日本家屋というと、ふすまや障子で仕切られているイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。しかし土や砂で仕上げた壁も日本古来の建築要素のひとつです。茶室の数寄屋(すきや)建築に由来するといわれるこの壁に、日本文化のわびさびを感じる方もいるかもしれません。
ただこの土壁は年月の経過とともに劣化し、削れたりはがれてしまうことも少なくありません。放置しておくと見栄えが悪いため補修したいところですが、土壁はどうリフォームすればよいのでしょう。
今回は土壁について知るとともに、重ね塗りなど補修・リフォームする方法を見ていきます。
目次
土壁(京壁)の構造とメリット・デメリット
土壁をどうリフォームするか考える前に、まずは土壁がどのような構造になっているか、確かめていきましょう。
土壁(京壁)の構造
土壁、といっても土だけでできているわけではありません。土壁の中には芯材が埋め込まれており、壁の表面を支える役割を果たします。また両側など枠組みは柱などの木材が表面に出ていることも多いです。
土壁は竹などで格子状に組んだ芯材に、練った土を貼り付け、表面をならしつつ仕上げます。もともとは茶室に使われていた壁で、様式が生まれた京都郊外の土を使うことが多かったことから「京壁」とも呼ばれるそうです。
かつてはわらなどを一緒に混ぜることで微生物の発酵の力を借り、しっかりと土が固まる工夫をしていました。現在ではそれに代わり、化学繊維を混ぜて補強することも少なくありません。いずれにしても土だけでは固まりにくく、さまざまな材質の組み合わせになっているのです。
土壁(京壁)のメリット
土壁のメリットとして挙げられるのは「通気性」と「部分補修が可能な点」です。
古来からの土壁では微生物の力も借りて土壁を固めることから、空気の通り道となる細かい穴が多く開いています。そのため通気性を持ち、空気中の湿度を調整する役割を兼ね備えているのです。
また土壁の表面には何も塗っていないことが多く、重ね塗りや部分的な塗り直しをしてもなじみやすいことも特徴として挙げられるでしょう。合板やコンクリートの壁は補修が難しく、補修できたとしてもその跡が目立ってしまうことがデメリットです。しかし土壁は素材の色さえ合わせれば、違和感なくなじむことも少なくありません。
土壁(京壁)のデメリット
土壁のデメリットといえるのが「冬場の冷え込み」、そして「施工時間・費用」です。
土壁は熱伝導性が高いことが特徴です。夏場は比較的涼しく過ごすことができるのですが、冬場は断熱材の詰まった壁と比べると部屋が寒くなりやすいのです。通気性がよいことがあだとなり、暖房器具の効果が薄れ、てしまうことも冷え込みに拍車をかけるでしょう。
また土壁では壁を施工する際は微生物の力を借りるため、無理に乾かすとひび割れなどの原因になります。そのため徐々に固まっていくのを待つしかなく次の作業までの時間が空くことが難点でしょう。施工の時間が長くなれば、当然施工費用にも響いてきます。
土壁の劣化の兆候って?
土壁が劣化してきている兆候といえるのが「はがれ」です。
土壁は空気の入り込みやすい隅の部分からはがれてきます。劣化が進んでいないかはこうした隅の部分がはがれてきていないか、触るとすぐにはがれたりしないかなどをチェックすることが大切です。
自分で作業するなら重ね塗り!
土壁をはがれにくく仕上げるためには施工時の状況に応じて土の状態を調整し、最適な条件で仕上げる必要があります。そのため土壁の中の芯材を組み、一から塗り始めた場合土壁の材料同士がかみ合わない恐れがあるのです。
一方重ね塗りならあくまで土同士であり、壁全体が崩れてしまうようなリスクは避けられます。また部分補修としての作業もしやすいほか、作業時間も最小限に抑えられるでしょう。
土のほかにもさまざまな素材が使える
土壁の重ね塗りに使える素材は壁と同じ「土」だけではありません。たとえば漆喰(しっくい)を塗れば、鮮やかな色を楽しみつつ、風化の影響を最小限に抑えることができます。
また、土壁より機能性の高い「珪藻土」を重ね塗りする手もあるでしょう。固いケイ素(珪素)の殻を持った植物プランクトンの死骸からできており、余分な湿気や不快なにおいを取り除く効果があります。
壁紙(クロス)を貼ることも可能
土壁は塗るときの工夫によってさまざまな表情を作り出します。しかし全体的に淡い配色が多く、どうしてもほかの家具家電に合わないことがあるかもしれません。
こうしたときには土壁に壁紙(クロス)を貼ってみましょう。壁の通気性こそなくなってしまいますが、部屋の雰囲気に合わせさまざまな色・模様で工夫することができます。
安く済ませるならペンキもあり?
もっとも安く済ませる方法として挙げられるのが「ペンキ」です。表面を塗膜で覆ってしまうため土壁本来の機能や味わいは薄まってしまうものの、さまざまな色を使って個性的な表現をすることが可能です。
なおペンキを塗るときは一度下地塗りをし、そこから色を重ねていくことをおすすめします。
業者に依頼すれば状態に合わせた作業をしてもらえる
一方、業者に土壁のリフォームを依頼するメリットは「状況に合わせた作業をしてもらえる点」でしょう。
劣化していれば撤去して作り直すことも可能
土壁の劣化が進んでいる場合、重ね塗りをおこなってもすぐに内側からはがれてしまうことも考えられます。すると一度土壁をはがし、芯材を組みなおすところからはじめなければなりません。
土壁の塗り替えでは一度芯材からすべてを取り替え、確実なプロの技術で丁寧に仕上げていきます。そのため時間はかかってしまうものの、下地となる土壁の状態に影響されることなく良好な状態に仕上げることが可能です。
ただし長く持つ土壁を作るにはプロによる見極めと技術が必要不可欠。あまりにも劣化が進んでいるのであれば、一度見積もりを取ってもらい判断しましょう。
業者に土壁リフォームを依頼するときの費用
業者に土壁リフォームを依頼するときは、次のような費用相場のイメージを持っておきましょう。
作業内容 | 費用の目安 |
---|---|
土壁を重ね塗りする | 1㎡あたり5,000円程度 |
珪藻土を重ね塗りする | 1㎡あたり6,000~9,000円程度 |
漆喰を重ね塗りする | 1㎡あたり7,000~9,000円程度 |
壁紙を貼る | 1㎡あたり2,000円程度 |
その他作業 | |
壁の下塗りをする | 1㎡あたり3,000円程度 |
土壁を塗り替える(作り直す) | 1か所あたり73,000~80,000円程度 |
なお重ね塗りする際の費用は、どれだけの厚さに仕上げるかによっても変わります。分厚ければそのぶん耐久性は上がりやすくなりますが、工事費用は高くなるでしょう。また若干ながら部屋が狭くなったと感じてしまう方もいるかもしれません。
土壁リフォームの施工例
最後に、土壁のリフォームのお手本となるような施工例をご紹介します。
土壁の施工例
あえて荒めに土壁の表面を仕上げることで質感を生み出し、飾り棚の背景としてのコントラストを活かしています。
あえてコテの動きを残すことで雰囲気のある壁面に仕上げています。確かな技術を持つプロならではの壁です。
「櫛引」と呼ばれる方法で仕上げられた壁は、土の質感をより感じることができます。
まとめ
土壁には比較的耐久性があるものの、少しずつ劣化し削れていきます。こうした劣化が気になるなら一度、重ね塗りによる補強や塗り替えを考えてみましょう。雰囲気を変えたければ漆喰や珪藻土などを使ったり、ペンキ塗りや壁紙貼り付けで大きくイメージチェンジを試みるのも手です。
土壁のリフォームは自分でできる範囲の作業も多くあります。しかしその後長く使っていくことを考えて、業者に任せてみませんか。プロによる仕上げを取り入れ、生活を豊かにしていきましょう。
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