杉の木の花粉による影響は年々拡大し、いまや花粉症は国民病というレベルにまで達しています。現在、国民の3人に1人が悩まされており、国の年間医療費の負担額は2,800億円以上とまで言われているようです。
そんな杉の木ですが、伐採して数を減らせば花粉症に苦しむ人が減るのではないか、と思いますよね。しかし、そんな簡単には伐採できないようです。
今回は杉の木を伐採できない理由について、まとめました。はたして、今後花粉症に悩まされなくなるときは来るのでしょうか。
目次
杉の木が多く植えられているのはなぜ?
そもそもなぜ日本には多くの杉の木が植えられているのでしょうか。
杉の木による花粉症の患者数は、日本で1,500万人以上や国民の3分の1などといわれており、杉の木の存在はもはや公害ともいえる状況です。
日本にこれほどまで多くの杉の木が植えられているのには、以下のような理由があるようです。
(1)戦後の建て直しのため
第2次世界大戦後、日本の多くの家屋は焼き払われ建て直す必要がありました。
住宅すべてを建て直すには大量の木材が必要になので、木材として使いやすく成長する速度が速い杉の木が大量に植えられるようになったのです。
(2)高度経済成長期の建設ラッシュ
1960年代の高度経済成長期には建設ラッシュが起きました。
そのため木材の需要が大幅に高まり、さらに杉の木が大量に植えられるようになりました。
現在は杉の木の需要がない?
杉の木は時代の流れや需要の大きさによって、1940年代~1960年代に大量に植えられたことがわかりました。
しかし現代においては、杉の木の需要はとても小さくなったようです。
また、輸入木材が多く使われるようになったので、杉の木自体の価値も下がっています。
ではなぜ、需要がない杉の木を伐採しないのでしょうか。次の章を見てみましょう。
杉の木は伐採しないのか
国民の多くの悩みの種になっている杉花粉症ですが、木を伐採すれば花粉症になる心配もありません。
しかし日本には、杉の木を伐採できないさまざまな理由があるので、国策などによって簡単に杉の木を伐採することができないのです。
杉の木を伐採できない理由を見ていきましょう。
伐採できない理由① 林業が成り立たない
先ほど杉の木自体の価値が下がっているといいましたが、杉の木の価値は国内最安値ともいわれているくらい価値が非常に低いです。
そのため、伐採したとしても買い手がおらず、伐採する際の費用や人件費をまかなうことができないので、結果的に赤字決済となってしまいます。
伐採できない理由② 山林の所有者の許可がとれない
杉の木は山林に植えられますが、山林は個人が所有していることも多いです。
所有者が杉の単価の面までも考慮して許可をしてくれた場合は伐採できるのですが、そもそも所有者の行方がわからないこともあります。
また、山林は相続税がまともにかかるので、死んだ前所有者の名義のまま放置されていることもあるようです。
伐採できない理由③ 人手不足
今や林業従事者は50,000人を切っているといわれています。
またそのほとんどが高齢者のため、杉の木すべてを伐採するのに必要な人員が確保できない状況にあります。
伐採できない理由④ 杉の木は災害対策にもなる
杉の木は山の斜面などに植えられているとき、土砂崩れなどの自然災害を食い止める効果があります。
そのため、植えられている状態そのものが災害対策になっている現状なので、杉の木の伐採に踏み切りにくいのです。
伐採できない理由⑤ 温暖化を防いでいる
杉の木は二酸化炭素の吸収率がよいです。
そのため大量に植えられていると温暖化を防止する役割があります。
日本にはヒノキやカラマツ、クヌギなどの木がありますが、それらより杉の木のほうが吸収率がよく、また樹齢50年くらいまで吸収率が衰えないのも特徴です。
花粉の少ない杉が開発されている
さて、とても多くの国民が困らされている杉の木ですが、ご紹介した理由からなかなかすべてを伐採することは難しいとされています。
しかし最近では花粉症対策として花粉の少ない「無花粉杉」というものが開発され、植え替えがされ始めているようです。
この植え替えは1999年からスタートしていますが、450万ヘクタールある杉の木の植え替えはまだまだ進んでいません。
植え替えは間に合わない?
この植え替えの取り組みは、このまま続けていくことで平成32年時点で10万本の植え替えを目標としています。
しかし残念ながら、日本に植えられている杉の木は約90億本あるといわれているので、同じペースでおこなっていては数十年単位でもすべての杉の木を無花粉杉に植え替えることは難しいでしょう。
自分でできる花粉症対策
杉花粉症の方はケアされていると思いますが、自分で花粉症を防ぐことがいちばんの対策といえます。
この記事の最後に、花粉症対策をできるだけ多くご紹介したいと思います。
以下の対策の中には、今まで知らなかった対策もあるかもしれないので、気になる方法があればぜひ試してみてください。
洗濯による花粉症対策
花粉症対策で洗濯のしかたに気を付けることはとても大切です。
方法によって家に持ち込む花粉の量を減らすことができます。
まず、花粉症シーズンでは外で干すのをやめ、部屋干しが最適です。しかし「部屋干しのにおいが気になる」など抵抗がある方も多いでしょう。
外で干す場合でも工夫することができます。
干す時間帯は午前中がよいです。また、午前中に干した洗濯物は午前中に取り込む必要があります。
その理由は、花粉の飛散量のピークが12時~15時だからです。この時間帯を迎える前に洗濯物を取り込むとよいでしょう。
取り込んだ際には、部屋の中で掃除機をかけて花粉を取り除くことも効果があります。
また、花粉は静電気に引き寄せられるので、静電気を抑える柔軟剤を使うこともおすすめです。
衣服でできる花粉症対策
普段着る衣服には、花粉が付着しやすい服の種類があります。
外出したときに衣服に付着する花粉の数は1時間で数万個ともいわれていますが、とくにウールセーターだと1時間に7~8万個の花粉が付着するといわれています。
また、綿シャツであっても2~3万個の花粉が付着するので注意が必要です。
花粉症シーズンでは、ポリエステルやナイロンを使った素材の衣服を着用するとよく、他にもビニールやレザータイプの衣服もおすすめです。
外出時には衣服に気を付けるほか、帽子や眼鏡を着用し、専用のマスクやマフラーを付けることも大切です。
生活習慣に気を付ける
花粉症シーズンではとくに、規則正しい生活をして生活習慣に気を付けるとよいです。
生活習慣がよくなると、体の免疫やホルモンバランスが整うので花粉症になったとしても症状を抑えることができるでしょう。
また、帰ったらかならず手洗い・うがいをすることも大切です。とくに手は入念に洗っておきましょう。
鼻うがいをする場合は生理性食塩水を使うのがいいですよ。
まとめ
日本に杉の木が多く植えられているのには、時代の流れや需要の大きさなどの理由があります。
杉の木によって多くの人が花粉症に悩まされていますが、杉の木を伐採するのはさまざまな理由があって難しいようです。
杉の木がなくなることを待つのは時間がいくらあっても足りないので、自分で花粉症対策をする必要があります。
花粉症対策には方法がいくつかありますから、自分に合った方法を活用しましょう。
伐採を依頼できる業者や料金
依頼できる業者や料金について、詳しくは「生活110番」の「伐採」をご覧ください。
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