地震のニュースを聞くと気になるのが住宅の耐震性です。特に道路沿いの建物が倒壊しているシーンなどが映し出されると、木造住宅の耐震性について不安に感じることも多いでしょう。我が家は大丈夫か、と感じることも少なくないと思います。
木造住宅の耐震性確保は法律で定められています。ただ基準は地震被害を踏まえて改正されているため、建築当初の基準では耐震性が不足しているような場合も少なくありません。改正してどのような基準に変わったのか調べても、わかりにくい点もあるでしょう。
今回は木造住宅の耐震性について、特徴と法律改正などを中心に見ていきます。
目次
木造住宅の耐震性は低い?
木造住宅は鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建物と比べて、地震に弱いわけではありません。
地震によるエネルギーの伝わり方は、重量に比例します。そのため、重い建物ほど揺れやすく、地震による破壊も起こりやすいとされています。コンクリートや鉄は重い素材であるのに対し、木材は比較的軽い素材です。その点では「地震のエネルギーを受けにくい」建物であるといえるのです。
また木材自体がほかの建材と比べると「曲げの力」に強いことも、地震に強い根拠になります。木材はコンクリートなどと比べると圧縮や引っ張りの力に強く、変形しながら地震のエネルギーを逃がします。加えて木造の工法は、地震国である日本で伝えられてきたものです。地震へのノウハウが古くより蓄積されているといえます。
それだけでなく、近現代においては大地震で被害が発生するごとに法令の改正が行われているため、ほかの建物と比べて、決して木造建築が耐震性能において劣るといったことはありません。
近年、木造住宅の倒壊が目立つ理由とは
鉄筋コンクリート造や鉄骨造の材料はコンクリートを除き、基本的には工場生産です。そのため一定の品質を維持して建物を組み立てることができます。一方、木造住宅(特に従来工法)の住宅は現場での加工が中心になります。そのため品質にばらつきが出る部分があり、設計通りの構造にならないことも多いです。こうした要素が耐震性にも影響しているのではないかとみられています。
シロアリや腐食による構造の弱体化が起こりやすい、耐震基準が変わる前の建物の補強が進まないなどの要因が加わり、「木造住宅は地震に弱い」というイメージにつながっているのでしょう。
耐震性を左右するもの
一般に木造住宅の耐震性は低くないとされていますが、個々の部分の構造によって耐震性は変わってきます。
屋根の重量
一般に屋根が重いと重心が上がるために建物が揺れやすくなり、耐震性が下がるといわれています。また地震による瓦の落下の対策も行う必要があるでしょう。しかし屋根が軽くなると台風など強風には弱くなります。また屋根の重さよりも住宅の構造が問題だという見解もあり、一概に屋根を軽くするかは難しい問題です。
基礎
基礎は建物を支える土台であり、この基礎がしっかり作られているかによって耐震性も大きく変わってきます。古い住宅では伝統的な基礎として玉石基礎や礎石と呼ばれる、柱を石のくぼみにはめ込んで支える工法が取られてきました。しかしこの構造は耐震性としては弱いとされており、現在はコンクリートによる布基礎やべた基礎を採用する住宅がほとんどです。
この布基礎とべた基礎を比較すると、建物の下前面にコンクリートを張って支えるべた基礎の方が、布基礎より耐震性が高いといわれています。ただこれも現場での作業によるため、設計通りの施工が大切になってきます。
壁
木造住宅は「耐震壁」と呼ばれる壁をバランスよく、適切な量を配置することで強度を高めています。また2階建ての場合、2階の壁の真下に1階の壁があれば重量を支えるのに有利です。この割合を示す「直下率」を見ることも大切です。
金物
構造を作る木材同士や、基礎と木造の骨組みをつなぐ部分には「金物」が使われています。適した位置に適した金物が配置されていることが、耐震性にもつながってきます。
腐食
シロアリや腐食が構造を支える木材に及ぶと、耐震性も低下します。そのためシロアリなどの対策が取られているかどうかや、床下に溜まりやすい湿気をどう逃がすかも耐震性には関わってくるといえます。
地盤
地盤は土地の揺れやすさに関わってきます。特に物体は揺れやすい周期というものがあり、この周期が一致すると大きな揺れになりやすいです。木造住宅の場合、水分量が多いなど軟弱な地盤は揺れが大きくなるといわれています。
地盤について、調査の方法や対策などは「主な地盤調査の種類は3つ!地盤を知って地震対策に役立てる」もご参照ください。
耐震補強で行うこと
耐震補強工事では建物自体の骨格を変えるのは困難です。そのため耐震性を左右する要素を改善することで木造住宅の耐震性を高めていきます。
屋根の重量
屋根の重量を軽くするためには、軽量瓦や金属製のスレートに置き換える方法があります。また現在は自信に強い特殊な瓦の葺きかたを施工している場合が多いです。屋根を葺き替えるだけでも一定の効果が見込めるでしょう。
基礎
耐震性に乏しい基礎の場合は、基礎の作り変えを行います。また同時に基礎と木造構造の土台を金物で固定して、基礎から建物が動きにくくすることが多いです。
壁
既存の壁に筋交いを追加するなどの補強や、壁を追加することでエネルギーに耐えられる構造にするなどの工事を行います。耐震性が低いとされる住宅であっても、この壁に対する工事が中心になることが多いでしょう。
「1981年」「2000年」は木造住宅のターニングポイント
壁のバランスなどは専門家でなければ詳しいことはわかりません。しかし、木造住宅の耐震性診断は建てられた年月を確認することからはじめます。建築時の書類が見当たらない場合でも法務局で登記簿謄本を取得すれば確認できるので、まずはこの年月を見てみましょう。
建築年月は老朽化の判断というよりは、建築基準法や施行令の改正があった「1981年6月」「2000年6月」以前に建築確認がされているかどうかを見ます。1950年に制定された建築基準法は、建物の仕様を決めるうえで大切な法律です。耐震性の基準についても1948年福井地震をもとに決められているのですが、基準に沿ったものであっても地震が起こると大きな被害となりました。そのため建物の損壊を防いで命を守るため、幾度も改正が行われて基準が強化されています。つまり、改正内容に沿ったものであるかを見ることは耐震性の確認にもつながるのです。
【4.1.1981年の改正内容】
1978年の宮城沖地震を受け新耐震基準が設定されたのが、1981年6月の改正です。自治体の木造耐震診断補助も新耐震基準以前施工の住宅が対象となっており、この改正前に建てられた建物は積極的に耐震診断を受けるべきでしょう。
改正のポイントは、震度5程度の中規模地震で「倒壊しない」という基準が「ほとんど損傷しない」に改められるとともに、震度6強から7にあたる大規模地震でも「倒壊・崩壊しない」という基準が追加されたことです。
この基準強化の成果として、1995年の兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の倒壊率変化があげられます。この地震では揺れが震度7に達したと推定されていますが、新耐震基準を満たすかどうかで大きく倒壊率が変わったというデータがあります。
【4.2.2000年の改正内容】
1998年から2000年6月にかけて3回にわたり建築基準法や関連法令が改正され、材料や工法・寸法を指定する「仕様規定」から「性能規定」へ建築基準が改められました。全ての材料・工法を指定するのに時間がかかることも改正の理由ですが、これにより建物がどのような機能を持っているのかがわかりやすくなっています。
加えて2000年10月には「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行され、「新築住宅の住宅性能表示制度」がはじまりました。これは住宅選びの基準を具体的に作ろうという取り組みで、耐震性についても「耐震等級」として評価されます。
耐震等級は壁量の計算やバランス、地域の地震係数などを参考にしつつ1~3の範囲で決められます。目安としては等級1が建築基準法の規定通りの性能で、等級2が1.25倍、等級3が1.5倍の強度を持っているとされます。もちろん建築基準法の耐震基準は「倒壊させないため」の規定であるため、等級3であっても地震後に住宅に住み続けることのできる保証はありません。
しかし2016年の熊本地震では大規模地震が多発したため、等級の低い住宅では新耐震基準を満たしていても2度目以降の揺れで倒壊する場合が少なくありませんでした。そのため、等級の高い住宅を選ぶことは命を守ることにつながるでしょう。このように新築時の「耐震等級」を一度確認してみるは、耐震性を確認する1つの目安になります。
まとめ
木造住宅の耐震性はけっして低くはありませんが、地震被害を踏まえた新しい基準に適合するかを確認することで住宅倒壊を防ぎ、命を守ることにつながるでしょう。そして基準に合わなければ耐震補強工事などで住宅の耐震性を高めることも必要になってきます。建築年月の確認は比較的簡単に行えるため、まずはそこから地震に対する取り組みを始めていってみてはどうでしょうか。
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