ピアノは、その音域の広さや音に強弱を付けられることから、美しい音色を奏でることができる人気の高い楽器のひとつです。また汎用性が高く、演奏目的で使われるのはもちろん、音楽教育や作曲といった場面でも使われます。
そんなあらゆる場面で使われているピアノですが、じつはとても繊細な楽器です。保管方法を間違えたりメンテナンスを怠ったりすると、美しい音色を奏でられなくなることも。そのため定期的にピアノの調律をするとともに、ピアノの移動や引越しをする場合は細心の注意を払わなければなりません。
このコラムでは、ピアノ所有者も気になるプロの手によるピアノ調律の費用などについてみていきます。あなたにとって役立つ情報がここで手に入るかもしれません。ぜひ最後まで目を通してみてくださいね。
目次
高い?安い?ピアノの調律にかかる値段
日ごろからピアノの美しい音色を奏でるためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。このように音色を美しく奏でるためにおこなうメンテナンスを「調律」といいますが、これはピアノを使う人ならだれでもできるというわけではありません。基本的には、プロによる調律が必要不可欠となってくるでしょう。気になる費用については以下でご紹介します。
ピアノの調律にかかる費用の相場
ピアノの調律にかかる費用は以下の通りです。
項目 | 料金 |
---|---|
アップライトピアノ | 12000円~ |
グランドピアノ | 15000円~ |
ピアノ修理 | 2万~10万円 |
まずここで覚えておきたいのが、グランドピアノとアップライトピアノの調律費用に大きな違いがあるという点です、
グランドピアノは重厚感があり、その大きさから丈夫にみられがちですが、きれいな音を出すために複雑な構造をしており、温度変化に弱い素材も使われています。そのぶん些細なことで音が変わってしまうため、ピアノ調律の費用や修理費用が高くついてしまう傾向にあるでしょう。
対してアップライトピアノは電子ピアノよりは複雑な構造をしているものの、グランドピアノと比べると簡易的に作られているため、調律費用はグランドピアノより安く済むのが一般的です。
調律の費用が高くなるのはこんなとき
実際にグランドピアノの調律を依頼した場合、費用は約18,000円前後で済むことが多いようです。しかしいざ調律を依頼してみると、先ほどご紹介した金額より調律費用が高くついてしまうこともないとはいえません。「話が違う……!」と思われるかもしれませんが、少しお待ちください。
ピアノの調律費用が高くなる理由は、多くの場合調律費用とは別の費用が含まれていることが考えられます。以下で詳しくみていきましょう。
ピアノの調律と合わせて修理をおこなう場合
調律をする過程で不具合などが発覚した場合、調律をいくらおこなってもきれいな音が取り出せないことも少なくありません。この場合は調律と同時に修理をすることで、きれいな音に近づけることができます。この修理費用が調律とは別にかかってくると、高くなるのです。
修理をする場合は事前に知らせてくれることが多いですが、費用がどれくらいかかるかを把握していなかったり、修理の話を聞き逃したりしてしまうと、当初の調律費用より高くついてしまうことがあります。
調律をプロに依頼する場合は、ピアノが壊れていたり不具合を起こしていたりするときにかかる費用を想定しておくようにしましょう。
弦やハンマーの交換をおこなう場合
グランドピアノは鍵盤を押すことで奥にあるハンマーが動き、それが弦にあたることで音を出すことのできる楽器です。このように弦を叩くハンマーの動きをハンマーアクションといいます。もし音に違和感がある場合は、何らかの理由でこの動きがスムーズでないことが考えられます。その場合弦とハンマーの当たり具合の調整や、弦やハンマーそのものの交換が必要になったりすることがあります。
そのほかのメンテナンスをおこなう場合
長年放置している古いグランドピアノを再び使いたい場合は、弦やハンマー、チューニングピンといったピアノ部品のすべてを新しいものに交換し、新品同様に使えるようにする作業(オーバーホール)をおこないます。中古ピアノもこの作業をする場合が多いようです。
またグランドピアノの外装に傷がついてしまった場合は、塗装することで傷をカバーし、きれいな状態に戻します。また、グランドピアノは大きい分表面に見えない汚れがたくさん付着しているため、プロの手でクリーニングすることでピカピカの状態に戻すことも可能です。
遠方からの依頼で出張費が高くつく場合
選ぶ業者によって違いはありますが、遠方から依頼する場合は出張費が高くついてしまう場合があります。地区ごとに費用が分けられていることが多いので、業者に確認するかホームページなどでかならず確認するようにしましょう。
見積りを通して費用をしっかり確認しよう
こうした調律費用とは別にかかる費用に関しては、事前に見積りをとってサービス内容をしっかり確認し、不明点をなくしておくことが重要です。業者によっては追加費用が発生することもあるので、そういった費用の加算がないかどうかもチェックしましょう。
ピアノ調律の内容とかかる時間
ピアノの調律とは、音を正確に出すための調整と思っている人も多いため、15分程度の短い時間で終わると勘違いしている人もたくさんいます。
実はピアノの調律は難しく、1時間、2時間かかってしまうのが一般的です。「音を合わせるだけなのに……」そう思ってしまうのも無理はありませんが、そんなにも長い時間、どういった作業で調律をおこなうのか気になりますよね。
この章ではピアノの調律にかかってしまう時間や内容についてご紹介します。
ピアノ調律の作業内容
グランドピアノとアップライトピアノの調律の内容を簡単にみていきます。鍵盤を押して音を調整するだけが調律ではありません。調律には以下のような手間がかかってしまいます。
■グランドピアノの調律手順
①ピアノの状態のチェックと内部の掃除
ピアノを通常通りに弾いてみて、鍵盤の動きやペダルの調子をチェックします。ほこりが原因でピアノの音の調子が悪くなることがよくあるので、内部の掃除もあわせておこなうのです。
②鍵盤の調整
鍵盤の動きが鈍い場合は鍵盤を外し、バランスピンやフロントピンを研磨したあとにバランスホールなどを調整します。
③棚板の調整と各部のネジ締め
鍵盤本体や棚板がピアノ本体にバランスよく設置されていないと、雑音や音の不調の原因にもなりますし、この後の調律作業に支障がでます。また、温度の変化によって各部品のネジが緩んでしまうことがあるので、調整とネジ締めをおこなうのです。
④整調
「整調」とは、鍵盤を動きやすくしたり、発音に不良を起こさないように調整したりする作業のことです。鍵盤を押してからハンマーが弦にあたるまでのすべての部品を確認し、位置の調整や動きをスムーズにするための調整をおこないます。また、ペダルなどのタッチ感を最適な状態にするなどの作業もおこないます。
⑤調律
すべての音が適切な音程になるように、約230本のチューニングピンを調整する作業をおこないます。この作業は、ピアノの音を左右する大切な作業となるため、素人がうかつにやってしまうと音が狂ってしまう原因にもなります。
⑥整音
「整音」とは、すべての音が同じ質感を保ち、音量や音色が均一になるように整える作業のことです。もし音に違和感がある場合は、ハンマーをやすりでけずるなどして弦にハンマーが適切にあたるように調整をします。
⑦仕上がりの確認
最後にピアノの外装や内部にほこりや汚れがないかチェックしたあと、音がきれいに出るかどうかや、ペダル・鍵盤などのタッチ感を確認します。問題がなければそこで調律が終わりますが、問題がみられれば状況に応じた作業が必要になります。
ここまでで平均約2時間ちょっと時間がかかるようです。ピアノの状態によって調律時間が長くなったりすることには、留意しておきましょう。
ピアノの保管の仕方で調律の費用をおさえることも可能
ピアノは繊細な楽器のため、適切な温度・湿度の中で保管しないと、部品の劣化が早まったりカビが生えたりします。そうなると、音色がおかしくなったり鍵盤を押しにくくなったりと不具合が生じてくるのです。
そのため演奏ホールなどにある繊細な音が求められるピアノは、使用時以外専用のピアノ庫で保管されています。家庭ではそこまで厳密な管理は難しいものの、温度変化が激しい環境にあったり定期的なメンテナンスをしていなかったりする場合は、ピアノに不具合をもたらしてしまうでしょう。
また、ピアノの保管に気を付けていないと、調律をしようとしたときに調律以外の費用がかさんでしまう原因にもなります。ピアノをなるべく調律だけで済ますには、ピアノに負担をかけない環境で保管するようにこころがけましょう。
ピアノをきれいに保管する条件
ピアノは、日ごろから丁寧に扱うのはもちろんのこと、保管方法にも配慮しなければなりません。以下の要点をおさえることで、ピアノをよりきれいな状態で保管することができます。
■条件①温度
人が季節の変わり目に体調を崩しやすいように、ピアノも急激な温度の変化に弱いといわれています。大手楽器メーカーであるYAMAHAでは、ピアノの保管温度を15度~25度にすることを推奨しているので、温度調整に迷われた人はこの温度を目安に室内を保つといいでしょう。
必要に応じてクーラーや、加湿器、除湿器などを使いわけてみてくださいね。
■条件②湿度
ピアノの保存環境は、温度だけを気にすればいいというわけではありません。とくにグランドピアノなどは木材でできているため、湿度調節は必須です。
推奨されている湿度は、夏は40%~70%、冬は35%~65%といわれています。条件①の温度と照らし合わせてみても、人が暮らしやすい環境が「ピアノを保管するのに最適な環境」につながるようですね。
・こまめに換気をする
室内の温度や湿度を調節するほかに、こまめに換気をすることも重要になってきます。長時間ドアや窓を閉め切っていると、湿気がこもった空気ばかりがピアノについてしまいます。新鮮な空気を取り入れることも忘れないようにしましょう。
・置く場所に注意する
ピアノは置く場所にも注意が必要な楽器です。置く場所ひとつでピアノを長持ちさせられるかどうかを、左右することになるかもしれません。置くのを控えたほうがいい場所は、以下の通りです。
- 直射日光が当たる場所
- 窓際や外界の空気、温度が触れやすい場所
- 床暖房がある部屋
※ある場合は床暖房用の断熱シートをピアノの下に敷くなどの対処が必要 - 台所の近くや喫煙所など、煙の多い場所
これらの場所にはピアノを置かないようにしましょう。また、もし動かす場合は、ケガをしたりピアノを傷つけたりしないよう、細心の注意を払う必要があります。ピアノの移動作業が難しいと感じたときは、業者に一度相談してみるといいでしょう。
ピアノの置き方に関しては、ピアノを壁に接するように置くと温度・湿度からの影響を減らすことができます。グランドピアノは左側面を、アップライトピアノは背面を壁に接するようにして置くといいでしょう。
・こまめに弾く
ピアノは、使っていないと劣化が早まってしまう楽器です。こまめに弾かないと鍵盤の動きが鈍くなったり、きれいな音色が出にくくなったりすることがあります。練習のために頻繁にピアノを使っている人は問題ありませんが、そうでない場合はなるべくこまめに弾くことを頭に入れておきましょう。
また日ごろから弾くことで、ピアノの不具合にも早めに気づくことができるでしょう。
まとめ
ピアノは、ただ音が出るだけでなく「きれいないい音」であることや「弾き心地」が大切になってきます。これらを維持するために、調律はもちろんそれ以外のメンテナンスも定期的におこなうことが重要です。また、調律をおこなったとしても別の箇所に不具合がみられた場合は、修理が必要となることもあるでしょう。
こうしたピアノ本来のきれいな音を取り戻す作業は、調律のプロにおまかせしましょう。そこで心配になるのは費用面ですが、事前にきちんと見積りをとり、費用についてしっかり納得したうえで依頼するようにしましょう。
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