パソコンの不具合が出たときの修正も、今やほとんどがインターネット経由でおこなわれる時代。無線LAN(Wi-Fi)の性能も向上してきましたが、高速通信はやはりLANケーブルを使う方が安定する傾向にあります。また鉄筋の入った建物など、無線LANの電波が届きにくいところも多いのが実情です。
一方無線化が進んだのは屋内のネットワークだけではありません。そのひとつが電話。近くの電柱から線を引き込む「固定電話」は携帯電話の普及に伴い、設置を控える家庭も多くなってきています。
この固定電話につなぐ「電話線」と「LANケーブル」よく見ると似ていると思いませんか?似たようなものだから代わりに使えないか、とつないでみた方もいるでしょう。しかしこの2つのケーブルは似ているようでいて、中身は大きく異なっているのです。
今回は電話線とLANケーブルの違いについて、その中身の違いとともに解説していきます。
目次
電話線とLANケーブルは何が違うの?
ケーブルの両側にはブラスチック製の部品(コネクタ)とつめが取り付けられており、凸型をした四角い差込口に「カチッ」と差し込む。そのつなぎ方こそ電話線とLANケーブルは似ていますが、そのケーブルの中身は大きく異なります。
異なる点①:ケーブル内の配線数
電話の音声やパソコン間のデータは電気信号に変換され、電話線やLANケーブルを伝わっていきます。しかし扱うデータの量には大きな違いがあり、必要な線の数も異なっているのです。
このうち電話では2線もしくは4線、LAN(Local Area Nerwork)では8線を使用しています。電気信号を送るため、基本的に偶数本数のペアです。
異なる点②:コネクタの大きさ
電話線(モジュラーケーブル)やLANケーブルの両端に使われているコネクタは接続を簡単に、かつ正確におこなうための部品です。また簡単には外れないよう上部につめが取り付けられ、つめを押さえないと抜けないように工夫されています。
このうち電話線に使われているコネクタは「RJ-11」というタイプ。6つの配線を接続できるよう端子が取り付けられています。一方LANケーブルでは8つの配線をおこなわなければならないぶん、コネクタにも少し大きめの「RJ-45」と呼ばれるタイプを使用します。
このように電話線とLANケーブルには大きな違いが2つあるため、基本的に代用することはできません。
電話線には3つの種類がある
ちなみに電話線にも3つの種類があります。それは先ほど取り上げた「配線数」の違いです。
6極2芯
電話線の配線のうち中央2本のみを使うもので、一般家庭にも多く普及しています。電源供給の線も兼ねており、簡易的な電話機なら電源をつながなくても問題ありません。
6極4芯
配線を4本に増やしたものです。大規模なオフィスの場合受付係が別に設けられていたり、異なる部署間の連絡で「内線」を使いたい場合も出てきます。こうした用途に対応するために線を増やしているのです。
ただし近年では6極2芯でも内線使用などに対応した電話機が増えてきています。
6極6芯
6つの端子すべてに対応する配線がおこなわれているタイプです。玄関のインターホンはカメラ付が普及したこともあり専用の親機で対応するタイプが増えてきていますが、電話機を親機代わりに使うものもいまだ少なくありません。こうした用途では6極6芯のケーブルが使われることもあるのです。
LANケーブルにもさまざまな種類がある
一方電話線だけでなくLANケーブルにもさまざまな種類があり、それぞれ異なる性格を持っています。
コードの太さ・構造による分類
8線のケーブルが内部に組み込まれているぶん、本来のLANケーブルは太くなりがちです。しかし太いケーブルは取り扱いが難しいことも多いため、今では主に4種類の太さが市販されています。
【ツイストペア】
対応する線同士をねじり合わせ、ノイズの影響を小さくするケーブルです。線自体は太いものの信号が弱くなりにくく、長い距離の配線などに適しています。
【STP】
ノイズの影響を抑えるため、配線の外側に「シールド」と呼ばれる金属を巻いたケーブルです。さらにノイズに対応すべく、対応する配線2線の外側にもシールドを設ける「ペアシールド」なども。
【フラット】
内部の線を横に並べることで太さを抑えたケーブルです。ノイズの影響は受けやすくなるものの、ドアのすき間など宅内配線に余裕が生まれます。またケーブルを収納しやすくなり、持ち運びにも便利です。
【極細】
さらに線の太さを抑え、柔軟な配線に対応したケーブルです。ただしノイズには弱くなるため、一時的な使用などに使われる場面も多いでしょう、
結線による分類
LANケーブルは線の両端を単純につないだもののほかに、対応する結線を入れ替えているタイプがあります。
【ストレートケーブル】
両端を同じ端子に配線しているタイプのケーブルで、現在市販されているのはほとんどがこのタイプです。
【クロスケーブル】
片方の端子の配線を入れ替えているタイプのケーブルです。パソコン同士を直接つなぐとき、LANケーブルを分岐させる「ハブ」「ルーター」同士の接続などに利用されてきました。しかし現在では機器の進化もあり、特別にケーブルを入れ替えなくても問題なく配線できるようになっています。
通信速度規格による分類
見た目ではわかりにくい違いとして、対応する通信速度の違いがあります。これは「カテゴリー」(CAT)として分けられており、ケーブルに印字されていることが多いです。
なお、現在新規に配線する際は6~7Aまでのケーブルを使用することが多くなっています。
(LANケーブルのカテゴリーと通信速度)
カテゴリー | 最大対応規格 | 最大通信速度 | 最大伝送帯域 |
---|---|---|---|
3 | 10BASE-T | 10Mbps | 10MHz |
4 | 16Mbps | 20MHz | |
5 | 100BASE-TX※1 | 100Mbps※1 | 100MHz |
5e | 1000BASE-T | 1Gbps | |
6 | 1000BASE-TX | 250MHz | |
6A(6e) | 10GBASE-T | 10Gbps | 500MHz |
7 | 600MHz | ||
7A | 1,000MHz | ||
8 | 40GBASE-T | 40Gbps | 2,000MHz |
*bps=1秒間に送受信可能なビット数。※1 カテゴリー5表示のケーブルでもケーブル構造・距離によっては1000BASE-T規格(最大通信速度1Gbps)に対応可能。
ちなみに電話線は下の表に示すカテゴリーで「カテゴリー1」として定義されています。
なおこの規格についてはケーブルだけでなくパソコンやネットワーク機器も対応させる必要があります(上位互換性あり=上位規格の機器で下位規格のケーブル使用可能、ただし速度は低下)。そのためケーブル総費用とネットワークに求める速度のバランスを考えて選択しましょう。
(番外編)同軸LANケーブル
テレビのアンテナ線のように、内部の配線が1本のみのケーブルを「同軸ケーブル」と呼びます。過去にはこの同軸ケーブルがLANにも使われており、このケーブルに「タップ」と呼ばれる機器などを取り付け、枝分かれさせる形でネットタークを作っていました。今ではほとんど見られなくなりましたが、昔からのネットワーク配線では残っているところもあるかもしれません。
なお現在では電気の配線(電力線、PLC通信)だけでなく、テレビのアンテナ線の空き帯域を利用したネットワーク機器も登場しています。ある意味「同軸ケーブル」でLANネットワークを形成しているといえるかもしれません。
電話線・LANケーブル間の代用はできるの?
電話線とLANケーブルは見た目こそ似ているものの、内部の配線などの違いから通常は別のケーブルとして扱われます。しかし「ケーブル内を電気信号が通る」のは同じ。ということで変換のための専用コネクタが市販されており、電話線の一部を置き換えることは可能です。
使用中のLANに混ぜることはできない
ただしネットワークを構成しているLANケーブル内に電話線の信号を混ぜると故障の原因となってしまいます。そのため代用する際は専用のケーブルを用意し、ほかのLANケーブルとは区別できるようにしておきましょう。LANケーブルはさまざまな色が市販されているため、接続するケーブルの色に規則性を作っておくとわかりやすくなるでしょう。
建物内の配線はLANケーブルでおこないたい理由
固定電話が普及した1980年代と比べると家庭にはより多くの電化製品が普及するようになりました。しかし電化製品はときにノイズを生み出す要因。ノイズ対策が考慮されていない電話線では電化製品の影響を受け、通話の品質に悪影響を与えるおそれも高いといえるでしょう。
しかしLANケーブルは通信速度の向上を図るため、ノイズ対策も強化されてきたという歴史があります。たとえばカテゴリー6のLANケーブルは通信線間の干渉を防ぐため、ケーブル内部に仕切りが付けられているのです。加えてケーブル外側のシールドが設けられているケーブルなど、外部からのノイズを防ぐ仕組みも導入されています。
電話線とLANケーブルの違いは大きいものの、先ほどの章で紹介した通り変換アダプタ―を使うことによる「代用」はできます。
インターネット環境向上とともに電話線を置き換える手も
現在では家庭用のインターネットでも光回線を使った1Gbps契約が主流となってきています。また地域によっては10Gbpsなどの速度に対応しているプロバイダもあり、快適な動画視聴のため切り替えた方も多いかもしれません。
しかしインターネット契約で速さを実現しても、家庭内で配線されているLANケーブルが古い規格だと十分な速度を得られないのです。そのためインターネットの契約を変更するときには家庭内の通信ネットワークの見直しも必要不可欠。LANケーブルの入れ替えも必要になることも多いでしょう。
この入れ替えで余ってしまったLANケーブル、配線はそのままに電話線に転用するのはどうでしょうか。とくに光回線ではIP電話契約を同時にすることも多く、電話線につなぐモデム部分がルータと一緒になっていることが少なくありません。一方これまでの電話線引き込み口が異なる位置にある場合、そこまで電話線を配線するのは大変です。
このときの置き換えで余ってしまったLANケーブルを電話線に転用すれば、費用を節約しつつお手軽にノイズ対策をすることができます。「ついでに変える」という意識を持っておくとよいかもしれませんね。
まとめ
電話線とLANケーブルは同じ「電気信号が通る線」であるものの、その構造は大きく異なります。また両端のコネクタの大きさもひと回り違うため、代用したい場合は変換コネクタを利用しましょう。その場合でも既存のネットワークに使っているものではなく、専用のLANケーブルを引きたいところです。
LANケーブルは高速化に伴い技術開発が進んでいる分野であり、長距離配線で問題になりがちなノイズ対策も進められています。むしろ電話線の代わりにLANケーブルを使って、通話の品質を安定させることを考えて見てもよいでしょう。
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