現場で作るコンリートの固さは、気温や使う材料によっても大きく左右されます。しかし、コンクリートの品質のずれは、建物の耐久性・耐震性にも大きく影響してくるのです。安定した品質のコンクリートが求められ、現在でも改良が続けられています。
工場であらかじめ材料を練り合わせて現場まで運ぶレディーミクストコンクリート、通称「生コン」も安定した強度を作り出すのには必要不可欠です。その生コンにはいくつかの基準が設けられており、その基準のひとつに「スランプ値」というものがあります。
今回は生コンのスランプ値について解説していきます。生コンの品質基準を知って、品質の高いコンクリート打設を実現させましょう。
目次
スランプはコンクリートの固さを示す値
コンクリート(生コン)の品質基準の1つである「スランプ値」は通常、単位「cm」で表されます。これはコンクリートの固さを示すとされていますが、いったいどのように測っているのでしょうか。
数値が大きいほどコンクリートは柔らかくなる
固まる前のコンクリートはスライムのような粘性を持っています。コンクリートを「練る」という表現からも、その性質は分かるでしょう。柔らかいコンクリートは支えるものがなければ「下へ」「横へ」と流れていってしまうため、コンクリートで壁を作るときには木や発泡スチロールで「型」を作る必要があります。
この流動性を確かめるのが「スランプ試験」と呼ばれる品質確認作業です。底面の直径20cm・上面の直径10cm・高さ30cmのバケツをひっくり返した形の容器(スランプコーン)に固まる前のコンクリートをすき間なく詰めた後、形を崩さないよう型を取り除きます。するとコンクリートは重力によりゆっくりと下へつぶれていくのです。このつぶれた高さの差を「スランプ値」として計測されます。
つまりスランプ値が大きいほど「より下へつぶれていった」、つまり粘性が低く柔らかいコンクリートであるといえるのです。
スランプ値以外に生コンの品質を決める要素
コンクリート(生コン)の品質を決めるのはスランプ値だけではありません。代表的な基準として「コンクリートに含む空気の量(空気量)」「塩化物を含む量(塩化物含有量)」「強度」の3種類があります。それぞれの意味について確認していきましょう。
コンクリートに含む空気の量(空気量)
コンクリートを練るときには空気を含ませるように作業します。するとコンクリートは柔らかくなるだけでなく、コンクリート内の水分が凍結したとき、水から氷になったときの容積が大きくなることによるコンクリート破壊を防止することができます。
しかし空気が多すぎるとコンクリートが弱くなるだけでなく、固まったとき縮んでしまうといった弊害もあるのです。そのため通常のコンクリートでは含まれる空気の量が3.0~6.0%になるよう、基準が設定されています。
塩化物を含む量(塩化物含有量)
コンクリートの主な原料は砂利やセメント、それに水です。とくに砂利は水が上流の岩肌から削り取り、下流に運ばれるにつれて小さくなっていったもの。かつては川から取っていましたが、砂利が取れる場所が少なくなってきたことから今では海中の砂を採取しています。
しかし海中の砂には当然ながら海水の塩分(塩化物イオン)が多く含まれます。海岸沿いの建物や車では「塩害」と呼ばれる、金属がさびやすくなってしまう現象が有名でしょう。コンクリートの場合も同様で、砂利に塩分が多く含まれるとコンクリートに入れる鉄筋の強度が落ちてしまいます。
そのためコンクリートには塩化物を含む量の基準が定められており、原則として0.30kg/㎥が限度とされているのです。
強度
コンクリートはときに何百mもの高さのビルを支えるのに使われる場合もあります。そのとき重要なのが「コンクリートがどのくらいの力の圧縮に耐えられるか」です。生コンなどコンクリートを作るときには、強度試験もおこなわれています。
このとき温度など固まる条件を統一するため、強度試験に使うコンクリートを固めるときには「水温18~22℃の水中で」という条件が加えられます。単位は「N/㎟(1平方ミリメートル当たりに何N【ニュートン】の力を加えることができるか)」となっており、60年使用を前提とした一般的なコンクリートで「18N/㎟」、100年使用を前提とする場合「24N/㎟」、それ以上の場合は「30N/㎟」がコンクリートの一般的な耐久設計基準。生コンの品質基準として使われる場合は、この数値に「+3N/㎟」された値が利用されます。
スランプ値の大小は施工にどう影響する?
ここまで、生コンの品質基準として使われるいくつかの値をご紹介しました。では「スランプ値」に関しては、その大小が施工にどのように影響するのでしょうか。
スランプ値が大きいとき
スランプ値が大きければ「柔らかい生コン」である、ということはスランプ値を測定する試験方法からもわかったのではないでしょうか。コンクリートが柔らかければ奥までスムーズに流れていくため、コンクリート自体は中までしっかりと詰まった、密度の高いコンクリートに仕上げることができるのです。
しかし柔らかいということは、生コンの中に入っている砂利などの粒が比較的少ないということにもつながります。そのため均一になるようかき混ぜなければ重い砂利などが沈み、成分が分離してしまうおそれもあるのです。
スランプ値が小さいとき
スランプ値が小さいということは流動性が低いということ、砂利など粒の密度が高いことから一般的に固いコンクリートに仕上げることができます。しかし鉄筋などが入っているとなかなか網目の奥まで入っていかず、作業しにくいというデメリットも出てくるでしょう。
またコンクリートの硬化は含まれる成分と水の反応により進みます。もともと固めのコンクリートであることから、使用できるまでの期間も短く済む傾向があるのです。
建築用生コンのスランプ値標準は「12cm」!
現在生コンはさまざまなスランプ値のものが販売されています。このうち建築用に使われる生コンの多くは「12cm」となっているのです。ではなぜ、このスランプ値が標準になっているのでしょうか。
かつては8cmが基準値だった
建築業界で標準になることが多いのが、行政の依頼する「公共工事」です。公共工事は事前に細かく条件を設定し、その条件を基に複数の建設会社が請け負う価格を決める「入札」になる場合が多くなっています。
この公共工事に使われるコンクリートのスランプ値の基準値として一般的だったのが「8cm」なのです。これはかつて「コンクリートを柔らかくするには水の量を増やす必要があり、強度が落ちてしまう」といった事情もありました。
耐震基準改正による状況の変化
しかし1995年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)以降、建物に求められる耐震性は高くなりました。コンクリートは「押す力には強いが、引っ張る力やねじれに弱い」という性質があるため、これらを補強するには内部に入れる鉄筋の量を増やす必要があります。しかしスランプ値の小さいコンクリートではなかなか鉄筋の間に入っていかず、作業効率が落ちるという問題が出てきたのです。
コンクリートを柔らかくする技術も「化学混和剤」の開発が進み、品質を維持したまま施工できるようになった面もあります。実際には協議のうえ、強度の維持を前提に現場に合わせることも増えていました。そのため基準値「8cm」を見直すことになったのです。
現在は基準値を設けず、参考値を設定
現在の公共工事発注では「基準値」ではなく、算出の際の「参考値」としてスランプ値が定められています。この参考値として使われているのが「12cm」です。そして施工時には「含まれる空気の量」「含まれる水の比率」などによって管理されるようになりました。
これらの事情がスランプ値の標準値が8cmから12cmに移り変わった背景として挙げられます。コンクリート工事で生コンを使う場合は、一度見積もり書に記載されているスランプ値を確認してみてくださいね。
まとめ
今回は生コンのスランプ値を中心に、基準となる数値について詳しくご紹介しました。どのような場所・環境で生コンを使うかによって適した基準値が異なることから、実際にはさまざまなスランプ値のものが販売・利用されています。コンクリート工事の施工を依頼するときにはどのようなものが利用されているか、見積もり書などを参考に調べてみましょう。
生コンを依頼するような品質を求めるコンクリート工事は大規模になることが多く、かつ固まるまでのリミットが短いことから個人での作業は難しくなります。こうした作業はコンクリート工事のプロとも相談し、最適な作業につなげていきたいところですね。
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