昔はたくさんの家の庭に設置されていた井戸ですが、近年はあまり見かけることもなくなりました。地下水自体はあるようですが、利用する機会がなくなったことで埋めてしまう方も多いようなのです。しかし、自宅の庭に井戸があることで、水道料金を安くできたり、防災時には心強い助けになったりもします。
そんなメリットの多い井戸を、自宅の庭に掘ろうと検討されている方もいることでしょう。この記事では、井戸掘りについて詳しく解説していきます。井戸掘りをDIYするか業者に依頼するかの判断基準から掘り方、メリット・デメリットまでしっかりとご紹介していきます。井戸掘りをしようとしている方や検討している方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
目次
井戸掘りを始める前に必要な準備
自宅で井戸掘りをするためには、必要な準備があります。準備を怠ることで井戸水が出ないことにもなりかねません。より確実に井戸掘りを成功させるためにも、どんな準備が必要なのか確認していきましょう。
ボーリングデータを確認する
井戸掘りを確実に成功させるための準備として、まずは「ボーリングデータ」を確認してみましょう。聞いたことのない方もいるかもしれませんが、ボーリングデータとは、国が管理している地層のデータのことです。このボーリングデータを確認することで、地層の土質や固さといった情報を知ることができます。
ボーリングデータの確認は、「国土地盤情報検索サイト:KuniJiban」からできます。サイトの操作が心配な方は、「国土地盤情報検索サイト”KuniJiban“操作マニュアル」をご確認ください。
また、井戸掘りをするうえで必要な情報は、「砂礫(されき)」の有無と深さです。地下水のある地層には砂礫があることが多く、井戸掘りには欠かせない情報となります。深さに関しては、このあと詳しく説明しますが、井戸掘りをDIYするか業者に依頼するかを判断するために必要な情報です。
ひとつ注意点として、ボーリングデータと似た言葉に「ボーリング調査」があります。こちらは名前の通り、データではなく調査するものです。そのため、砂礫の有無や深さを確実に調べることができますが、そのまま井戸掘りを業者に依頼することにもなります。
ボーリング調査を依頼した場合の費用は、10~20万円ほど必要になるようです。初めから井戸掘りを業者に依頼すると考えている方は、ボーリング調査と一緒に依頼してしまうのがよいでしょう。
役所で近隣の井戸の設置状況を調べる
井戸掘りをおこなう地域を管理している役所では、井戸の設置状況も管理しています。そのため、役所で井戸の設置状況を調べることで、その場所が井戸掘りをするのに適しているかの目安にすることができるのです。
また、井戸水を生活用水として利用する場合、水道料金の関係で役所に届け出をしなければなりません。水道料金には、「上水道料金」と「下水道料金」の2つがあります。上水道は、水道から出てくる水のことで、使用した水の量だけ料金が加算されていきます。一方で下水道は、使用した水が下水に流れ込む量に対して加算されていくのです。
そのため、井戸水を使用するようになると上水道の使用量だけが減り、下水道に流れ込む水は増えてしまいます。このとき正確に水道料金を計測するため、役所への届け出が必要になるのです。
さらに、地下水の利用には「知事の許可」が必要になることもあります。これは、近年起こる地盤沈下の原因が、地下水の汲み上げ過ぎにあるとされているためです。こういったことから、場所によって「汲み上げ規制」がある地域もあるので、こちらについても役所で確認しておくとよいでしょう。
近隣住民から井戸の情報を集める
井戸掘りというのは、自然を相手にする作業です。そのため、ボーリングデータの確認をしたとしても、100%地下水が出るとは言い切れません。そのため、少しでも井戸掘りの成功率を上げるためにも、近隣住民の方からも情報を集めておきましょう。科学的な根拠と昔から住んでいる人の情報があれば、きっと井戸掘りを成功させることに繋がるはずです。
どうやって井戸掘りをするか決める
ボーリングデータや役所の情報によって井戸掘りできることがわかったら、次はどうやって掘っていくかを決めなければなりません。費用を抑えるために自分でと考える方もいるかもしれませんが、DIYか業者かを判断するひとつの目安があります。いつまで掘っても水が出ないなんてことにならないためにも、目安を参考に井戸掘りの方法を判断してください。
深さ4~6mの井戸ならDIYできる
ボーリングデータから砂礫が4~6m地中の位置にあれば、DIYによって井戸掘りすることもできます。時間と労力があれば、専用の道具を使って一人で掘ってしまうことも可能なようです。DIYでの井戸掘りについては、このあとしっかりとご紹介していますので、自分で作業することを考えている方はぜひ参考にしてください。
深さ10m以上になるなら業者へ
ボーリングデータによって、砂礫の位置が10m以上地中にあるとわかった場合、DIYでの井戸掘りは難しいようです。ここまでの深さになると大変な労力が必要になり、手作業では限界があります。
砂礫が10m以上地中にあるようなら、井戸掘りは業者に依頼するのがおすすめです。もしどうしてもDIYしたということなら、砂礫が4~6mの位置にある場所を探すのがよいでしょう。
DIYで井戸掘りするなら「打ち抜き井戸」
DIYによって井戸を掘ろうとするとき、広い範囲で大きくしようとすれば、それだけ作業が大変なものになってしまいます。そこで井戸掘りをするのにおすすめなのが「打ち抜き井戸」です。
打ち抜き井戸は、必要最低限の範囲を掘り進めて井戸を作るというものになります。そのため、穴を掘る労力を減らせるだけでなく、掘った部分から出る砂の量も少なく、作業後の手間を減らすことにもなるのです。より楽に井戸掘りを成功させるためにも、打ち抜き井戸の手順を確認していきましょう。
井戸掘りに必要な道具を準備
打ち抜き井戸を掘るために必要な道具は、専用の穴掘り機になります。この専用の穴掘り機ですが、DIYする方の中には手作りしてしまうこともあるようです。工具やビニルパイプ、トタン板などを用意して自分で加工することでDIYすることもできます。
しかしDIYによって穴掘り機を作るのは、あまりおすすめできません。頑丈に作ることができなければ、作業途中で壊れてしまい、余計な作業が増えてしまうことも考えられるためです。それよりもおすすめなのは、穴掘り機のレンタルです。自分で作るより費用はかかってしまいますが、頑丈かつ効率的に作業をするための道具がセットになっているのです。
打ち抜き井戸に必要な道具は、1週間6万円ほどでレンタルしている業者もあります。決して安くはない金額ですが、1個数万円する道具を購入したり、井戸掘りを業者に依頼したりするよりは、費用を安く抑えることができるのです。井戸掘りのために用意している予算と照らし合わせて、道具をDIYするかレンタルするか決めるとよいでしょう。
DIYによる井戸掘り手順
打ち抜き井戸に必要な穴掘り機の準備ができたら、次は手順の確認です。以下を参考に正しい手順で、井戸掘りを進めていきましょう。
1.井戸を掘る場所を決める
はじめにも説明した通り、どこを掘っても水が出るわけではありません。ボーロングデータの確認や役所、近隣住民の方の情報をもとに、しっかりと穴を掘る場所を決めておきましょう。作業をする周りに障害物となるものがあるようなら、作業しやすいように取り除いておくとよいです。
2.深さ1mくらいの穴を掘る
穴を掘る場所が決まったら、まずは1mくらいの穴を掘っていきます。このときはまだ穴掘り機ではなく、スコップなど使いやすい道具で穴を掘っていきましょう。1mくらいの穴を掘る理由は、井戸の枠となる鞘管(さやかん)を埋め込んでいくためです。土質が多少柔らかくなるところまで掘っておくと、スムーズに鞘管を埋め込んでいきやすくなります。
3.鞘管を埋める
1m程度の穴が掘れたら、鞘管を埋めていきます。埋める方法としては、はじめは木づちなどを使い、鞘管自体を打ち込んで埋めていきましょう。鞘管の長さが足りなくなってきたら、隙間ができないようにしっかりと固定して継ぎ足してください。打ち込んでも埋まらなくなってきたら、コンクリートブロックや砂袋などの重しを鞘管に取り付けます。
そうすることで徐々に土に中へと埋まっていくようです。それでも埋まっていかない場合は、土の中に石などの障害物がある可能性があります。このときは、石などの障害物をどかすようなイメージで、鞘管を回転させてみましょう。それでも埋まっていかないようであれば、一度鞘管を抜いて、障害物を取り除くようにしてください。
4.穴を掘り進める
砂礫のあるポイント付近まで鞘管を埋めることができたら、その中にある砂を掘り出していきます。事前に準備していた専用の堀り機を鞘管の中へ入れて、弁の中に砂が入るよう上下に動かしてください。弁に砂が入ったら掘り機を取り出して、その砂を捨てていきます。しっかりと水が出るまで、この作業を繰り返していきましょう。
砂を掘り出していき水位が高くなってきたら、穴掘り作業は完了です。水位の目安は一概にいえませんが、場所によっては地上から1.5mの深さにまでになることもあります。安定して井戸水を利用したいということなら、しっかりと水位を確保しておくとよいでしょう。
5.ポンプを設置する
無事に井戸掘りを終えたら、最後は水を汲み上げるためのポンプの設置です。ポンプを設置する際は、鞘管の周りを埋めてしっかりと固定しておきましょう。そのままの状態でも問題がないこともあるようですが、隙間をなくしておいたほうがグラつきにくくなり安心です。鞘管を固定してポンプの設置ができたら、井戸掘り作業はすべて完了となります。
井戸の設置が完了したら水質調査
無事に井戸掘りが完了してポンプを設置できたからといって、すぐに飲料水として利用するのはやめておきましょう。湧いている地下水が、必ずしも飲料水として利用できる水質とは限らないのです。
そのため、飲料水や生活用水として利用する前に、水質調査をおこなっておきましょう。その調査の結果から、井戸水の利用法を考えるのが安全です。もし水質に問題があり飲料水として利用できない場合は、井戸水用の浄水器の利用を検討されてみてはいかがでしょうか。
井戸掘りを業者に依頼するときの流れと費用相場
井戸掘りをDIYするというのは、決して楽な作業ではありません。そのため、作業に時間が取れない方や重労働が難しい方には、業者へ依頼するのがおすすめです。ここでは、井戸掘りを業者に依頼するときの流れと、費用相場についてご紹介していきます。
業者による井戸掘り完了までの流れ
自然を相手にする井戸掘りは、たとえプロである業者であっても水が出ない可能性はあります。そのため、より確実に井戸掘りを成功させるために、事前の調査をしっかりとおこなうようです。依頼から作業完了までの流れの一例としては、以下のようになります。
流れ
- 業者への問い合わせ
- 現地調査
- 見積り
- 契約
- 着工
- 井戸完成
- 水質調査
- 作業終了
現地調査や見積りに関しては、業者によって無料かどうか変わってくるため、事前に確認するようにしてください。また、水質調査などの専門的な部分に関してもおこなってくれるので、DIYするよりも安心して井戸水を利用することができるでしょう。
井戸掘りの費用相場
井戸掘りにかかる費用は、掘る深さや業者によっても大きく変わってくるようです。そのため、一概に相場を出すことは難しいですが、予算を決めるひとつの目安にはなるでしょう。以下が井戸掘りにかかる費用相場になります。
井戸掘りにかかる費用相場:50万円前後
ただ、安い業者では20円ほどから、高いところでは100万円ほどになることもあるようです。もし、このようにあまりに安かったり、高額だったりする場合は、その理由も確認するようにすると安心です。
自宅に井戸を作ることのメリット
自宅に井戸を作ることには、さまざまなメリットがあります。井戸掘りをしようか迷っている方のために、改めて井戸掘りのメリットについて確認していきましょう。
水道料金の削減になる
井戸掘りをする方や検討する方の多くが気にする水道料金ですが、井戸水を利用することで安く抑えることが可能です。水道料金は、上水道料金と下水道料金の2つをあわせた金額になります。そのため、使用した水を処理するための下水道料金はかかってしまいますが、使用前の上水道料金を大きく抑えることができるのです。
井戸ができれば費用をかけずに水を利用できるため、お風呂や洗濯といった場合でもたくさんの水を気兼ねなく使うこともできます。これは所帯持ちの方や大家族になればなるほど、よりお得に感じられるメリットとなるでしょう。
防災時には心強い
普段使っている水道水は、配管を通って供給されるものです。そのため、地震などの災害によって配管が割れたり、破裂したりした場合、水を使用できなくなってしまいます。その点、井戸があれば安心です。手動のポンプで井戸を作っていれば、電気と水が止まってしまったとしても、必要な分だけ水を汲み上げることができます。
水温が安定している
地中を通っている井戸水は、外気の影響を受けることがほとんどなく、一年中水温が一定に保たれています。そのため、暑い夏であっても冷たい水を楽しむことができるのです。また、寒い冬であっても地中の井戸水が凍ってしまうことはなく、安定して水を利用することができるしょう。ただ、ポンプ内の水が凝ってしまうことはあるので、そこには注意が必要です。
カルキ抜きが必要ない
水道から供給される水は、浄水場で消毒処理をされてから各家庭に分配されます。この消毒剤のことを「カルキ(塩素)」といい、とくに都市部では水道水のことを消毒剤の匂いが強く残った「カルキ臭い水」と表現されることがあります。
水に残ったカルキが健康に悪影響を及ぼすことはありません。しかし、水道水をそのまま飲む場合や、赤ちゃんにミルクを作る場合などには、カルキの匂いが気になるかもしれません。また、水槽で魚やエビを飼育している場合は、カルキの殺菌力がペットにとってダメージとなることも考えられます。
カルキ臭さを取り除くには一度水を沸騰させたり、日光に長時間当てたりするなどして「カルキ抜き」をおこなう必要があるのです。しかし、もともとカルキの入っていない井戸水であれば、カルキ抜きは必要ありません。
飲用に適した水質の井戸水なら、汲んだものをそのまま美味しく飲むことができ、水槽飼育の水にもすぐに利用することができるのです。
いいことだけではない井戸掘りのデメリット
ここまで井戸掘りをおこなうメリットについて説明してきましたが、もちろんデメリットもあります。高い費用をかけて井戸掘りをしたのに後悔しないよう、メリットとデメリットの両方をしっかりと確認しておきましょう。
水質次第では飲用できない
先ほども少し触れましたが、地下水のすべてが清潔で美味しく飲めるとは限りません。地下水は地表に降った雨が地中に浸透して地下に集まったものなので、通過してきた土壌に強く影響を受けます。化学物質を扱う工場や農薬を使う畑などが井戸の近くにあると、それらが地下水に混入している可能性があるのです。
また、現代ではあまり見られないケースですが、下水の一部が地下水に混ざっていることもあります。一見きれいに見える井戸水でも、飲用に適さないレベルで雑菌が繁殖していたり、化学物質が混入していたりする可能性もあるのです。
ほかにも、海岸近くで井戸掘りをおこなった場合、地下水に塩分が含まれていることもあるようです。とくに、初めはきれいな淡水であったとしても、井戸水を使用している内に海水が混ざっていくこともあります。
これらのことから、安心して井戸水を利用するためにも、水質検査はとても重要な役割を持つのです。同じ場所であっても、井戸の掘り方や深さによって混入する物質が異なる場合もあるため、事前に土地の調査をおこない適切な掘る深さを知ることも重要になります。
洗濯機やバスタブが詰まることも
地下水には土から溶け出した鉄分やマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。濃度の高いミネラルは結晶化し、少しずつ洗濯機の内部やパイプの内側などに固着していって、やがて詰まりを生じさせてしまうかもしれません。
また、洗濯機などの水回りの家電の中には、井戸水を使用するとメーカー保証の適用外になることがあります。無償での修理を受けられなくなる可能性についてはあらかじめ了承しておきましょう。
汲み上げに電気代がかかる
井戸の底から水を汲み上げるには、ポンプを利用する必要があります。昔ながらの手押しポンプを使うならともかく、労力とかかる時間を考えると電動のポンプを使うのが現実的でしょう。
電動ポンプを使う以上、ランニングコストとして電気代が発生することになります。また、ポンプは部品の劣化が大きい装置なので、定期的なメンテナンスや部品交換なども必要です。
水道と井戸のパイプを直結させることは禁止
井戸水は水道に比べると水量が安定しない傾向にあるため、お風呂や洗濯に井戸を使う場合、井戸水で足りない分を水道水で補うといった併用が必要になるかもしれません。このとき気をつけたいのが、「クロスコネクション」が発生しないようにすることです。
クロスコネクションとは、水道と別の水源(井戸水や雨水など)の配管を直結させることをいいます。たとえば洗濯機に井戸水を使用する場合、水道水と井戸水が同じパイプに合流して供給されるような配管は、クロスコネクションとなります。
クロスコネクションは、消毒処理のされていない生水が水道管に入り込んで汚染してしまうおそれがあるため、水道法によって禁止されている配管方式です。洗濯機などに井戸水を利用する際は、必ず水道水と井戸水は別々のパイプから供給されるようにして、水道管に井戸水が入り込まないようにしましょう。
まとめ
自宅の庭で井戸掘りをするには、まず地質の調査と役所・近隣住民から情報収集をし、水が湧くかどうかを確認しましょう。そして、地質調査で砂礫の見られる深さによって、井戸掘りをDIYするか依頼するかを判断していきます。DIYする場合は、掘り機を自作するかレンタルして、打ち抜き井戸を作っていくのがおすすめです。
砂礫が深さ10m以上だったり、作業が大変だと感じたりする場合には、井戸掘り業者へ依頼しましょう。作業費の相場としては50万円ほど必要になりますが、事前の調査から水質調査まですべておこなってくれます。とくに飲料水としての利用も考えている方は、プロである業者に依頼するのが安心でしょう。
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