かつては天然記念物として指定されたこともあったハクビシンも、現在はどこにでもいる害獣として私たちの生活に悪影響を与えることがあります。彼らは強い繁殖力と学習能力の高さによって、騒音をはじめとしたさまざまな害を人に与えています。
ハクビシンが我が家に住み着いてしまうと、追い出すのがなかなか大変です。できる限り少ない労力で駆除をおこなうには、早い段階で家に侵入してきたことを察知し、適切な対処をとる必要があるでしょう。
今回のコラムでは、もしもハクビシンが家に住み着いてしまった場合、どう対処すればいいかについて説明していきます。
目次
ハクビシンは子供を育てるために屋根裏に住み着く
ハクビシンに限らず、屋根裏はさまざまな動物が住み着きやすい場所となっています。建築技術の進歩によって住宅の断熱性が上昇したため、屋根裏が「雨風をしのげて温度が安定している場所」という動物が住み着きやすい環境になってしまったのです。
そして、ハクビシンは本来、安全に子育てをするために洞窟や木の樹洞を利用しています。しかし、開発などによって自然が減った現在では、子育てに適切な環境が揃っている天井裏を巣穴として使うようになっているのです。
ハクビシンは何度も戻ってきます
屋根裏はハクビシンにとって、洞窟や巣穴よりも住み心地の良い場所といえます。頭の良いハクビシンたちは、人間が住んでいる家の屋根裏を拠点にすれば、ゴミや食料を盗めるので餌に困らないことを知っているのです。
そのためか、追い出し方が不十分だとハクビシンは何度でも戻ってきてしまいます。一度屋根裏を住処にし始めた彼らを追い出すためには、複数の手段を使い分ける技術と知識が必要不可欠といえるでしょう。
また、屋根裏のみならず、使用していない倉庫や床下に巣を作るというケースもあります。ハクビシンが近所で出没しているという話を聞いたら、ハクビシンが我が家を巣穴にしようと狙っていないか注意し、予防と対策をすることが大切になってくるのです。
ハクビシンが住み着くサイン
ハクビシンが屋根裏に住み着いているかもしれないサインにお気づきでしょうか?以下のような現象がご家庭に起きているのだとしたら、家の中にハクビシンの巣ができている可能性があります。
・天井から「ドタドタドタ……」と足音が聞こえてくるようになった
・天井裏をのぞいてみると枯草が持ち込まれており、巣のようになっている部分がある
・犬の大きさほどの糞が1か所に集中して落ちている
・雨漏りと間違うほど、天井からポタポタとおしっこが落ちてきた
・ゴミ置き場や畑が荒らされており、しかもハクビシンの目撃情報がある
ここで紹介したのは、よくご相談が寄せられるハクビシン被害のパターンです。「ハクビシンかも……」と少しでも思い当たる節があれば、自分でハクビシン対策を講じたり、害獣駆除のプロに相談をしたりするのをおすすめします。
ハクビシンによる屋根裏被害
ハクビシンが屋根裏に巣を作ると、以下のような被害を受けてしまう可能性が高いです。
個体数の増加
ハクビシンが害獣として扱われている理由のひとつとして、繁殖力が非常に高いという点が挙げられます。1年に1回の子供を産むのですが、たった2か月で妊娠期間が終わり、2,3匹の子供を産み落としていきます。
出産自体は年に1度しかしないのですが、ハクビシンは生後わずか10か月で繁殖できる身体に生育します。そのため、爆発的に子供が増えていってしまうのです。また、出産は年に1度しかしないものの、出産時期は1年中なため、どんな季節でも子供を産むことが可能なのです。常に個体数は増殖していくことでしょう。
夜の騒音
ハクビシンは夜行性なので、ちょうど私たちが寝静まっている頃合いに活発になります。ハクビシン1匹だけならまだしも、子供を産んで個体数が増えた状態で動き回るとかなりの騒音が発生します。家に住む人たちの睡眠は容赦なく阻害され、不眠に苦しめられることになるでしょう。
断熱材をはがし配線を噛む
ハクビシンは、住宅の屋根裏を巣穴のひとつとして使うだけでは終わらず、天井の断熱材を引きちぎって寝床に使うことがあります。そのせいで断熱材がボロボロになってしまい、リフォームで取り替えなければいけないという深刻なケースも出ているのです。
また、屋根裏には配線が通っていることもあるため、住み着いたハクビシンが配線を噛み千切ったり、そこに糞尿をかけたりしようします。それによって配線がショートを起こし、最悪の場合火事の原因となる危険性も考えられるのです。
ため糞により天井から糞尿が染みてくる
ハクビシンには一定の場所に排泄する「ため糞」という習性があるため、溜まりに溜まった糞尿が天井からぽたぽたと染みだしてくることがあります。酷いときには、糞尿が染み込むことによって天井が腐食し、抜け落ちてしまうおそれさえあるのです。
また、ハクビシンの尿はツンと染みるような独特の臭いがあるうえ、1回の尿の量がだいたいコップ1杯ほどとかなり多めとなっています。彼らは1日に数回同じ場所に尿をするので、すぐに壁に尿がしみ込んでしまい、臭いも染みもなかなか取れないのです。
害虫や感染症の発生源にも……
野生のハクビシンの体には、ノミやダニをはじめとする害虫が寄生しています。ハクビシンが屋根裏に住み着くと、それらの害虫が屋内に侵入してくることがあるのです。ノミやダニに噛まれてしまうと、痒みや痛みなどの症状に悩まされることでしょう。
また、屋内に侵入したダニの死骸を吸い込んでしまうと、ぜん息をはじめとする病気に罹ってしまうおそれもあります。それだけでなく、ハクビシンが何らかの病原菌を保有していたせいで、感染症を発症する危険性も十分に考えられるのです。
ハクビシンが屋根裏にいることで、以上のような悪影響が懸念されます。そのため、ハクビシンの存在に気がついたら、早急に家から追い出し、二度と来ないように対策を施す必要があるのです。
屋根裏のハクビシンにはどう対処すべき?
この項目では、屋根裏に住み着いたハクビシンへの駆除をおこなうその前、その後の対策の方法を紹介します。以下に紹介する対処法はいずれも害獣駆除や対策の基本なので、ハクビシン以外にもイタチやテンへの対策にも用いることができるはずです。
忌避剤を置く
ハクビシンは嗅覚が優れているため、天敵であるオオカミの尿の臭いや、唐辛子のような刺激の強い匂いを苦手としています。ハクビシンは学習能力が高いので、一度不快な思いをすればそこには近寄りにくくなるはずです。
自分でも簡単に作れる忌避剤
木材を燃やした煙から精製した「木酢液」という液体でも、忌避剤を作ることが可能です。ハクビシンなどの野生動物は木酢液の臭いを危険と認識し、本能的に危険を察知して近寄らなくなるとされています。そのため、忌避剤としても役に立ってくれるのです。
忌避剤を家の周りに置いたり木に吊るしたりすることで、ハクビシン避けの効果があるといわれています。以下のような手順で、木酢液を用いた忌避剤を作ってみましょう。
【材料】
・500ミリリットルのペットボトル数本
・カッター
・木酢液
【作り方】
(1)ペットボトルの上に逆三角形の切れ込みをカッターで入れ、通気口を作る
(2)木酢液を5倍に薄め、薄めた木酢液を切れ込みの下のあたりまで入れる
(3)ペットボトルの蓋を閉める
屋根裏の隙間を埋める
ハクビシンは8~10cmほどの隙間さえあれば簡単に侵入してくるうえに、何度も同じ隙間から出入りしてきます。そのため、侵入経路となっている隙間を見つけ出し塞いでおくことで、追い出したハクビシンが屋根裏に再び戻ってこないようにする必要があります。パテやシリコン、ウレタンスプレーなどで、屋根裏の隙間を徹底的に埋めましょう。
しかし、ハクビシンの行動を把握できてない状態で、やみくもに隙間を埋めてしまうのはよくありません。害獣駆除でもっとも難しいのが、侵入経路を見極めて、適切な方法で埋める・塞ぐということなのです。なぜなら、ハクビシンの侵入した箇所をすばやくかつ的確に突き止め頑丈に塞がなくては、何度でも彼らの侵入を許してしまうからです。
屋根裏への侵入経路を絶つ
ハクビシンは木のぼりを得意としており、木を伝って屋根裏に侵入してくることがあります。もし屋根裏付近に木が植えてある場合は、ハクビシンが入ってこられないように剪定や伐採をしたり、猫よけのカバーをつけたりするなどの対策をする必要があるでしょう。
また、ハクビシンは木だけではなく雨どいを伝って屋根裏に侵入することもあるため、雨どいも要チェックポイントです。動物用の返しや有刺鉄線を雨どいに設置することで対策しましょう。
屋根裏を消臭、消毒する
先ほども触れたように、ハクビシンは決まったところに排泄をするため糞という習性をもちます。放置しておくと悪臭や害虫が発生する原因になるので、屋根裏に糞尿を見つけたときはきれいに消臭と消毒をして、再び排泄をされないようにしておきましょう。
なお、ハクビシンの糞や尿には病原菌が付着しているため、不十分な装備で掃除しようとすると感染症を患うおそれがあります。糞尿の掃除をする際は、必ずゴム手袋とマスクを着用するなどし、病原菌への対策をするようにしてください。
捕獲できないハクビシン。困ったら業者に相談しよう
ハクビシンが屋根裏に住み着いてしまい、なかなか逃げ出してくれない場合は、いっそ捕獲してしまいたいと思う方もいるでしょう。ですがハクビシンを許可なく捕獲や殺傷する行為は、「鳥獣保護管理法」という法律によって禁じられています。
捕獲が可能なケースも……?
基本的には殺傷や捕獲が禁じられているハクビシンですが、自治体によっては捕獲が許可されるケースもあります。捕獲することでしか野生動物の被害を防げないと判断された場合などは、所定の手続きを踏むことで例外的に捕獲が可能になるのです。
その際、銃などの狩猟道具を使っての捕獲は狩猟免許が必要となります。しかし、該当の動物に対しての捕獲申請が下りて、自分が所有している土地の範囲であれば、箱わなをかけて捕らえるのが可能となっています。
なお、この際にハクビシンを捕獲した後の処置は自治体によって変わってくることを留意しておきましょう。捕獲者自身が処分したり自治体が引き取ったりなど、パターンはさまざまです。なので、各自治体に問い合わせたり、ホームページで調べたりするようにしてください。
どうやっても追い出せない場合は
これまでに解説してきた対策法を実践してもハクビシンが出ていかない場合は、ハクビシンの被害でお悩みであれば、あらゆる手段を講じることができる害獣駆除のプロに依頼することが確実だといえるでしょう。
害獣駆除のプロでしたら、ハクビシンが活動しているわずかなサインを見逃しません。けもの道にある毛、壁につけられたひっかき傷などを探し出し、的確に対処していきます。それにより、ハクビシンが再度侵入しないようにしてくれるはずです。
ハクビシンは学習能力が高い動物です。そのため、「侵入を繰り返させない」対策ができるかどうかがもっとも重要なことだといえます。ハクビシンでお困りであれば、害獣駆除のプロへの相談をしてみてください。
まとめ
ハクビシンが一度屋根裏に住みつけば、鳥獣保護法に守られているせいで駆除することができません。
そのため、パテやシリコンなどで出口を塞いだり、忌避剤などを使い、ハクビシンが屋根裏に住みつかないような対策をおこなってみてください。
しかし、どのように対策をとっても、すでに家に棲みついてしまったハクビシンを屋根裏から追い出すのは素人では苦労します。そういったときは害獣駆除のプロに一度相談をしましょう。何件ものハクビシン対策を取り扱ってきた業者であれば、天井裏に潜むハクビシンへの対策もしっかりやってくれますよ。
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