
手軽にパンやピザを作りたいのであればオーブンでもできますが、少しこだわりたければ石窯で本格的に焼きたい、と感じることもあるでしょう。こうした石窯作りに使われるのが耐火セメントや耐火コンクリート、耐火レンガです。
しかしこうした「耐火」とつく材料としては主に「セメント」「コンクリート」「モルタル」「レンガ」と挙げられ、とくにレンガ以外には区別がつかない、という方もいるでしょう。これら3種類の違いとはいったいどういうものでしょうか。
せっかく手間ひまかけておこなうDIY、失敗はしたくないものです。今回は耐火セメントや耐火コンクリート・耐火モルタルの違いについて確認しつつ、実際の使い方についても見ていきましょう。
目次
耐火セメント・コンクリート・モルタルとは
耐火性があるセメント・コンクリート・モルタルについて説明していきます。
まず、それぞれが別のものであることはご存知でしょうか。
これらは呼び分けがあいまいな場面が少なくないので、「セメントとコンクリートって同じじゃないの?」など混同してしまうこともあると思います。
はじめにお伝えしたいのが、この中でセメントのみが別物だということです。
セメントは実は粉末であり、多くの方がイメージする固形のものではありません。そして粉末のセメントは、コンクリートやモルタルの材料となります。
粉末のセメントに水や他の材料と混ぜたものが、コンクリートやモルタルです。それぞれは以下のように構成する材料に違いがあるので、これを機に別々のものだという認識を持っておきましょう。
セメント :ケイ酸三カルシウム・ケイ酸二カルシウム・カルシウムアルミネートなど
コンクリート:砂・砂利・砕石(粗骨材)・水・セメント
モルタル :砂・砕石(細骨材)・水・セメント
それぞれ配分の割合は違いますが、コンクリートは粒の大きな材料を混ぜるので、混ぜた後もボソボソとした凸凹の仕上がりになります。それに対してモルタルは砂など細かい材料を混ぜるので、混ぜた後でもなめらかなペースト状に仕上がるのが特徴です。
インスタントセメントについて
インスタントセメントという商品が市販されていることがあります。すぐに使えるセメントと訳すことができますが、インスタントセメントにはあらかじめ砂や細骨材が混ぜられているので、水と合わせればモルタルとしてすぐに使うことができます。
コンクリートとして使うには砂利や粗骨材を混ぜる必要があるので、どちらかといえばモルタルよりの商品といえます。
耐火性のあるセメント・コンクリート・モルタルについて
セメントがコンクリートやモルタルの素材だと言いましたが、それは耐火性がある場合も同じです。
セメントには耐火性に優れた種類があり、代表的な耐火セメントとしてはアルミナセメントが挙げられます。
このアルミナセメントをはじめとする耐火セメントを素材とするとコンクリートやモルタルは、耐火コンクリートと耐火モルタルに変わります。
セメントに石灰石・ボーキサイトなどを混ぜたもの。
普通のセメントよりも固まるのが早いが値段が高くなるので、早期に強度が必要な場合や耐火性が求められる場合に使われる。
1,000度以上の熱に耐えられる点が特徴。
ちなみに、耐火用でないセメントでは、ポルトランドセメントという種類がもっとも一般的なようです。
ポルトランドセメントはシリカ・アルミナ・酸化鉄などを含んでいます。
とくに耐火性が必要でない限りは、このポルトランドセメントを使用するとよいでしょう。
耐火コンクリートと耐火モルタルはどう使い分ける?
ここまで読み進めた方は、セメントだけ異質なものだと認識して頂けたかと思います。
しかし、耐火コンクリートと耐火モルタルの違いについては目立った違いがわからないと思います。
先ほどコンクリートがボソボソとしていて、モルタルがペースト状だとご紹介しましたが、この違いは建設において大きな違いとなります。
この2つが固まったとき、粒の大きな素材を混ぜているコンクリートの方は高い強度を持ちます。一方モルタルはそこまでの強度がなく、大掛かりな建設などではコンクリートの補助剤として使われることが多いです。
つまり、コンクリートは建築物そのものに使われ、モルタルはコンクリートの隙間を埋めたり補強したりする左官作業に使われるという違いがあるのです。この違いも耐火性が付加したときにそのまま引き継がれます。
耐火モルタルは熱を加えないと固まらない?
通常のコンクリートやモルタルは、放っておけば化学変化によって(水が抜けていくのではなく、水と結びつく)しだいに固まっていきます。耐火コンクリートについても同様です。
しかし、耐火モルタルに関しては放っておくだけでは固まりづらく、固まるのにかなりの時間がかかってしまいます。
耐火モルタルをすぐに固めるためには、800度以上の熱を加えなければなりません。
そのため、耐火モルタルは素人が固めるのはとても困難で、DIYなどで使うときには耐火コンクリートのほうがおすすめです。
耐火コンクリート・モルタルの使い方
耐火コンクリートと耐火モルタルの使い方をご紹介していきます。
まず、どちらも使うには大きめの容器で材料を混ぜなければいけません。
混ぜるための容器は専門用語で舟と呼ばれます。
使い方
耐火セメントに規定の材料と既定量の水を加え混ぜ、ミキサー等を使用して撹拌(かくはん)します。撹拌後は必ず30分以内で使用するようにしましょう。
通常の耐火セメントは20度以上の気温であれば、24時間前後で硬化し始めます。
コテやコテ板を使うと便利!
混ぜ終わった耐火コンクリート・モルタルは、コテとコテ板を使うのがおすすめです。
まずコテ板に必要量の耐火コンクリート・モルタルを乗せ、コテで必要な箇所に塗っていきます。
また、コテやコテ板だけでなくチューブを使ってもよいです。
チューブを使うとパティシエが生クリームを絞るように耐火コンクリート・モルタルを流し込むことができます。
おすすめの耐火コンクリート
さて、先ほど耐火用の材料として、とくにDIYなどで利用するなら耐火コンクリートがよいとご説明しました。
実は耐火コンクリートには、多くの人が利用するとても人気の商品があります。
それは、AGCセラミック会社の「アサヒキャスター」という耐火コンクリートです。
ちなみにメーカーによっては、耐火コンクリートのことを不定型耐火物と呼ぶこともあります。
後でDIYで石窯を作る方法を取り上げていますが、このときもアサヒキャスターを使うのがおすすめです。
DIY作業で使うのに人気のある商品です。
自作でコンクリートやモルタルを作るためには配合の割合などを考えなければなりませんが、この商品は水以外の材料がすでに混ざっています。
耐火コンクリートをレンガの接着に使うときの注意点
耐火コンクリートを使えば石窯などの建築物を作ることができますが、例えば石窯でもドーム型やかまぼこ型などを素人で作るのは難しいです。
作り方は次でご紹介していますが、レンガを使った箱型の石窯などを作るのは素人でも簡単です。
その場合、耐火コンクリートは接着剤としての役割を果たします。
そして使うときには注意点があり、それはレンガを濡らしておくことです。
レンガを濡らさずに耐火コンクリートを使用すると、レンガが設置面から水分を吸い取ります。
すると、耐火コンクリートが自分で固まるための水分が失われることになり、硬化できなくなってしまうのです。
ちなみに、接着剤として耐火モルタルを使う場合は逆に水に濡らしてしまうと固まりが悪くなるので、この場合でも注意が必要です。
石窯をDIYで作る方法
では、実際に石窯をDIYで作る方法を取り上げたいと思います。
まずお伝えしたいのは、DIYで石窯を作る場合、左官作業がメインになるということです。
最初の章で左官作業にはモルタルが使われることが多いと触れましたが、石窯を作る場合耐火性が必要です。
固める困難さを考慮すると、耐火モルタルではなく耐火コンクリートを左官作業に使ったほうがよいです。
ちなみに、左官業界では耐火コンクリートのことをキャスタブルと呼ぶこともあるようです。
DIYで作る石窯は箱型の形状のものになります。
・シャベル
・レンガ
・ポルトランドセメントや砂(土台作りに使う)
・耐火コンクリート(アサヒキャスターなど)
・セメントやコンクリートを混ぜる容器
・コテ
・コテ板
・チューブ
・ゴム手袋 ※直接触ると手が荒れます
・ゴムハンマー
・必要な木材(天板を作る木枠やアーチ型屋根にする場合の木材)
作り方
(1)土台を作る
まずはレンガを敷き詰めて、土台を作ります。平らな部分が見つからない場合はシャベルを使って平らに整えましょう。
またアスファルトの上に石窯を作るとアスファルトが熱で爆発する恐れがあるので避けます。
土台は、アルファベットの「E」型に作るのがおすすめです。
レンガを隙間なく敷き詰めて土台を作ることもできますが、みっちり敷き詰めてしまうと崩壊の危険性が高まります。そのため、空間ができて耐久性もある「E」型がよいのです。
土台を作ると最終的に耐火コンクリートで作った天板を載せ、地面と平行に保つ必要があります。
このとき「E」型であれば地面と平行がとりやすいですが、レンガを敷き詰めてしまうと凸凹ができやすいので微調整が必要になってくるでしょう。
土台の耐久性をさらに増すためには、コンクリートブロックと鉄筋を使う方法もあります。
この方法は、まず薄い天板を作り地面に敷きます。そして天板にドリルで穴を空け鉄筋を挿していくのです。
地面と垂直に固定された鉄筋にはめ込むようにコンクリートブロックを重ねていき、隙間部分にポルトランドセメントで作ったモルタルを流し込んでいきます。
こうするとより強度が増した土台を作ることができます。
(2)外枠のレンガを積み上げる
平らな土台の上に、石窯本体の外枠のレンガを積み上げていきます。
このとき隙間ができないように注意してください。
ここからはレンガの接着剤として、モルタルではなく耐火コンクリートを使います。
そして焼床はめ込む部分を作らなければいけないことも忘れないようにしましょう。
(3-1)屋根部分を作る―四角の場合
次に屋根部分を作っていきますが、屋根部分が四角い形状にしたい場合は、耐火コンクリートの天板を外枠の上に重ねます。天板の上にレンガを敷き詰めれば完成です。
ちなみに、石窯を作る際に使用する天板は、土台部分(「E」型の場合)・土台上部分・焼床・屋根(四角の場合)と多くて4種類あるので、石窯のデザインによって何枚か用意しておかなければなりません。そして石窯本体に使う天板は耐火コンクリートを使う必要があります。
(3-2)屋根部分を作る―アーチ型の場合
アーチ型の場合は、レンガを積み重ねるのに工夫が必要です。
おすすめなのは、事前に内側にぴったりはまるアーチ型の枠を作っておく方法です。
作るのは少し大変ですが、これがないと逆にレンガを積み重ねるのがもっと大変になります。
アーチ型の枠に沿うようにレンガを重ねていくのですが、レンガとレンガの間にはめ込む木材を作っておくことも必要です。
木材の形状は扇形が適していて、角度なども綿密に計算してくと失敗がないでしょう。
このとき後ろ側にもレンガを積んでおくことを忘れないようにしてください。
アーチ型の場合は、耐火コンクリートを使うのはいちばん最後です。
扇形の木材をはめ込んだ状態で流し込んでいきます。コテやコテ板を使うよりはチューブを使って流し込むのがよいでしょう。
アーチ型の後ろの部分は、アーチ部分の耐火コンクリートが固まってから仕上げる必要があります。その理由は、後ろ部分に積み上げたレンガはアーチ部分が固まるまでの補強材としての役割があるからです。
アーチ部分が固まったら、後ろ側を仕上げます。
いちばん上の部分はレンガをはめ込むのが難しいですが、ゴムハンマーなどを使うと入れ込みやすいですよ。
ちなみに、専用の機械でアーチ部分に合うようにレンガを切断することもおすすめです。
(4)仕上げの左官作業をする
最後に、仕上げの左官作業をおこないます。
余分にはみ出た耐火コンクリートを削ったり隙間を埋めたりしていきましょう。
また、石窯を使うときに内部から煙が出るのが嫌な場合は煙突を作る必要があるようです。
そしてピザだけでなくパンなども焼きたい場合は扉を付けなければなりません。
石窯キットを使う場合
石窯をDIYで作ろうとする場合は、素人だとレンガを積み重ねて箱状にする方法が適しています。
その理由は、ドーム型やかまぼこ型は耐火コンクリートを曲線状に仕上げる必要があり、その作業が素人では難航するからです。
また熱の対流を考えるのも素人では難しいでしょう。
しかし、便利な石窯キットが市販されているようです。
石窯キットを使えばだれでもドーム型やかまぼこ型、またはレンガ以外の素材のものも作れます。
しかし土台部分は自分で作る必要があるので、手間や労力を惜しまず作業することは必要ですね。また費用がとても高額なのも見落とせないポイントです。
ちなみにDIYだと先ほどご紹介した方法でも70,000円程度で済みます。
まとめ
耐火セメント・コンクリート・モルタルは、石窯など耐火性を必要とする場合に使う材料です。
これらは混同しやすいですが、そもそもセメントはコンクリートやモルタルの素材なので実際の作業で使用するのは耐火コンクリートと耐火モルタルになります。
またこれらに耐火性を加えることができるのは、セメントの中でも耐火性に優れたアルミナセメントを使っているからです。
耐火コンクリートや耐火モルタルを使用する例として、記事では石窯を取り上げましたが他にも利用できる状況はあると思います。
今回のように自分で作業がおこなえない場合も考えられますから、作業に不安を感じる場合はプロの業者に依頼することもおすすめです。
アスファルト工事を依頼できる業者や料金
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