インターホンを自分で交換しようと思ったとき、悩みの種となるのが「自分の家のインターホンはどのような配線になっているのか」です。配線をよくわからないままつないでしまえば早々に故障してしまうおそれもあるかと思うと、なかなか踏み切れないのも無理はありません。
しかし、インターホンの配線は役割さえわかればとてもシンプルです。自分で交換できるかの基準は「電源をどうやって取っているか」、そして「ほかにつながる機器があるか」です。
今回はインターホンの配線について、そして自分での交換方法まで踏み込んで解説していきます。
目次
インターホンと親機は2本の配線でつながっている!
以前は家の前の来客を知らせるだけだったチャイム。しかし技術の発展もあり音声のやり取りができるタイプ、そしてカメラを通し来客の顔が確かめられるタイプへと進化していきました。しかし送れる情報が増加するにともなって配線も増え、素人には手に負えないといったイメージがあるかもしれません。
しかし多くの場合、玄関先のインターホンへの配線は昔と変わらず「2本」だけです。
2本で玄関子機への電源供給と伝送をおこなう
玄関子機から家の中の親機へつながるのは2本の配線のみです。しかもこの2本の配線は「どちらにどちらをつなぐか」という区別もありません。
しかし、この2本の配線で玄関子機へと電源を供給し、音声や映像のデータを送受信するのです。また電源を供給するといってもコンセントと同じ交流100Vではなく、直流5~20V程度と比較的低い電圧です。そのため、微弱な電流が流れているものの、感電によるリスクは小さいといえます。
上記のような理由から、インターホンの交換の難易度は意外と低く、資格不要でDIYをおこなえることも多いのです。
親機に接続できる配線について
インターホンの交換が難しいと感じる原因は、親機に接続する配線側にもあるかもしれません。たしかにインターホン親機の配線は10本から20本ほど接続できる場合もあり、どれがどれか分からなければ混乱してしまうことは確かです。
そこで今回は親機につなげる配線を分類わけし、それぞれの役割を調べてみました。
玄関子機(ドアホン)につなげる配線端子
先ほども触れたとおり2本一組の配線です。どちらにどちらをつなぐといったルールもなく、この配線だけで電源供給もできます。
なお、玄関と家の門が離れている場合は、それぞれに玄関子機を設置すると利便性が高くなります。親機もこれに対応し、2台分まで接続可能な端子が設けられていることが多いです。その場合は、玄関子機を途中で分岐させるのではなく、それぞれの配線が直接親機まで来るように配線してください。
また、玄関子機の配線は4本分用意されている場合も多いですが、通常2本は使いません。一部のインターホンが4本すべての配線を利用するため、それに合わせて配線工事がおこなわれているのです。
増設モニターにつなげる配線端子
こちらも2本一組で利用し、どちらにどちらをつなぐかという極性はありません。家が広い場合に親機以外で応答できるよう、モニターを増設するための端子です。なお玄関子機と異なり、増設モニターでは電源を別に取る必要のある場合が多いでしょう。
また、親機同士をつなげば互いの玄関子機の来客を代わりにチェックできるので、2世帯住宅などで個別にインターホンが必要な場合に便利な機能です。
電気錠(オートロック)を操作するための配線端子
3本一組の端子となっており、それぞれに役割があるため注意して配線する必要があります。
この配線端子は専用機器を経由し、電子錠のロック解除を親機だけでおこなうための端子です。たとえばマンションのエントランスで部屋番号を入力すると、その部屋の親機が鳴ります。部屋の住民が来客であることを確認するとエントランスの電子錠を解除し、扉が開くといったイメージを持っておくと理解しやすいのではないでしょうか。
なお戸建住宅でも玄関の鍵を電子錠にしておけば、遠隔で操作し来客を迎え入れるという方法に使うことができます。そのほか、対応するエアコンを接続してインターホンで集中管理するという使い方もあるのです。
外部出力用端子
2本一組の端子になっており、玄関子機から呼び出しがあった際に電圧を送る役割があります。
たとえば耳の不自由なかたは、呼び出し音が鳴っても気づくことが難しいです。そこで回転灯やランプ付きブザーなどを取り付け、「光」によってインターホンの作動を知らせるのです。
外部入力用端子
こちらも2本一組の端子で、気づきにくい音をインターホンが代わりに知らせてくれるという役割を持ちます。
代表的なのが「警報器」です。火災警報器やガス漏れ警報器はただちに対応が必要な種類の検知器ですが、なっている部屋から遠くにいると気づきにくいことがあります。インターホンと連動させることによって迅速に知らせ、ガス栓遮断や避難といった対応にむすび付けやすくなるのです。ただし警報器の取り付けかたによって配線方法が微妙に異なるため、対応するタイプの取り付けはプロに任せましょう。
VVF端子
コンセントプラグがない場合、直接電源を取るための端子として取り付けられています。そのため2本の端子はコンセント裏のケーブルにそのまま対応していると覚えておきましょう。コンセントを挿すのに近いものの屋内配線を直接いじることにつながるため、接続には電気工事士資格が必要です。
どの端子があるか、複数用意されているかはインターホンの品番によっても異なってきます。取り付ける予定のインターホンに必要な機能があるか、一度確認しておくことをおすすめします。
親機がないタイプのインターホンもある?
インターホンのなかには親機となるモニターがないタイプもあります。代表的なのが「電話機で応答する」種類のものです。
ドアホンターミナルに電話線とインターホン配線がつながる
このタイプでは「ターミナル」と呼ばれる機器が用意されており、インターホンの配線と電話線をそれぞれ入力としてつなぎます。そして出力用の電話線を電話機につなぐことで呼び出し・音声のやり取りができるようになるのです。
とくに音声応答機能のみを持ったインターホンの場合は、この配線にすると電話と同じ感覚で玄関先との通話が可能です。また、電話機の子機を使って応答し、別の部屋から用件を確認するといった使い方もできます。
モニター親機とドアホンターミナルをつなぐ場合も
カメラ付き玄関子機の場合は、映像を映すモニター用親機を使う場合が多いものの、この親機とドアホンターミナルを接続することで電話での応答を可能にする場合があります。遠くの部屋からの応答は電話機で、カメラ越しに映る顔を確認したいときはモニター親機を、といった使い分けもできるでしょう。
自分で取り付けられるインターホン配線の条件
ここまでインターホンの配線とそれに対応する機能について説明してきました。そこで気になるのが「自分で取り付け・交換ができるインターホンのタイプ」ではないでしょうか。
自分で取り付けができるインターホンのタイプとして、次のような条件が挙げられます。
電源をコンセント・もしくは乾電池で取るタイプ(子機含む)
交換前・交換後のインターホンとも電源直結タイプではなく、コンセントを介して電源を取るタイプであれば電気工事士資格は必要ありません。また、乾電池で電源を取るタイプも自分で交換可能です。
子機に交流100Vの配線がされていない
一部のインターホン・チャイムでは子機に直接交流100Vの電源が配線されている場合もありますが、そういったタイプも屋内配線に干渉することとなるため、自分で取り付けることができません。親機からの配線で電源供給するタイプ、もしくは乾電池で動作する子機を選びましょう。
なお交流電源・親機からの直流電源とも配線は2本一組のため、誤って接続しないよう気を付けてください。
追加配線の必要がないワイヤレスインターホン
インターホンの配線工事自体は資格なしもできなくはありませんが、屋外へ向かう長距離の敷設になるためそれなりに技術が必要になります。
そんなときにおすすめなのが、「ワイヤレスインターホン」です。ワイヤレスインターホンは配線工事なしでテレビインターホンの設置が可能になります。
子機に乾電池を使用しているものや、親機が充電式のものなど便利な製品です。玄関子機からの電波が届く範囲であるのであれば、家の中どこにいても利用できます。室内でも使用可能なため、介護用品として使用されるケースも増えてきています。
もともとのインターホン配線が使えない場合はこのような製品に交換するのもひとつの手でしょう。
業者に依頼する必要があるインターホン配線の条件
一方、業者に依頼する必要があるタイプのインターホン配線の代表が「電源直結型」です。
電源を端子につなぐタイプはプロに依頼!
同じ交流100V電源であっても、コンセントプラグを通して電源を取る場合と屋内配線から直接取る場合では安全性や法的意味合いが異なってきます。屋内配線から直接電源を取る場合は、「コンセント交換」に近い工事で、ブレーカーを落としての作業が必須です(外すだけであっても要資格の作業)。
なお、交換前後で電源の取り方を合わせる必要はありません。電源直結型の配線はコンセントの裏側の配線と同じになるため、交換前親機のあった部分にコンセントを設置すればそのまま利用できます。逆に電源直結型に交換する場合はコンセントから直接電源を分岐させるのです。
オートロックや警報器と連動するタイプ
オートロックや警報器には数多くの種類があり、相性次第でインターホンとの連動がうまくいくとは限りません。そのため業者に依頼して相性を見極め、確実に動作するものに交換するのが無難でしょう。
また、マンションなどのインターホンを交換する際は、業者に依頼するかどうかに関わらず管理組合・管理会社と連絡を取りましょう。独自のシステムを構築していることもあり、特定の機種への交換しかできない場合もあります。
次の章からは実際に自分で交換できるインターホンについて、その方法を見ていきましょう。
コンセントタイプのインターホンを取り替える方法
最初はコンセント接続タイプ・親機と子機を有線でつなぐインターホンについて見ていきます。
用意するもの
交換する機器
プラスドライバー(配線のねじ止め用)
マイナスドライバー(玄関子機を外すため)
ビニールテープ(絶縁用)
交換方法
1.安全確保
親機のコンセントを外し、安全に作業ができる状態にしましょう。
2.交換するインターホンを取り外す
親機は上にスライドすれば外れます。玄関子機は枠にはめ込んであることが多いので、つめを外して取り外しましょう。
まだ配線がついたままなので、断線しないよう慎重に作業しましょう。
3.配線を外す
配線はプラスネジで固定されています。このネジをゆるめ、巻き付けてあるインターホンの配線を外しましょう。
親機の取り付けベースの形が異なる場合は固定ネジを外し交換します。
4.新しいインターホンの取り付け
対応する配線用の端子に、新しいインターホンを取り付けます。子機側の配線が4本ある場合は2本のみをねじ止めし、残り2本はビニールテープなどで絶縁しておくようにしましょう。親機側も同様に配線します。
5.動作確認
一度コンセントを接続し、正常に動くか確認しましょう。正常に動かない場合は配線が正しく接続されているかチェックしてみてください。親機と玄関子機の間に4本分の配線がある場合は。違う端子につなぎ変えてみるのもひとつの手です。
複数の玄関子機がある場合は、同様に作業をおこないましょう。
6.玄関子機・親機を固定する
玄関子機・親機とも取り付け用の枠やベースを使って固定しましょう。
以上でインターホンの交換作業は終了です。意外と簡単、という印象が強いのではないでしょうか。作業前の安全確保をしっかりとおこない、配線ミスのないように実践してみましょう。
ワイヤレスタイプのインターホンに取り替える方法
ワイヤレスタイプのインターホンは配線作業が不要なため、さらに簡単な取り付けができます。
必要なもの
マイナスドライバー(玄関子機を外す用)
プラスドライバー(交換前の配線がある場合)
ビニールテープ(交換前の配線がある場合)
交換手順
1.既存のインターホンの取り外し
配線がある場合はねじをゆるめて外し、ビニールテープで絶縁処理をおこなっておきましょう。
2.子機を固定する
子機に乾電池を入れ、設置場所に固定します。
3.動作確認
親機を設置予定の位置に仮固定し、コンセントを差し込みます。一度玄関子機と接続し、映像や音声がしっかりと受信できるかテストしてみてください。
4.親機を固定する
受信状況が良好であることを確認したら、その位置に固定しましょう。
インターホンの配線の長さが足りない場合は?
今のインターホンの位置が不便な場合、取り付け場所を変えてみるのもひとつの手です。しかし、インターホンの配線は最小限の長さしかないことも多く、延長することは可能なのでしょうか。どのような方法であれば配線の延長が可能かご紹介します。
ケーブルをつないで延長可能
インターホンの配線はそれぞれ対応する先端同士を接続すれば延長可能です。その際はショートしないよう、それぞれにテープなどで絶縁処理をおこなってください。2芯タイプのインターホンケーブルもホームセンターなどで市販されています。
配線距離の制限があるため注意
ひとつ気を付けておいて欲しいのが配線距離の制限です。
ケーブルにはわずかながら「電気抵抗」があるため、長距離を伝送すると信号が弱まっていきます。また長距離ほどノイズを拾ってしまうおそれが高くなるのも難しい問題でしょう。
多くのメーカーではインターホンケーブルの配線距離を100mに制限しています。機種によってはさらに短くなることもあるため、延長することでこの制限をオーバーしないよう気を付けてください。
まとめ
ここまでさまざまな観点からインターホンの配線の知識を取り上げてきました。「配線」と聞くと複雑な印象を受けますが、インターホンの配線は2本だけ、とじつにシンプルです。インターホン本体が故障したとき、もしくは機能性の高いインターホンを利用したくなった場合は自分での交換にもチャレンジしてはどうでしょうか。
ただし、一部の電源直結式インターホンは取り外し・交換に電気工事士資格が必要です。また、配線自体の取り替え敷設に関しては大掛かりな作業となり、専門知識に頼る部分も少なくありません。こうした事情がある場合はインターホン工事のプロに依頼し、確実・安全に作業をおこなってもらいましょう。
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