必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

2021.4.30

必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

ふとしたときに家の壁を見たらひび割れている、なんてことはありませんか?そのひび割れ、コンクリートの劣化によってできたものかもしれません。

コンクリートのひび割れは、そのまま放置しておくと建物倒壊につながってしまいます。安心して長く鉄筋コンクリートでできた家で暮らすためにも、何が原因でコンクリートが劣化しひび割れしたのか知っておきましょう。

コンクリートの劣化原因その①:コンクリート内の成分の化学反応によるもの

コンクリートを形作っている成分が化学反応をおこして分裂してしまうと、劣化してひび割れなどがおこることがあります。そのほとんどが、コンクリート内にある成分と空気中に含まれる原子の結びつきが原因です。成分の結びつきによる劣化には「中性化」「アルカリ骨剤反応」があります。それぞれどのような状態で劣化が進んでいくのかみていきましょう。

●中性化

中性化でコンクリートのひび割れがおこるといっても、その状態を想像するのは難しいでしょう。コンクリートはセメントを水で固めて作ったものなのですが、この水で固める過程で強いアルカリ性を示しています。このアルカリ性が、鉄筋コンクリートの建物が腐って劣化していくのを防いでいるのです。

しかし、鉄筋コンクリートは建物に使われた時点で空気に触れることになります。この空気に大量に含まれている二酸化炭素と融合し酸性とアルカリ性が中和され、中性化していくのです。

中性化すると、鉄筋コンクリートに埋め込まれた鉄がどんどんサビていきます。そのサビの分だけ体積が増えて膨れ上がり、その圧力でひび割れていくのです。

こういったコンクリートの中性化をおこさないためには、コンクリートのなかのアルカリ成分を守ることが重要になります。そのためには、コンクリートに防水材を塗って膜を作り、空気に直接触れさせないようにしましょう。

必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

●アルカリ骨材反応

成分の化学反応によってコンクリートが劣化するもうひとつの理由が、アルカリ骨材反応によるものです。コンクリートを作るときには、砂利や砂を骨材として利用します。コンクリートやセメントと骨材が合わさらないと強度がでないため、丈夫な鉄筋コンクリートの建物を作るためにはかかせません。

骨材として使われる砂利や砂にはさまざまな成分のものがありますが、シリカ鉱物やガラス質を含んだものを使うと劣化がおこりやすくなってしまいます。これらの物質が、セメントに含まれている高いアルカリ成分と反応して、膨張やひび割れの原因になるからです。

アルカリ骨材反応をおこさないもっとも簡単な方法は、コンクリートを使って建物を建てるときに利用する骨材を選別することです。火山岩系や堆積岩系の砂利や砂が使われていた場合、アルカリ骨材反応がでやすいといわれています。利用するコンクリートの成分を、建築業者に事前に尋ねておくと安心です。

●その他化学反応

コンクリートの化学反応による劣化原因の多くは、中性化かアルカリ骨材反応によるものです。しかし、ごくまれにそれ以外の原因で劣化がおこることも考えられます。化学工場や食品加工場からでる廃棄液にコンクリートが触れたりすると、劣化してひび割れなどの症状がでることもあるようです。

コンクリートの劣化原因その②:特殊な環境によるもの

コンクリートの劣化がおこる理由には、化学反応以外のものもあります。塩分がコンクリートにしみ込んだり、凍ってしまったりしてもひび割れはおこるのです。では、この2つの原因でひび割れがおこる仕組みを、この章で具体的に解説していきます。

●塩害

コンクリートに塩分が染み込んでひび割れがおこることを、塩害といいます。塩分を形作っているのが塩素イオンという分子のため、この分子が鉄筋コンクリートに使われている鉄をサビさせてしまうのです。

サビた鉄はコンクリートを膨張させ、ひび割れの原因になります。だからこそコンクリートの塩害を防ぐためには、塩分がコンクリートに触れないようにする必要があるのです。

コンクリートに海砂を使用していると、とくに塩害がおきてしまうおそれがあるので注意しましょう。また、海の近くに鉄筋コンクリートを建てるときにも海水がかからないように対策しておくと安心です。

●凍害

凍害は、コンクリートのなかに入り込んだ水が凍ってしまうことによって、内側からコンクリートが押し広げられることによるひび割れのことを指します。また、水が鉄の腐食を進ませ、建物倒壊の原因にもつながりやすいのです。

凍害が発生するのは、特定の環境条件が必要になります。

【凍害になりやすい条件】

・凍結がおこりやすい冬から春にかけての時期
・昼夜の温度差が激しい地域
・気温が低くなる寒冷地

以下の条件にあてはまる場所に鉄筋コンクリートの建物を建てるときには、凍害がおきないように対策を立てておきましょう。凍害を防ぐ方法で、よく取られている3つの方法はこちらです。

【凍害を防ぐための対策】

・過剰な圧力がかかるのを避けるため、適切な量の空気を含んだコンクリートを使用する
・水が入り込まないようにしているコンクリートを使用する
・吸水率の低い骨材を使ったコンクリートを使う

塩害や凍害は、特殊な自然環境のもとでおきます。ご紹介した状況下にある方は、これらの対策をすることでコンクリートの劣化を防いでいくことができますよ。

必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

コンクリートの劣化原因その③:通常の環境下でおこるもの

塩害や凍害は、ある特定の環境におかれた場合におこるものです。しかし、通常の環境下にあっても、コンクリートは劣化をおこすおそれがあります。

●乾燥による収縮

コンクリートのなかには、セメントを固めるために必ず一定量以上の水分が含まれています。その水分が乾燥によってコンクリートから抜けていくと、体積が減ったことによるひずみでひび割れをおこすのです。

この乾燥によるコンクリートのひび割れは、含まれている水分量が多いほどおこりやすいといわれています。また、気温が高くなるにつれておきやすいので、温暖化が進む現在だからこそ注意しておいたほうがよいのです。

コンクリートの乾燥を防ぎたいのであれば、石灰石骨材を使ったコンクリートを使うことをおすすめします。石灰石は乾燥したときのコンクリート収縮量を抑えてくれるので、乾燥に強いコンクリートになるからです。また、収縮低減剤や膨張剤を使って、コンクリートが乾燥したときのひずみを少なくするのも有効です。

必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

●熱による膨張

コンクリートの劣化は、高温になることによってもおこります。これだけを聞くと「え、乾燥したときとなにが違うの?」と思われるかもしれません。熱による劣化は、コンクリートの外側と内部に温度差ができることでおこるのです。コンクリートの外側が高温になることで外側だけが縮んでいくため、中側との膨張量に差ができひび割れてしまいます。

熱膨張、収縮によるコンクリートのひび割れを防ぎたいときは、温度上昇率の低いセメントで作られたコンクリートを選ぶことが大切です。また、コンクリートのなかで熱により温度変化を抑えられる材料を混ぜ込んでおくのも有効ですよ。

コンクリートの劣化原因その④:その他のもの

コンクリートの劣化原因には、ご紹介したもの以外にもさまざまなものがあります。

●災害

災害大国といわれる日本では、火災や地震によるコンクリートの劣化も考えられます。火災にあった建物は、高温の炎に包まれます。セメントは高温になると縮みますが逆に鉄筋は膨張するので、結果的にひび割れにつながるのです

また、地震による衝撃でコンクリートが損傷することもあります。地震でできたひび割れをそのままにしておくと、建物倒壊のおそれもあるため非常に危険です。

必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

●経年劣化

街中に溢れているものには、大なり小なり寿命があります。コンクリートも例外ではなく、長期間使用していると外的要因がなくても劣化することがあるのです。

コンクリートの経年劣化には、疲労や摩擦などがあります。経年劣化がでてきた場合は、コンクリートの寿命が近いということにもなるので、建て直しなどの根本的な解決を検討したほうがよいでしょう。

コンクリートの劣化原因の判断基準と予防について

コンクリートは、使っていれば必ず劣化します。しかし、その劣化を見極めるにはわかりやすい基準が必要です。ではコンクリートの劣化を見極めるときには、どのような基準で判断したらよいのでしょうか。

●コンクリート劣化原因の判断基準

コンクリートの劣化状態は、以下の要因でもって判断します。

【コンクリートの劣化判断基準】

・コンクリートが劣化したときどんな環境だったのか
・劣化したコンクリートの状況
・コンクリート劣化原因が外部なのか内部なのか

この判断基準でコンクリートの状況を確認して、ひび割れなどの劣化に対してどのように処置していくかが重要になるのです。取り返しのつかない状態になって建物を壊さなければいけなくなる前に、しっかりと劣化進行予防をしておきましょう。

●コンクリート劣化の予防策①:内部

コンクリートの劣化原因が内部にある場合、塩害や中性化がおこっていることが多いです。その場合、脱塩工法で塩分を除去したり再アルカリ化をおこなったりして中性化を予防しましょう。これ以上のコンクリート内部劣化を抑えて、なおかつ再劣化を防ぐことができます。

●コンクリート劣化の予防策②:外部

コンクリートがひび割れしてしまったとき、割れた部分をそのままにしておくとひび割れが進行してしまう可能性もあります。ひび割れを見つけた場合、そのひび割れでできた溝を埋めておきましょう。そうすることでひび割れ部分からの鉄筋の腐食を防ぎ、建物倒壊の危険を回避することができます。

必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

コンクリートの劣化による建物の倒壊が心配なら「耐震診断」を!

コンクリートの劣化は、建物にさまざまな危険をもたらします。そのまま放置しておくと建物が倒壊し、甚大な被害になってしまうおそれもあるのです。だからこそ、コンクリートが劣化したときは耐震診断を受けておくことをおすすめします。

●耐震診断でわかること

「耐震診断って、建物がどれくらいの震度の地震まで耐えられるかがわかるんじゃないの?」という方も多いでしょう。現在の耐震診断では、建物の詳細な状態を知ることができます。わかりやすくいうと、建物の健康診断ですね。

耐震診断では、コンクリートの劣化状態もしっかりと数値化されます。現に以下の内容がデータとしてわかるようになりますよ。

【コンクリートの劣化部分の調査内容】

・圧縮強度
・中性化が進んでいるかどうか
・ひび割れ
・漏水
・鉄サビ

コンクリートの劣化具合が数値としてわかれば、倒壊前に対策を立てることができます。「うちは大丈夫かな……?」と不安な毎日を過ごすよりも、しっかりと検査しておくと安心です。

●耐震診断には補助金がでることも

とはいっても「耐震診断って難しそうだし、お金がかかる……」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?じつは多くの自治体では、耐震診断が受けやすいように補助金が用意されています。

また、診断の結果改修作業が必要だと判断された場合、改修費用も補助してくれる場合があります。耐震診断後、改修をする場合は合わせて活用することをおすすめします。

必見!コンクリート状況別劣化対策|便利な耐震診断で状況把握も

まとめ

鉄筋コンクリートが劣化し、ひび割れなどができる理由にはさまざまなものがあります。塩害や中性化などの内的要因、凍害や温度差などの外的要因などがあるので、それぞれ状況に合わせた対処が必要になります。

すでにコンクリートの劣化がおきたときは、ひび割れを埋めてこれ以上劣化が進まないようにしましょう。また、塩害や中性化がこれ以上進まないように、塩分を抜いたり再度コンクリートをアルカリ性に保ったりする対策をしておくことも有効です。

もしコンクリートのひび割れを見つけたときは、耐震診断を活用してコンクリートの状態がどうなっているのか確認しておくとよいでしょう。コンクリートの修理を手際よく進めるための第一歩を耐震診断から踏み出して、安全な建物を取り戻してくださいね。

関連記事カテゴリ一覧

耐震工事の記事アクセスランキング

耐震工事の最新記事

カテゴリ別記事⼀覧

関連カテゴリから業者を探す