あらゆる人々の日常生活或いは社会生活を安全で便利にする為の道具の一つとして、手すりが広く使われています。特に、住宅や公共施設での手すりの設置は、自然なことになってきました。しかし、手すりの必要性や役割が十分わかっていないために、適切な場所に手すりが設置されていない、というケースも多いのが実情です。
今回はそんな「手すり」についてお話ししたいと思います。
手すり設置の法的根拠
普段の生活の中でよく見かける手すりですが、適当に設置されている訳ではありません。
私たちが利用している建築物は、「建築基準法」という法律で定められた基準を遵守して造られていますが、法文の中には「手すり」についても記述されており、基本的にはこれに準じて設置するようになっています。
建築基準法による手すりの法的規制は次のようなものです。
【階段の手すり】
建築基準法施行令第25条(階段および、その踊り場の手すり)
・第一項
「階段及びその踊場の両側に側壁又はこれに代わるものがない場合においては、手すりを設けなければならない」
・第二項
「階段の幅が3メートルをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが15センチメートル以下で、かつ、踏面が30センチメートル以上のものにあってはこの限りではない」
・第三項
「前二項の規定は、高さ1メートル以下の階段部分には適用しない」
【一般の手すり】
建築基準法施行令第126条(屋上広場等)
・第一項
「屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり壁、さくまたは金網を設けなければならない」
要約すれば、階段においては高さが1mを超えて側壁や支えになるようなものがない場合は手すりを、2階以上のバルコニーや屋上部分においては、高さが1.1m以上の手すり(又は柵やフェンス等)を必ず設けなければならない、ということになっています。
建築物を建てる際は、「確認申請」という審査によって、手すりについても基準がクリアされているかのチェックがされますが、施工ミスで取り付けられていない、「見栄えが悪い」「邪魔」と言って取り外すことは違法となりますので、自分の建築物の該当する部分がしっかり施工されているか、一度確認をしてみましょう。
手すりの種類
偏に「手すり」と言っても、私たちが利用する手すりには大きく3種類ありますのでご紹介しましょう。
1)転落防止用手すり
主にバルコニーや屋上部分、踊り場等、高所の周囲に設置される手すりです。誤って転落するのを防止するのに役立ちます。
2)歩行補助用手すり
主に廊下や階段、スロープ等に設置される長尺の手すりです。手すりを握りながら身体を安定させて歩行するのに役立ちます。
特に、歩行に難がある方、視覚に障害がある方の為には、滑らかに連続していることが望ましいです。
3)動作補助用手すり
主に玄関、浴室、トイレ等、段差を越えたり、座ったり立ち上がったりする部分に設置される手すりです。体重を支えて次の行動をするのに役立ちます。
必要となる動作に応じた形状の手すりを設けることが望ましいです。
このように、手すりはただそこにあればいいのではなく、用途によって適切に種類を選ぶ必要があります。
手すりの設置例と注意点
では、具体的に各手すりの設置例と設置の際に注意したい点を見ていきましょう。
◆転落防止用手すり
施工例) バルコニー・屋上手すり
注意点)
・建築基準法通り1.1m以上の高さの手すりを設置しましょう。
・幼児の転落の危険性がある為、足掛かりになる横格子は控えましょう。また、手すり子の間隔
も10cm以下にしましょう
◆歩行用補助手すり
施工例1) 廊下手すり・階段手すり
注意点)
・しっかり握れるよう手すりの断面は直径34~40mmの円形・楕円形を選びましょう。
・途中で途切れることなく連続して設置しましょう
・高さは床から75~85cmが目安となりますが、お年寄りや小さな子供がいる場合は
60~65cmの高さにもう1段 設置しましょう
・手すり設置の分廊下は狭くなるので、手すりにぶつからないように注意しましょう。
施工例2) スロープ手すり
注意点)
・車椅子の方でも使えるように、高さは床から75cmの位置に設置しましょう
・危険防止のため、手すりの端部は45cm以上水平に伸ばし折り曲げましょう
◆動作補助用手すり
施工例1) 玄関手すり
注意点)
・上下・水平方向の体重移動を支える為、上り框から75~80cmの高さに縦型またはL型の手すりを設置しましょう
施工例2) トイレ手すり
注意点)
・洋風大便器の場合、座ったり立ち上がったりする体重の上下移動を支える為、便座から20~25cmの高さにL型手すりを設置しましょう
・和風大便器の場合、側面よりも正面にL型手すりを設置しましょう
・小便器には両サイド、正面にも手すりを設置しましょう
施工例) 浴室手すり
注意点)
・浴室では足元が滑りやすく、転倒事故が起きやすい場所です。風呂の形状に応じて、縦型・横型・L型を併用して設置しましょう
「帯に短し襷に長し」という言葉があるように、折角設置しても中途半端で用を成さないようでは意味がありません。用途をしっかり把握して、適切な位置と高さに手すりを設けるようにしましょう。
手すりに関する事故例
手すりを設置しているからと言って、過信するのは危険です。過去には手すりに関連した事故例もいくつかあります。
◆事故例-1
住宅の2階に設置された窓手すりに幼児が乗り出したところ、縦格子が外れ落下。幸い幼児は軽傷。約20年の使用によって腐食した固定ネジが、幼児の体重に耐えられず破損したのが原因と考えられています。
◆事故例-2
軽介護者が介護ベッドに取り付けられたL型手すりに掴まり立ち上がろうとしたところ、固定
していたはずの手すりが動き、転倒して骨折。固定金具の破損が原因と考えられています。
◆事故例-3
仕事のためスマートフォンの画面を見ながら階段を下りていた男性が、階段を踏み外し転落。全治2ヶ月の重傷。足元の不注意が最大の原因ですが、階段を上る人が手すり側にいたため、手すりのない側壁を下りていたのも一因と考えられています。
このように、手すりが設置されている場合あっても事故は起こり得ます。
事故例-1、2についてはメンテナンスをしっかり行っていれば防げた事故と言っていいでしょう。それとは別に、事故例-3のように、何かをしながら危険な場所を歩行する等、手すりを正しく使わないことによる事故例も非常に増えています。このような事故に合わない為に、何故そこに手すりが設置されている意味をよく考えて、日頃から注意したいものです。
手すりのD.I.Yに挑戦
近年は「D.I.Y」ブームもあって、家庭の様々な付属品を手作りする方も増えてきました。手すりの取付けは比較的シンプルですので、腕に自信がある方は是非チャレンジしてみては如何でしょうか。
手すりD.I.Yのステップは以下のようになります。
ステップ1:材料・道具の準備
用意するものは、
1)手すり材料(手すり棒と固定金具)
2)メジャー(高さを計測)
3)のこぎり(手すり長さの調節)
4)下穴用キリ(壁への穴あけ)
5)電動ドライバー
ステップ2:手すりの位置の決定
手すりには用途によって適切な設置位置と高さがあります。どの位置にどの高さで設置すべきかよく確認をして決定しましょう。
ステップ3:固定する柱位置を探す
内壁の多くは石膏ボードで造られていますが、一重張りの場合の石膏ボードの厚みはわずか9.5mm又は12.5mm。ただボードに固定しただけでは、体重を支えることが出来ず、すぐに壊れてしまいます。手すりは、石膏ボードを張り付けている間柱にしっかり固定するようにしましょう。壁をコンコンと手で叩いてみて軽い音がすれば壁のみ、音が鈍く固い部分があれば間柱と考えられます。手で叩いても判断が出来ない場合は、市販されている下地探しの専用工具を利用するのがおすすめです。
シンワ測定 どこ太 L マグネット付 78610
ステップ4:手すりの取付け
手すりの取付位置・高さが決まったら、穴を開け固定金具(ブラケット)を仮止め。ブラケット間の距離を測定して手すり棒をカット。一旦ブラケットを外して手すり棒を挿し込み、再度ブラケットを固定して完成です。
手すり増設リフォームをしましょう
近年は、高齢化の問題が深刻になっており、総務省の統計調査によれば、人口の4人に1人が65歳以上の高齢者だと言われています。
今は不自由なく暮らしていても、年を重ねていくにつれ不便に感じることがきっと増えてくることでしょう。特に高齢になるほど、「安全に歩く」、「快適に歩く」という私たちの基本的な動作が困難になってきます。そんな時に役立ってくれるもの一つが「手すり」です。
私たちの生活の周りには、ごく自然に手すりが設置されていますが、実用性を考えて、或いは将来的なことも考慮して、適切に増設することが、今後大変重要となってくると考えられます。
是非今こそ、手すりのリフォームをして、安全で便利な家づくりをしてみましょう。
手すりの設置には法的規制がありますが、定められているのはごく基本的なことだけで、該当しないそれ以外の部分に設ける手すりについては、設計・施工業者の判断に委ねられることになります。
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