります。そしてどれも大掛かりな作業が必要なものばかりです。そのため、個人がDIYで本格的な工事をおこなうのは簡単なことではありません。
しかし、特別な専用器具などを使わない“ウレタン防水”であれば、防水塗料をムラなく塗装するだけでよいため、DIYで防水工事することも可能です。もちろんムラなく塗装するには技術が必要になるため、決して簡単な作業ということではありません。
また、防水層を保護するための塗料「トップコート」のメンテナンスもDIYすることができます。防水工事よりは簡単な作業になるため、トップコートだけ自分で塗ってしまう方も多くいるようです。
ベランダ防水工事の「種類・特徴・費用相場」
つぎにベランダの防水工事にはどのような「種類・特徴」があり、業者に依頼する場合「費用」がいくらくらいかかるのかみていきましょう。それぞれにメリット・デメリットがあり、必ずしも高い防水工事がよいというものではありません。どういった目的で防水工事をするのかをよく考えて、それぞれの特徴を理解した上で選択してみてください。
費用相場 | 耐用年数 | |
ウレタン防水 | 約6,200円 | 10~13年 |
シート防水 〇塩ビシート防水 〇ゴムシート防水 |
約7,000円 | 10~14年 10~15年 |
FRP防水 | 約9,000円 | 10~12年 |
アスファルト防水 | 約6,500円 | 15~20年 |
※上記の費用相場は弊社が調べた防水工事業者5社の料金を平均して算出したものです。
※掲載料金は1平米あたりの費用相場になります。
ウレタン防水
ウレタン樹脂を塗ることで防水層を作るウレタン防水は、塗料を塗るだけでよいため、狭くて複雑な場所で選ばれやすい防水工事です。もっとも一般的な防水工事でもあり、1平米あたりの単価が安く、DIYできるといった施工のしやすさが特徴になります。
・下地の形によく馴染むため施工しやすい
・工事期間が短い
・既設の防水層を撤去する必要がないため塗料を上から塗布できる
・撤去するべき廃材が出ない
・表面がムラになる可能性がある
・時間の経過とともに劣化する
塩ビシート防水
塩化ビニール樹脂をシート状にしたものを貼り付けていく防水工事です。接着工法と機械固定工法いずれかの方法によって施工されます。シートを貼り付ける方法になるため、狭くて複雑な場所よりも屋根などの広い場所に向いている防水工事です。
・既設の下地の影響を受けない
・施工時に下地調整をする必要がない
・耐久性と耐候性に優れている
・工事期間が短くて済む
・仕上がりが美しい
・シートに負荷がかかると切れやすくなる
・塩化ビニールをやわらかくする働きの「可塑剤(かそざい)」が気化すると、硬化し割れやすくなる
ゴムシート防水
ゴムシート防水は、塩ビシート防水よりも安価なシート防水になります。施工方法などは塩ビシート防水と同様です。
・耐候性と伸縮性に優れている
・工事期間が短くて済む
・軽量である
・ゴムシート防水の上から保護層を塗布すれば、軽歩行することができる
・ゴムシート同士を接着するためには、粘着テープや接着剤を用いる必要がある
・薄いシートなので破れたり傷ついたりしやすい
FRP防水
FRP防水は、FRP(ガラス繊維強化プラスチック)を使った防水工事で、耐久性・防水性に優れた特徴を持っています。また、硬化するまでの時間が短く、ベランダやバルコニーであれば1~2日で施工が完了してしまうようです。
ほかの防水工事に比べて費用は高くなっていますが、それ以上にメリットを感じやすくなっています。強度が求められるベランダには、とくにおすすめの防水工事です。
・耐久性、耐候性に優れている
・人が立ち入る場所や車両走行にも耐えられる
・速やかに硬化するため工事期間が短くて済む
・仕上がりが美しい
・紫外線に弱く5年に一度はトップコートの塗り替えが必要
アスファルト防水
アスファルト防水は、合成繊維不織布にアスファルトを含ませてしみこませたシートに、コーティングを施して下地に貼り重ねていく工法です。もっとも耐用年数が長く、とても丈夫な防水層を形成できます。
ただ、アスファルトを使った防水方法になるため重量があり、基本的には、屋根や屋上で選ばれる防水工事となっています。
・耐久性と防水性に優れている
・メンテナンスをおこなう回数が少なくて済む
・工事に手間がかかる
・ベランダのように人が立ち入る場所には保護モルタルを貼り表面を保護する必要がある
・重量があるので木造建築には適さない
・紫外線による影響を受けやすいため劣化・硬化する可能性がある
防水工事業者を選ぶときのポイント
防水工事ごとの相場の次は、業者選びのポイントをご紹介していきます。費用の安さだけで決めてしまうと、悪徳業者に引っかかってしまうこともあるため、必ず料金以外のポイントも確認するようにしましょう。
まずは、以下の6つの項目を確認してみてください。
・こちらの質問に明確に返答できない
・不安をあおって工事の契約をせかす
・見積書がざっくりしている
・専門用語が多くて理解しづらい
・大幅な値引きをもちかける
上記の項目に当てはまる業者には要注意です。上記に当てはまる業者が悪徳業者であるとは限りませんが、納得のいかない対応などによってトラブルに発展するおそれもあります。そのような事態を回避し、気持ちよく依頼できる業者を選ぶのが安心です。
また、上記の項目を確認して問題なければ、次は見積りをもらいましょう。このとき、少なくとも2~3社から見積りをもらい比較することで、より安く満足のゆく業者を見つけやすくなります。防水工事は家を守るうえで欠かすことのできない大切な工事ですから、業者選びは慎重におこないましょう。
ベランダ防水をDIYで修理・補修するときの手順
それでは最後に、ベランダ防水工事とトップコートのメンテナンスをDIYするときの手順をご紹介していきます。DIYで防水工事やメンテナンスするという方は、正しい手順で作業をおこなっていきましょう。
ウレタン防水
DIYでもしっかりと防水効果を発揮させるためには、塗装の前の下準備がとても重要です。下準備を怠ると防水層の劣化を早めることにもなるため、手を抜かずしっかりと作業するようにしみましょう。
(2)既設の防水層の膨れた部分やはがれた部分を取り除く
(※施工前にゴミや異物をしっかりと取り除くことで塗料が密着しやすくなります)
(3)ベランダの下地にプライマー塗料を塗る
(4)プライマー塗料をしっかりと乾燥させる
(5)プライマーが乾燥したらウレタン塗料を均一に塗る
(6)1層目のウレタン塗料をしっかりと乾燥させる
(7)2層目のウレタン塗料を塗る
(8)2層目のウレタン塗料をしっかりと乾燥させる
(9)その上からさらにトップコートを塗って完了
こうしたDIYはあくまでも「簡易防水」ですが、何もしない状態に比べればかなりの防水効果が期待できるはずです。こうした工事のあとは、5年に一度など定期的に「トップコートを塗り直す」などのメンテナンスをおこなうようにしましょう。
トップコートの塗り替え
定期的にトップコートの塗り替えをおこなうことで、防止層の劣化を防ぎ長持ちさせることができます。防止層を長持ちさせることで、大掛かりな工事が必要なくなり、結果的には費用を安く抑えることにもつながるのです。
トップコートにひび割れがあるなど塗り替えを自分でおこなうときは、以下の手順で作業するようにしましょう。
【1】ベランダ床の表面のゴミやホコリを取り除く
【2】きれいになったら表面を研磨し凹凸をなくす
【3】同じ種類のトップコートを均一に塗って完了
〇ウレタン系トップコート
【1】ベランダ床の表面のゴミやホコリを取り除く
【2】きれいになったらアセトン拭きで表面の油脂を落とす
【3】トップコート用のプライマーを塗る
【4】同じ種類のトップコートを均一に塗って完了
トップコートの塗装も防水層と同じように塗りムラができないようにしましょう。塗りムラによって凹凸ができると、そこに雨水やゴミが溜まりやすくなり、劣化を早めてしまいます。作業が難しいと感じる方は、業者に依頼するのがよいでしょう。
まとめ
作業に丁寧さの求められる防水工事では、DIYよりも知識や経験の豊富な業者に依頼するのがおすすめです。ただ、比較的施工がしやすいといわれるウレタン防水工事であれば、DIYすることもできます。
ベランダの防水工事をDIYすれば、工事費用を安く抑えられるというメリットがあり「この状態をしっかり維持していこう!」という意識も芽生えるでしょう。その結果、こまめにメンテナンスをすることにもつながるかもしれません。
一方こうしたDIYにかかる時間や手間を考えると「すこし面倒だな」「上手にできるか不安だな」と思われる方もいらっしゃることでしょう。そんなときは無理せず、信頼できる業者に相談してみることをおすすめします。