害虫を駆除する際に殺虫剤を使うように、ねずみを駆除するときに使える「殺鼠剤(さっそざい)」というものがあります。殺虫剤のように直接噴射するような使い方はしませんが、ねずみ駆除には大きな効果を発揮します。
ねずみの駆除と言えば粘着シートやカゴ、バネ式の罠などが想像しやすいかもしれませんが、今はさまざまな殺鼠剤が開発されているのです。
しかし、誰もが頻繁に使用するようなものではないので、どんな成分が使われていてどんな効果があるのか知る機会はあまりないのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、殺鼠剤のおもな成分はなにか、殺鼠剤が私たち人間にとっては安全なのかどうかなどを解説していきます。ぜひ参考にして、最適な殺鼠剤を探してください。
殺鼠剤選びのポイントは成分!
殺鼠剤の成分はおもに5種類のものがあり、蓄毒性のものが1種類と即効性のものが4種類です。成分によって効果のあるねずみや人体への影響はそれぞれ異なりますので、詳しく把握しておきましょう。
・クマリン系
クマリン系成分のなかには「クマテトラリル」「ワルファリン」「フマリン」という3種類があり、これらは血液凝固を阻止する働きをもっています。
少量ずつの摂取を何日も続けることで効果を表す蓄毒性の殺鼠剤で、体のなかや皮膚組織で出血を起こします。確実に効果を発揮させるためには5日間ほど与え続ける必要があるため、根気よく慎重に使用しなくてはなりません。
・リン化亜鉛
殺鼠剤だけでなく、殺虫剤の成分としてもよく使用されている無機化合物です。ねずみが摂取すると体内の胃酸と化合してリン化水素ガスというものが発生し、呼吸困難を引き起こします。即効性がありかなり強力な成分です。
・シリロシド
地中海沿岸に植生しているユリ科の植物の根に含まれる成分で、ねずみが摂取すると呼吸困難を起こします。
家に住みつくねずみのおもな種類であるドブねずみやハツカねずみに大きな効果がありますが、一度摂取して生き残ったねずみは警戒して二度と食べないということも多いです。含有量やほかの成分もよく見て、一度で確実に駆除できるような強力な殺鼠剤を選ぶようにしましょう。
なお、人間を含むねずみ以外の多くの動物はこの成分を嘔吐で回避する作用があるため、比較的安全性のある成分といえるかもしれません。
・α-ナフチルチオウレア(アンツウ)
灰色の粉末状の物質で、苦みがあり水に溶けにくい性質です。ねずみがこれを摂取すると呼吸困難を引き起こします。ドブねずみに対する効果が高いと言われており、子ねずみより成獣への効き目が高いそうです。
しかし、一度摂取し生き残ると耐性を得てしまうねずみが多いので、殺鼠剤に使われることは減ってきています。
・ノルボルマイド
白っぽい色の針状の結晶で、水に溶けないのが特徴です。摂取した場合の致死効果は早く、1時間ほどで血管が停滞して酸素欠乏状態になり死んでしまいます。クマねずみやドブねずみにとくに効果を発揮するようです。
オススメの殺鼠剤3つを紹介
成分ごとの効果について知識を得たところで、おすすめの殺鼠剤商品を3つピックアップして紹介したいと思います。殺鼠剤購入時の参考にしてください。
ダンクローデンG 1kg 速効性殺鼠剤
成分にリン化亜鉛を含んでおり、即効性に優れています。粉状の殺鼠剤なので、トレーなどに入れて使用しましょう。
無毒タイプのエサと併用すると、エサの減り具合などからどの場所に設置すればねずみが食べやすいのかを確認することが可能です。さらに、無毒タイプのエサは食べたねずみに「ここのエサは安全なものだ」と思わせる効果もあります。その効果により警戒心の強いねずみにも毒餌を確実に食べさせることができるでしょう。
速効性殺鼠剤 ネオラッテクイックリー 1箱(2g×15包)
この殺鼠剤もおもな成分はリン化亜鉛で、即効性の高い商品です。袋に入ったものを置いておくタイプなので、手を汚すことなく使用することができるでしょう。とても強力な毒性があり、ねずみに一度食べさせるだけで身体の大きな個体にもしっかり効くのでおすすめです。
【防除用医薬部外品】デスモアプロ 投げ込みタイプ [ネズミ駆除剤 5gX12包入]
殺鼠剤のなかではポピュラーなもので、ホームセンターなどでよく見かける商品です。投げ込みタイプなので、天井裏や狭い家具の隙間などにも使用することができます。「ジフェチアロール」というワルファリンより300倍も強力な毒性物質が含まれています。
ご紹介したものは、粉状のものと個包装されたものです。しかし、ドックフードなどのような固形の物をトレーに入れて使用する殺鼠剤もあります。どのような形状のものを使いやすいと感じるかは人によって異なるので、効果のあるねずみの種類や設置場所をラベルなどで確認して適したものを購入しましょう。
また、殺鼠剤は手作りすることも可能です。駆除費用を抑えたい方は自分で作って設置してみるのもよいかもしれません。
殺鼠剤の使い方
殺鼠剤は、どんなに効果の強いものを使用してもねずみが口にしてくれなければ意味がありません。そのために気をつけなければならないのがまず設置場所です。
ねずみは種類によって住宅への侵入口や住みつく場所が異なるので、ねずみの習性を知った上で適した場所に設置しましょう。
また、殺鼠剤の近くに別の食べものやねずみの興味を引くものがあると、うまく殺鼠剤に食いついてくれない場合があります。殺鼠剤の周りにはものを置かないように注意しましょう。
上記のポイントを抑えたにも関わらずねずみが殺鼠剤を食べない場合は、ねずみの好物を使っておびき寄せる方法がおすすめです。米やとうもろこしなどの穀類はどの種類のねずみも好物なので、住みついたねずみの種類がわからなくても使うことができます。
人間やペットにも毒になるので要注意!
ねずみを殺してしまう目的で作られているのが殺鼠剤です。どれも毒性があり、人間は決して食べてはいけないものです。
しかし、家の中のねずみを駆除するためには、どうしても家の中に殺鼠剤を置かなければなりません。子どもやペットが誤って食べてしまうと不安に思う方も多いのではないでしょうか。
殺鼠剤の成分のなかで、家に住みつくねずみ用のものによく使われているのは「クマリン系」と「リン化亜鉛」なので、これらが人間やペットにおよぼす影響について見ていきましょう。
・クマリン系
この成分は連続して摂取しなければならず、比較的毒性の低い成分です。私たち人間への危険性はさほど高くありません。
しかし、大量に摂取したり小さなお子様やペット、妊娠中の方が食べてしまったりすると、健康上の被害が出る危険性はとても高いです。万が一食べてしまった場合はすぐに病院に行くようにしましょう。
・リン化亜鉛
紹介した殺鼠剤成分のなかでも強力なものです。わずかに摂取しただけで嘔吐や昏睡などの症状が現れ、数グラムで成人の致死量になります。
小さなお子様やペットが、誤ってほんの少しでも口にしてしまうと最悪の事態になりかねません。使用・保存場所には十分に注意しましょう。
殺鼠剤が効かない?スーパーラットとは
ここまで殺鼠剤の成分や使い方、おすすめ商品を解説してきましたが、最近では殺鼠剤の毒に耐性をもつねずみが現れ始めています。これは「スーパーラット」と呼ばれるねずみで、殺鼠剤に強いだけでなく、頭がよくてねずみ用の罠などにもなかなか引っかかりません。
殺鼠剤を設置しているにも関わらず効果を感じられない場合は、スーパーラットが住みついている可能性が高いです。スーパーラットを自力で駆除するのはかなり困難になるので、業者に駆除を依頼して確実に退治してもらいましょう。
まとめ
殺鼠剤のおもな成分には、クマリン系・リン化亜鉛・シリロシド・α-ナフチルチオウレア(アンツウ)・ノルボルマイドなどがあります。なかでも、市販の殺鼠剤によく使われているのは「クマリン系」と「リン化亜鉛」です。
クマリン系は毒性が低く危険性も低いですが、摂取する人によっては健康被害があります。一方、リン化亜鉛はわずかな摂取でも命にかかわる危険性があるため、とくに慎重に取り扱わなければなりません。
そして、殺鼠剤を使用する際には適切な場所に設置することが大切です。ねずみの生態や習性などを考慮して、効果的な設置場所を見つけて使用しましょう。
また、最近はスーパーラットのように殺鼠剤が効かないねずみが増えてきているため、自力での根絶が難しい場合もあります。お子様やペットがいるご家庭では、誤飲することがないように注意も必要です。そういった危険性にも配慮して確実にねずみを駆除したいという方は、早めにねずみ駆除のプロに依頼するようにしましょう。
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