
ガラリとは、室内の様子が外部に見えないようにしつつ換気をする通気口です。 細長い斜めの板を等間隔に並べたもので、ブラインドのようになっているのが特徴。「鎧窓」や「ルーバー」とも呼ばれており、おもに脱衣所や玄関で採用されています。
今回はガラリによる換気について、種類や換気効果の計算方法を交えてご紹介しましょう。
目次
意外と身近!ガラリの重要性
部屋の換気をする、というと多くの方は「換気扇」を思い浮かべるのではないでしょうか。キッチンであれば「レンジフード」をイメージする方も多いでしょう。しかし換気扇は、それ単体では効果を最大限に発揮することができません。
ガラリは空気の出入り口
換気扇の多くは「部屋の中の空気を強制的に外へ出す」という役割を持っています。昔の住宅は外に出すだけでも家の中に隙間があったため、自然と空気を入れ替えることができました。しかし現在の住宅は断熱性などの観点から気密性が高くなっており、空気が入る入り口を設けなければ充分に換気をおこなうことができなくなっています。
そのため「ガラリ」により空気の入り口を作ることで、換気扇で外に出したぶん、新鮮な空気を自然と部屋の中へ取り込むことができるのです。逆に換気扇で空気を取り込む場合も同様に、空気の出口としての役割を果たします。
現在ではシックハウス症候群などの問題を改善するため新築住宅・リフォームした住宅には24時間換気設備の設置が求められています。とくにリフォーム時には「リフォームしない部屋」にも換気設備が必要なため、ガラリの役割は高まっているといえるでしょう。
雨などの侵入を防ぐ役割
換気をする方法のひとつに「窓を開ける」という方法があります。しかし窓を開けておくと次第に天気が崩れ、部屋の中に雨が吹き込んでしまうことも少なくありません。また防犯の観点でも「窓を開けっぱなし」というのは避けたいところ。
ガラリは雨が吹き込まないよう、斜めに隙間を作り空気の通り道としています。また必要に応じてフィルターなどを取り付けられるタイプ・角度を調整できるタイプもあるため、状況に合わせて使い分けることが可能です。
ガラリの種類
ではさまざまなガラリの種類を見てみましょう。
形で分けるガラリ
形には大きく分けて「丸型」と「角型」があります。
丸型ガラリ
小さな換気口を設ける場合、円状に穴を開けこの丸型ガラリを取り付けることが多いです。またパイプをつないで天井などに給気口を設けることにも使われるため「ベントキャップ」と呼ばれることも。
角型ガラリ
正方形や長方形などの形をしたガラリです。比較的大きくても対応可能です。
羽根で分ける
空気の取り入れ口は隙間を作る羽根と呼ばれる細長い板が取り付けられています。この羽根の向きや形もさまざまです。
【H型】
横に羽根が取り付けられたタイプです。
【V型】
縦に羽根が取り付けられたタイプです。
【パンチング型】
板に無数の穴が開けられたタイプです。
【メッシュ型】
羽根ではなく、金網などが取り付けられたタイプです。
【片流れ型】
片側が高くなっているタイプです。
【山型】
中央に向かって羽根が高くなっているタイプです。
【フラッティー型】
一番外側が深い溝になっており、内側の溝部分に穴が開けられて空気を出し入れするタイプです。
特徴のあるガラリ
【フード付きガラリ】
強い雨・横からの雨でも吹き込まないよう、カバーがつけられたガラリです。とくに壁に取り付けられた小型の丸型ガラリで使われることが多い一方、天井裏などの換気のため屋上部分に上向きで取り付けられることも少なくありません。なおフードにも丸型とU字型の2種類があります。
【可動式ガラリ】
出入りする空気の量を調整できるタイプです。羽根を動かすタイプ、2枚の固定されたガラリを組み合わせ、上下させることで調整するタイプがあります。状況に応じて換気量を調整し、適切な環境の維持につながるといえるでしょう。
【ダンパー付きガラリ】
必要に応じて空気を止める機能を持ったガラリです。火災時の高温を感知して締め切る「防火」タイプ、
換気扇が空気を取り込む圧力によって動作する「逆風防止」タイプなどがあります。
【フィルター付きガラリ(F型)】
ガラリの部分にフィルターを取り付け、外の空気中に含まれている細かなチリなどを除去できるタイプです。とくにアレルギーの原因となる花粉は部屋に取り込みたくないもの。空気の入り口にも対策することで万全の対応ができます。
ただしその性質上フィルターには汚れがたまりやすいので、定期的に掃除・交換を行いましょう。
【ルームガラリ】
窓際近くの室内床に取り付け、外とつなぐガラリです。室内の換気や床暖房の余熱放出に使われることが多いほか、部屋となじみやすいよう床の色に合わせたプラスチックのカバーが取り付けられていることも多くなっています。
ガラリはどこに取り付ける?
では、ガラリはどこに取り付ければ効果を発揮するのでしょうか。
キッチンや浴室
キッチンは火を取り扱うことが多く、換気扇やレンジフードを利用することが多いです。それに加えてガラリで空気の取り込み口を作ることで、においや二酸化炭素などを含んだ空気を効率よく外へ出すことができます。
また浴室も湿気がたまりやすい部分です。換気のためにガラリを取り付けることで換気扇単独よりも効果的に湿度を下げ、カビなどの発生抑制ができるでしょう。
換気扇
換気扇は部屋の開口部に当たります。使っていないときは極力雨の侵入を抑えるため、ガラリが外側に設置されることが多いです。
また換気扇のつけ消しや換気扇の風圧によってガラリの羽根が動くタイプも多く使われています。
部屋の壁・床・天井など
さきほども触れましたが、新築した住宅・リフォームした住宅には24時間空気を入れ替えられるよう換気設備の設置が義務化されました。そのため部屋のどこかにはガラリを設置して、換気ができるようにすることが多いです。その際には空気の流れも重要になります。
扉
部屋の扉にガラリを取り付ければドアを開けていなくても廊下と部屋の間で換気することが可能です。とくに家全体の換気を考える場合、引き戸や折れ戸・ふすまなどは換気の経路になるものの開き戸はガラリなどがなければ対象外で、別に経路を設ける必要が出てくるのです。
窓
窓の外側に取り付けることで目隠しにしつつ、明り取りや空気の入れ替えができます。可動式タイプや雨戸のように収納ができるタイプであればそのときに応じて使い方が変えられるのが魅力でしょう。
なおガラス自体が斜めに可動し斜めの隙間を作るタイプは「ジャロジー窓」と呼ばれます。
軒下
天井裏・屋根裏は空気がこもりやすい場所です。そこで雨が入りにくい軒下にガラリを設置しておけば空気を取り込むことが可能になるのです。また天井裏を経由して部屋の換気を実現させることも。ただし害獣が壊して侵入口にしてしまわないよう、定期的に点検をしておきましょう。
屋上
屋根裏の換気のために設置されるほか、屋上の防水施工をおこなった際、下地に残っている水分などを排出して効果を高めるために設置されることも。
ガラリの効果を計測!部屋の必要換気量とガラリの換気量
ガラリの効果を最大限に発揮させるためには、部屋にどのくらいの換気が必要か、ガラリではどのくらい換気に効果があるかを把握しておくことが大切です。
必要換気量の求め方
部屋、もしくは家全体で必要な換気量に関しては部屋にいる人の数などさまざまな数値から求めることが可能ですが、住宅に関しては次のような計算で求めることが一般的です。
必要換気量(1時間あたりの立方メートル(㎥/h))=
1時間で部屋の空気を入れ替えるべき回数(換気回数、回/h)×部屋の容積合計(㎥、床面積(㎡)×天井の高さ(m))
家全体で換気について考える場合、換気回数は法律で定められた下限値である0.5回/hまたは0.7回/hを当てはめます。また空気が通る経路となる部屋全体について考えるため、廊下なども計算対象にすることが多いです。
それとは別に、においや湿気が気になりやすい浴室やトイレについて単独で換気をおこなう場合は、5回/hという数値、トイレに関しては5~15回/hという数値を使います。
ガラリの換気量
ガラリに限らず、換気扇やレンジフードなど換気設備の換気量は次のような計算で求められます。
換気量(㎥/h)=開口部の面積(㎡)×風速【秒速(m/s)×3,600】
要するに、どれだけの空気を押し出すか、が求める値です。
ただしガラリは換気扇のように強制的に空気を出し入れするわけではありません。そのためその換気量は付随する換気扇などの能力によって変わります。
家全体の必要換気量に対して十分なガラリかどうかは
給気部分として使う場合は風速3m/s以下、排気部分として使う場合は4m/s以下
になるよう、ガラリの設置面積を調整するイメージを持っておきましょう
ガラリ設置・交換はDIYでできるの?
ガラリも劣化するもの。劣化状態によっては交換が必要です。また追加で取り付けたい、というときはどのように調整すればよいのでしょうか。
ガラリ交換のフィルターは交換前提
空気中の汚れをこしとるフィルターには、当然ながらこしとった後の汚れがたまります。そのため交換する前提で設置されており、フィルター部分も別に市販されていることが多いです。フィルターは無理に掃除せず、汚れたら交換することを検討してください。また設置場所も「交換する前提」で選びましょう。
家の外周に取り付けるのは難しい
ガラリはドアや窓と同じく、家の開口部です。そのためガラリの大きさによっては外して侵入することもできてしまいます。
このことから侵入者が簡単には取り外せないよう、ガラリ設置は確実・正確におこなう必要が出てくるでしょう。DIYではどうしてもゆるみなどが出てきやすく、小型のガラリでも害獣などにとっては大きなスキになります。
ダクト設置タイプのガラリ設置は業者に依頼を
空気の通り道であるダクトを経由して吸排気するタイプを新規設置するのはDIYでは困難を伴います。というのは「ダクトには傾斜をつけなくてはいけない」「ダクトを通るときの影響を考える必要が出てくる」という2点が、わたしたちにとって難しい作業に当たるからです。
ガラリの換気性能を最大限活用するためにも一度業者への依頼も検討してみてください。
商品紹介
ではどのようなガラリがあるか、実際の商品を見てみましょう。
UK(宇佐美工業) ステンレス製・丸型フード付ガラリ UK-GSN100S-HL
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雨除けがついた屋外取り付け・丸型のガラリです。内側に金網が設けられており、給気・排気どちらとも対応しています。
バクマ工業 U型フード付換気口・防火ダンパー付 BD-150UV
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下側に開口部が向いているため雨風により強い構造となっている丸型ガラリです。72度の温度を感知して溶けるヒューズがあるため、万が一の火災時には自動的に閉じ、被害を最小限に抑える助けになります。
ナスタ(NASTA) 換気口・丸型ガラリ KS-8835PG
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丸型のガラリです。AES樹脂という日光への耐久性を強めた成分でできており、屋外利用もしやすいことが魅力でしょう。
プラスチックでできているドアに取り付けるためのガラリです。色も3種類あり、部屋の雰囲気に合わせて取り付けることが可能です。
ナスタ(NASTA) 角型プッシュ式レジスター KS-6040P2-SG
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ポン、と出っ張っている部分を押すことで開口部を閉じることのできるガラリです。2つに分かれているため風量調整も可能となっています。
YKKap 多機能ルーバー 引き違い窓用 1MG-06907
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窓に取り付けるタイプのガラリです。羽根の角度を細かく調整することができ、日光の入る量や風量を調整できることが特徴。
MyHomeSupply.com 窓用ルーバーシャッター
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窓の外側に付ける雨戸タイプのガラリです。木目調に仕上げられており、古い洋風住宅の雰囲気を取り入れながら必要なときに雨風を抑えるガラリとして機能します。
まとめ
住宅内の空気入れ替えに、ガラリは重要な役割を持ちます。とくに新築住宅やリフォーム住宅では24時間換気設備の設置義務化に伴いドアや床、天井などさまざまなところに設けられている可能性があるため、一度お住まいの家の中にないか確かめてみましょう。
またガラリはルーバーとも呼ばれ、アンティークな洋風住宅などの雨戸などに採用されていることも多いです。自分の家にあったガラリを見つけて設置し、デザインの一部として取り入れたいところ。しかしダクトを使うタイプなどは換気設備に関する知識が必要なため、業者へ依頼することも1つの選択肢として検討しておいてください。
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